CSI: NY - Season 9, Episode 14
倉庫街で抗議のラクガキをしていた男女が、銃声と走り去る車を目撃。現場から去ったのはBMWと白いバンで、後には若い男性の射殺体が残されていた。
特殊な手術の痕から、被害者はピザ屋で働く若者、ポール・トートゥッチと判明。両親を亡くした後、ピザ屋を経営する叔父に育てられ、真面目に働く好青年で犯罪との接点はない。さらに、現場に残るタイヤ痕を精査した結果、何者かがBMWに乗ってポールのバンにわざと追突させるよう仕組んだとわかる。BMWは盗難車だった。
2台の車両はその後、乗り捨てられているところを発見される。ポールはスノーボードをしにカナダへ行く予定だったといい、バンにあったパスポートからも頻繁にカナダへ行っていたことがわかる。
バンとBMWの衝突跡の高さが合わないことから車両をよく調べてみると、下部に収納スペースが隠されており、ドラッグの痕跡が検出される。ポールの自宅には数千ドルの現金もあった。ポールはカナダへドラッグを運んでおり、それを狙われたのではないかと思われた。
BMWに残されていた微細証拠や血痕などから、前歴のあるリノ・マーテルが浮上。マーテルの自宅へ踏み込んでみると、そこには白い包みが大量に残されていた。盗まれたドラッグかと思いきや、それは何とモッツァレラチーズの塊だった。さらに床には、大量の血を拭き取った痕跡も発見される。
ドラッグの成分と思われたPEAは、ごく微量であるがチーズにも含まれる。ポールがカナダまで運んでいたのは大量のチーズだったのだ。
ポールの叔父であるレイはその話を聞き、「アメリカのチーズは安いから」と、カナダ人からチーズの密輸を持ちかけられたことを思い出す。チーズの密輸はリスクが低く「ホワイト・ゴールド」とも呼ばれる。レイはその場で断っていたが、おそらくポールがその話を聞き、店の赤字を補填するために密輸話に乗ったのだろう。ポールは自分から「店の帳簿を付ける」と言い出し、密輸での儲けをこっそり店の売り上げに足していたのだ。
おそらく犯人は、ポールが白い包みを大量にバンに積み込んでいるのを見て、ドラッグだと勘違いしたのだろう。そう仮定して、店の周囲を調べてみたところ、自動車修理工場で働くフェリペという男が、ピザ店の裏を長時間観察していたらしいとわかる。フェリペからマーテルに情報が渡り、2人で「お宝」を狙ってバンを襲ったのだろう。だが「お宝」がただのチーズであったとわかり、争いになった。
その争いに負けたのはフェリペの方であったらしく、フェリペは遺体となってゴミ捨て場で発見される。そばに落ちていた紙マッチからマーテルの行きつけの店がわかり、フラックとロバートが張り込んでマーテルを逮捕。
マーテルは「撃つつもりはなかった」正当防衛を主張したり、罪をすべてフェリペになすりつけようとしたりと弁解を試みるが、結局は「お宝」がただのチーズだったことを知ったマーテルが、怒りにまかせてフェリペを殺害したのだった。
殺害されたのは犯罪とは縁のなさそうな好青年。しかし身辺を調べるとドラッグとの関わりが浮上する。「良い子」の仮面の下には意外な素顔があるものさ、と思っていたら話は巡り巡って被害者はやはり良い子だった。すべてを知り、遺族に寄り添うように語りかけるマック。チーズとはいえ密輸は密輸なのだが、それを別にすると何だか初期シーズンに戻ったような展開だった。
そう、これが私の好きだったNYなのだよ! この大都会を黙々と支えているのは、華やかなセレブや大富豪たちよりも、このレイのような人々なのだから。都市を維持するために欠かせないけれど、しかし普段は誰も気に留めないような「不可視」の人々。その彼らに暖かいまなざしを向ける、心にしみるような優しさが、初期シーズン(というかシーズン1)ではドラマ全体を貫いていた。
お別れ前に、また昔のようなエピソードに出会えて良かった。余計な個人ドラマも奇をてらった展開もなかったところも良かったと思う。
エピソード全体に旧シーズンぽい既視感がある割に、脚本を担当した David Hoselton さんは今シーズンからの参加で、クレジットはこれが2作目なのがちょっと意外。エディターか何かで以前から制作に関わっていた方かもしれないが。
— Yoko (yoko221b) 2020-04-14