ジェフ・リンジーの小説「デクスター」シリーズ第1作。デクスター・モーガンはマイアミ・デイド警察に勤務する鑑識技官で、専門は血痕分析。犯罪現場に残された血痕の形状から、被害者と加害者の位置関係や犯行の様態を割り出すのが仕事だ。デクスターはハンサムで人当たりも良く、職場の人間関係も良好。だがデクスターには、自らが連続殺人犯であるという誰も知らない裏の顔があった。
翻訳版読了。
ジェフ・リンジーの小説は、TVシリーズ[デクスター」の原作である、と言ってしまってよいのか迷う。この1作目『デクスター 幼き者への挽歌』とTVのシーズン1には、確かに共通するストーリーラインがある。とはいえ、原作をなぞっていると言ってよいのは第1話までだ。設定のほとんどが小説に依拠しているのは確かだが、2話目からは原作を大胆に離れて独自の発展を遂げている。
全体を貫く連続殺人事件としての「アイストラック・キラー」の話は共通していると言って良いし、最終話では同じ方角に着地点を定めいる。しかし、それまで通ってきた道筋が違うことや、重要な部分が違っていることから、やはり違う物語として終わっていると思う。
何より違っているのは、主人公であるデクスター・モーガンのキャラクターだ。
ノヴェライズ、たとえばCSIシリーズの小説を読んでいると、TVの画面で見る彼らの立ち居振る舞いが目に浮かび、会話がその役者の声で聞こえてくることがある。でも、このデクスターはそうじゃないんだな。もちろん、翻訳版で読んだせいもあるのだろうけど(シリーズは英語版しか見ていない)、小説のデクスターを見てもマイケル・C・ホールの容貌は浮かんでこないんだよね。小説の彼はTV版のような内省的なところがなく、内面的な描写が少々物足りない(普通は逆なんだけど)。
脇を固めるデボラやエンジェルもちょっと違う印象だし、ラグェルタに至っては別人。かろうじて近いのはマスオカさんだろうか。
……まぁ、だから「TVと小説、どっちがどう?」と比較する物でもないとは思うのだが、でも個人的にはTVシリーズの方がずっと面白かった。
— Yoko (yoko221b) 2008-07-09