CSI: NY - Season 1
Criminals are like animals. You leave tracks. We find them. That's what we do.
ダニー、エイデン、フラック刑事担当。閉店後のダイナーが拳銃強盗に襲われ、三人が死亡。二人が重傷を負い、そのうちの一人、マネージャのオクタヴィアは病院で死亡した。マックも現場に来るが、レベル2への昇進を望むダニーを責任者にして後を任せる。
被害者は頭にポリ袋をかぶせられ、手足をダクトテープで縛られていた。同型の袋は現場の店にあったが、テープはない。現場に何があるかを知って必要な物だけを持ち込み、被害者の持つ貴重品や現金だけを奪っていた。二人は内部関係者の犯行を疑うが、従業員は全員撃たれている。通報したのは一人だけ助かった従業員のテレル・ダヴェンポートで、テレルは強盗の前科があった。ダクトテープからは、青い繊維とテレルの指紋が発見された。テレルは、犯人に脅されて全員に袋をかぶせて手を縛ったと主張。
ダニーとエイデンは現場の模型と人形で事件の再現を試みる。店の外のゴミ箱からは、血のついた注射器が発見される。そこにはオクタヴィアの弟ホセの指紋があったが、店に行くと店員たちが倒れていたので逃げたと主張。表扉のガラスに付着した掌紋から、アダムスという男が来たこともわかるが、これも無関係だった。エイデンはテープの素材を調べ、種類から持ち主を絞り込む。うち1件は、死亡した店のマネージャ、オクタヴィアの恋人ルイスが経営するガレージだった。ルイスの車を調べると、トランクの青いカーペットにダクトテープの接着剤の跡があった。
ダニーとエイデンはルイスの持ち物を押収。その中に入っていたポリ袋は、店にロールで置かれていたものだった。ちぎった後を照合していくと、被害者たちにかぶせられた袋と店に残ったロールとの間に、ルイスの持っていた袋がぴたりとはまった。オクタヴィアは弟から逃れるために、子どもたちをつれて他所へ行こうとしていたので、それを阻止するために殺害したのだ。
マック、ステラ担当。ゴミ捨て場で人間の脚(ひざから下)が発見された。その脚には、古い傷が多数あり、中には骨まで届く物もあった。皮膚と筋肉はメス、骨は鋸で切断されており、外科手術で切断したようなのだが、脚に異常はなく手術が必要とは思えなかった。脚の中には手術でロッド(細い棒)が埋め込まれており、それに刻印されたシリアル番号から、マックは医者を探し当て、患者の名がフランク・ハーツバーグであることを知る。ロッドを入れたのはショットガンで誤射した傷の治療のためだが、その傷は治癒しており切断の必要はなかった。
マックとステラはハーツバーグの自宅を訪ね、左足を切断した遺体を発見。現場の時計は、時間が遅れていた。床には血を拭き取った形跡。脚を切断する外科手術をそこで行ったが、患部の壊疽から死亡したものと思われた。ベッドの下には手足を切断した人々の写真、冷凍庫には誰か他の人の指があった。その指にも切断するような理由は見られない。
指紋から、指の主はジョー・ガーフォードと判明。ガーフォードはハーツバーグを知っていた。ハーツバーグはもう何年も、左足を切断することを希望しており、切断しなければ自分は完全ではないと言っていた。ガーフォードも左足を欠損しているように見えたが、実は脚を曲げて縛り、切断したふりをしていただけだった。彼は自分を「ワナビー」と呼ぶ。ハーツバーグの妻の話からは、彼が何度もわざと脚を傷つけ、切断が必要になるほどの怪我をしようとしていたことがわかる。
ステラとホーク医師は、骨の模型を使って切断の実験。骨の切断面には、二種類の鋸を使用した形跡があった。電動鋸を使っている途中でブレーカーが落ちたために、仕方なく手動の鋸を使ったということに気づき、ステラはブレーカーから指紋を採取。指紋の主はハーツバーグが自分の脚を撃ったときに手当てをした救急隊員だった。脚を切断してくれたら1万ドルの謝礼を出すと言われて断りきれなかったのだ。
前回のエピソードでマックに小言めいたことを言われたダニーが、今回は事件の捜査を任される。しかも、四人が殺されているという大事件。結果、見事解決して昇進の足がかりをつかんでほめられるのだが、ダニーの心は晴れない。事件の悲惨さを思うと素直に喜べないのだ。「いつものように仕事に行って……仲間と会って……笑いあって……突然……」突然、すべてが終わる。その言葉で、「まばたき」のマックの言葉を思い出した。彼もきっとそれを思っただろう。
グリッソムは、事件に対してクールに対処する。マイアミのホレイショは悪を憎み、同時に被害者を守ろうとするような優しさを見せる。NYのマックは被害者に寄り添うような共感を見せるタイプのように思う。その姿勢は部下のダニーにも伝わっているのだろうか。このエピソードでは、ダニーの中にもマックと同じような共感が垣間見える気がする。
それにしても、せっかくのこの場面がアラファト議長死去のニュースでカットされて、CBSの特番になってしまうとは! 重要なニュースには違いないが、三分くらい待てよ三分。
事件としてはダニーとエイデンの方が大きな事件だが、マックとステラの事件もすごい。手足切断に萌える人々、というのは本当にいるらしい。切断した人が好き、というのから、切断したふりをして松葉杖や車椅子を使ったり、本当に切断してしまったり。詳細は、以下のサイトに詳しい。
切断愛とひとくちに言っても(ひとくちに言った方が何だか生々しいな)、切断した人々が好きだという人々(devotee)、そのフリをする人々(pretender)、自分も切断したいと望む人々(wanabee)がいる。○○が好きというのと、自分がそうなりたいというのは別じゃないのかな、とも思うのだが、devoteeであり、かつpretenderまたはwanabeeであるというケースも少なくないらしい(この三者を合わせてDPWと呼ぶ)。
上掲のNYタイムズの記事には、このエピソードの元ネタぽい事件が紹介されている。1988年にサンディエゴの外科医が左足の切断を依頼された事件だ。報酬額も同じ1万ドル、患者はやはり手術後に置き去りにされて壊疽で死亡している。
それにしても、なぜ切断したがるのか、それも足の切断に執着する人が多いのはなぜなのだろう。わかりやすいケースもあるのだが――三番目のサイト1)に掲載されている論文には、両親にあまり愛されずに育った女性の症例が載っている。めったに優しさを見せない両親が、近所に住む松葉杖の女の子のことを「あの子はかわいそうだね」と同情していたことがきっかけで、障害のある子なら愛されると思うようになったという。こういう理由なら、まぁ成程なと思う。あるいは「困難を乗り越えること」への憧れが昂じたものなのだろうか? だが、さしたるきっかけもなく、ただ「足があることに違和感を感じている」人も多いようだ。色んな人がいる、としか言いようがない。
— Yoko (yoko221b) 2005-12-18