CSI: NY - Season 3, Episode 4
大学のクラブのパーティで、女子学生の首なし死体が天井から吊るされているのが発見される。首はバーナーで生きたまま焼き切られていたが、血中アルコール濃度の高さから考えて、意識はなかったと思われた。被害者はエイミー・フェイドラーという女子学生で、優秀だが秘密主義で交流関係はよくわからない。エイミーは下半分を切り取ったTシャツを着せられていたがサイズが合わず、本人のシャツではない可能性があった。
エイミーの頭部の方は、セントラルパークで岩の下に埋められていた。頭部は、彼女が着ていたTシャツの下半分に包まれていた。切れ端を合わせてみると、それはギリシャ神話に登場する怪物ヒュドラの図案であるとわかる。ヒュドラには首が7本あり、1本を切り落とすとそこから2本の首が生える。神話ではヘラクレスがヒュドラの首を落とし、再生しないよう切り口を焼いた。だが1つだけ不死身の首があったため、それは岩の下敷きにしたとなっている。そのTシャツにはさらに、「EVERYTHING AND NOTHING(全てと無)」という言葉、数字の3、12個の×(または十文字)が隠されていた。
ダニーは、最初のパーティ会場で事情聴取をした時に、シェーン・ケイシーという若者が似たようなデザインのシャツを着ていたことを思い出す。シェーンのシャツは、EDOCランドリーというスタジオが製作しているもので、シャツの中に暗号が隠されており、Webサイトでその暗号を使うとオンラインのミステリゲームにアクセスできるようになっているという。
だが、EDOCランドリーのデザイナー、ジョン・ヘイズにエイミーのシャツを見せると「これは偽物だ」と言う。エイミーのシャツには、EDOCランドリーではなく「KODECON.COM」というラベルが印刷されていた。KODECONのサイトにアクセスし、パスワードとして「EVERYTHING AND NOTHING」を入力すると、路上で遊ぶ少年の動画が再生される。サイトはリモート管理されており、オーナーの情報は不明。
その後、両眼の位置に釘を打ち込まれた男性の遺体がセントラルパークで発見される。眼球はくりぬかれ、ポケットに入れられていた。被害者はバーで用心棒をしていたケネス・チャンドラーで、彼も「KODECON.COM」のTシャツを着せられており、服を脱がせてみると身体中にいくつもの目玉の絵が描かれていた。どうやら今回の被害者は神話のアルゴス(100の眼を持つ見張り役)になぞらえているらしい。今回のTシャツには「CONSCIOUSNESS(意識)」という暗号が隠されていた。
ホークスは、数秘学と関連があるのではないかと思いつく。数秘学で「全てと無」は0または000、「意識」は7を意味する数値である。KODECON.COMにキーワード「CONSCIOUSNESS」を入力すると、また同じ少年の動画が再生される。ステラは背景に映っているビルの高さを使って三角法で位置を計算し、撮影場所がロングアイランドであることを知る。その場所へ行ってみると、所有者が亡くなってからずっと空き家になっている建物があり、そこで件のTシャツを製造していた作業台と、未製造のTシャツの図案が2種類発見される。
新しいTシャツ図案は、ヒュプノス(眠りの神)とハデス(冥府の王)であった。ハデスのシャツには、数秘学で1を示す「INDIVIDUAL(一個体)」と「QN」の文字、ヒュプノスのシャツには8にあたる「SACRIFICE(犠牲)」と「MMIII」の文字が隠されていた。マックは、一覧の数字は刑事裁判の事件番号ではないかと思いつく。KODEとCONの間にある天秤マークを「T」とすると、「DOCKET NO(事件番号)」のアナグラムになる。天秤は裁判の象徴でもある。MMIIIとQNは、2003年(ローマ数字で書くとMMIII)にクイーンズ地区(QN)で発生した事件と解釈できる。残る6つの数字「000718」は事件番号である可能性が高い。
一方、作業場で発見された毛髪からDNAを検査すると、殺人事件で逮捕されたイアン・ケイシーという男と血縁関係があることがわかる。イアンは2003年にクイーンズの検察に起訴され、事件番号「2003-QN-000871」もTシャツから読み解いたものに該当する。その毛髪の主は、イアンの弟でダニーたちにイードックランドリーの存在を教えたシェーン・ケイシーだったのだ。
イアンは2003年に強盗殺人で逮捕され有罪となり、25年から終身の刑を言い渡されたその日に獄中で自殺していた。その事件の陪審員長を務めたのがエイミー・フェイドラー、事件の唯一の目撃者でイアンを犯人と認めたのがケネス・チャンドラー。では、残るヒュプノスとハデスが意味するものは――と、マックは事件の書類を調べ、検死官としてホークスが証言していたことを知る。そしてホークスの話から、イアンの弁護人が法廷で居眠りをしており、反対尋問が手抜きだったことがわかる。彼らは弁護士事務所に向かい、無事に弁護士を救出してシェーンを逮捕。シェーンはたった15分の評議、1人の証言だけで兄が有罪と決めつけられたことに怒り、復讐を企てたのだった。
だがその後、シェーン・ケイシーが逃亡したという報せがもたらされる――。
グロ~! 切断・押し潰しなど、物理的破壊グロはすでにNYの定番になった感があるが、それもどんどんエスカレートしていくような。首を切り落として逆さ吊り、その次は両目に釘とは。猟奇殺人でもここまで想像しなかったわ、みたいな。グログロ。
しかし今回はグロよりもむしろ、それが暗号の一部になっている点が重要かも。神話を素材に使って、そこに数秘学の要素を盛り込んでアナグラムで表現。マニアックすぎ! 暗号ネタはけっこう好きだし面白かったんだけど。でも、「ダ・ヴィンチ・コード」に言及したところで、もしかして宗教象徴学の先生が出て来て解読に協力したりする? と、ちょっと期待してしまった。
まぁ結局それはなくて、ギリシャ系のステラが神話との類似を指摘し、数学に強いホークスが数秘学との関連を思いつき、ダニーが過去に扱った事件の記憶からヒュプノスを認識し、マックがアナグラムを解読、とチームのそれぞれが知恵を集めて(あれ、リンジーは何だっけ?)解読に成功したわけだが、担当がこのチームでなかったら解けてないような気がする……。それに、最初のシャツに描かれていた「数字の3」と「12個の×(または十文字)」はどうなったんだっけ? 「3」は最初の「全てと無」が0ではなく000、「12」は事件番号「2003-QN-000871」が12桁だという意味かな。
シェーン役のエドワード・ファーロングはさすがの存在感で、冒頭の登場場面から良い感じに怪しかったわね。で、最後に「逃亡しました」でぷっつり終わる。この後また登場するんだろうな。そういえば、シェーンが狙ったのは陪審員長と証人2名(目撃者と検死官)と弁護人の4人だけなのかな。担当検事はどういう人だったのだろう。
作中に登場する「EDOC Laundry」は実在するメーカーで、ウェアラブルゲームになるシャツも販売していたらしい。