CSI: NY - Season 6, Episode 8
ヘッジファンド会社を解雇された男が、船上で行われている会社主催のパーティに入り込み、共同経営者の片方を射殺。次にもう一人を撃とうとしたその時、橋の上から別の男性が落下してくる。
落下した男はバーの用心棒をしているリチャード・カルドロン。橋の上には本人の所持品や家族の写真があり、覚悟の自殺かと思われたが、検死の結果、自殺に見せかけた殺人と判明。手首を拘束され、胸部を銃で撃たれた形跡があったのだ。また、血液からは高濃度のクロナゼパム(筋弛緩薬)が検出される。
犯人が銃を一緒に橋から投げ捨てた可能性を考え、ホークスが川底に潜って調べたところ、針が東に固定された方位磁石が発見される。カルドロンはコンパスキラーの犠牲者だったのだ。付近を捜したところ、犯人らしき人影が見つかるが逃げてしまう。その男が逃げた後には「居眠りすべきではなかった。すまない」と書かれた紙が貼られていた。
カルドロンの衣服に付着していた繊維は、断熱材に使用される菌糸体。その素材が使用されている建物を調べたところ、クレストリッジ精神科病院に、橋から逃げた男とよく似た患者が入院していたことがわかる。氏名はホリス・エックハートといい、現在の所在は不明。入院していた部屋を調べると、被害者たちの似顔絵が残されており、エックハートがコンパス・キラーであることは確実だと思われた。
エックハートは測量事務所に勤めていたが、2年前に事務所で銃撃事件があり、その時にエックハートは重傷を負い、妻のカリオペは殺害されていた。それ以来エックハートは精神を病んでいたという。
カルドロンの車が発見され、残された物質を分析した結果、エックハートはフラッシング・メドーズで開催中の万博記念特別展にいるのではないかと思われた。マックらは現場に急行し、エックハートらしき人物を見つけるが、エックハートはその場から逃走。またも逮捕することはできなかった。
コンパス・キラー再登場。
タイトルの「カッコーの巣」は、精神病院を舞台にした作品『カッコーの巣の上で』から。元はケン・キージーの小説で、ミロス・フォアマン監督、ジャック・ニコルソン主演で映画化されている。というわけで、タイトルからコンパス・キラーがどういう人物かは何となくわかってしまうが、まぁ最初に登場した時からそういう雰囲気だったのでネタバレという程でもないか。
冒頭は、華やかな船上パーティ→解雇を恨んだ元社員による復讐殺人→自殺によって中断、というすごいタイミング。この舞台仕掛けは何となくマイアミ風?
その後は順調にコンパス発見、メッセージ発見、身元確認と話が進むが、肝心のコンパス・キラー本人は逃亡。逮捕劇は次回までお預け、ということになる。
さて、事件以外のところではドン・フラックのトラウマ完結篇のような場面があった。恋人のエンジェルを殺され、その犯人を手にかけたフラックはそのトラウマから立ち直れず酒びたり。地下鉄に乗っていてもまるでアル中のホームレスのようで、乗客から眉をひそめられる始末。で、チンピラに襲われ、危ない所を助けられ、マックに怒られて反省。
ここでフラックは「一線を越えた」と殺人を認める発言をするわけだが、それに対してマックが「それは君と神の問題だ」と司祭に丸投げするようなことを言うのはどうなんだろう。フラックの発砲は「正当」と認められているし、今回の2人の態度を見る限りでは、その判断が覆されることはないだろう。しかし「正当な発砲」をできる立場にある警官が、その権力を私的な制裁に使ったという事実は、内面的なレベルに留められる問題ではないはずだと思う。
だがその一方で、「ホミサイド」のシーズン3「正義 Part2」に出てきたジャデーロ警部補の言葉を思い出す。70年代は、警官殺しの犯人は「問答無用で殺せ」が不文律。「夢の中ででも警官やその家族を殺したら、飛び起きて謝罪するような時代」はおそらくNYにもあっただろうし、警察一家に生まれたドンがその文化の中で育っていることも想像に難くない。でも、もうそれが通用する時代ではないし、今後ドンがどのように折り合いをつけていくのかは見守っていくしかない……が、これで一件落着として忘れ去られそうな可能性もありかなぁ、このシリーズでは。
— Yoko (yoko221b) 2013-01-28