Dexter - Season 2, Episode 12
ドークス発見の報に「僕は血液専門だから行かない」と言ってデボラを送り出したデクスターは、大急ぎで道具を用意してエバグレーズへと向かう。
ライラは、デクスターが殺人鬼であることをドークスから聞かされ、彼の隠していた秘密の大きさを知る。そして「私は彼のソウルメイトよ」と言い、小屋に火をつけるとガス栓を開けたままにして逃亡。ガスが爆発を起こし、ドークスは焼死する。
デクスターが到着した時はすでに消防隊が作業中だった。ドークスの遺体の残骸が川の中から、デクスターが殺害した遺体と道具一式が焼け跡から発見される。ラグェルタからの報告を聞いてドークス犯人説に疑いを持ち始めていたランディも、圧倒的な証拠を前にして納得せざるを得なかった。
デクスターは証拠品の中からカーナビを発見し、ライラの犯行に思い至る。彼は水族館でライラと会って話し合い「一緒に遠くへ逃げよう」と誘う。そしてこっそりライラを殺しに来るが、様子を見に来たデボラと鉢合わせ。ライラはデクスターのバッグを見て真意を悟る。デクスターはデボラの手前、ライラを引き止めるわけにも行かず、黙って見送るしかなかった。
ライラからマシューズ警部に「BHBについて重要な情報があるので、デクスターも同席で面会したい」と連絡が入る。それは自分を警察署にとどめておくための陽動作戦だ、と気づいたデクスターは、あわててリタの自宅へ向かう。その時すでに、ライラは子守を眠らせてコーディとアスターを連れ去っていた。
ランディはまだ後始末のためしばらくマイアミに滞在する予定だったが、別の事件の捜査のため急遽発つことになる。デボラはそれでもついて行こうとするが、リタから連絡を受けて思いとどまる。
デクスターはライラの家で子どもたちを発見するが、ライラは家に火を放ち、3人を閉じ込めて逃亡。デクスターは2人を逃がし、やっとのことで自分も脱出して、駆けつけたデボラに助けられる。デボラは隣人の目撃情報を聞いて、すぐにライラの犯行だと判断したのだった。デボラは放火容疑でライラを手配するが、その頃ライラはすでに飛行機に乗り込んでいた。
ライラはパリへ逃れるが、デクスターは後を追って彼女を殺害。
ベイハーバー・ブッチャーは一時期英雄視されたことすらあったが、事件が終わってみればドークスを称える者はなく、ただひとりラグェルタだけがドークスの無実を信じていた。デクスターは改めてハリーの「掟」を噛みしめる。その掟はハリーの命を奪ったがデクスターの命を守った。デクスターは「ハリーの掟」を卒業し、自分自身の掟に従う生き方を始める。
デクスターが強運すぎるような気がしないでもないが、ストーリーの端々がきっちりと収まった充実のフィナーレ。
今シーズンは、シーズン1でオープンなまま終わった部分の結末をつけ、要所要所でS1と似たようなエピソードをなぞって対照を成すような構造を取りながら、デクスターが「ハリーの掟」を卒業したように、このシリーズ自体が原作デクスターを脱却して「TV版デクスター」を新たに語り直したという印象だった。
シーズン1を締めくくったパレードの場面を思い出す。前シーズンであれを見たときは「何だこれは?」と大いに困惑したものだった。私にとってデクスターはあくまで、殺したいという衝動をかかえる殺人鬼だったところが面白いのであって、これが「天に代わって悪を討つ」的な英雄になってしまったらつまらないなぁと、少々心配になったのだが、どうやら杞憂だったようだ。「デクスター」は、あの意味不明なパレードの白昼夢から1シーズンかけてようやく現実に戻って確実に着地したような気がする。凶悪犯だけを手にかける「ベイハーバー・ブッチャー」は一時的に称賛を浴び、コミックの題材にもなったけれど、事件が解決した今、誰もドークスを称えない。BHBとは無関係に、家族として、あるいは親友としての彼の死を悼む少数の人がいるばかり。
そんなこんなで、2シーズンかけて大きな物語が完結し、きれいに終わったのは良いのだが、きれに終わりすぎて「続き」を求める気持ちが沸いてこないのだなぁ。この番組は現在、本国アメリカではシーズン3が終わり、放送局(SHOWTIME)はシーズン5まで発注したらしいのだが。
ライラの最期などはちょっと駆け足な感じもあったけれど、これ以上引っ張りそうな感じではない――たとえば、ライラ事件を追ってパリの刑事がマイアミへ捜査に来るとか、そんな展開はちょっと想像できない。継続ネタがあるとすれば、ドークスの無実を信じるラグェルタぐらいか? ラグェルタはすっかり、原作とは別人になってしまった。デボラもそうか。
— Yoko (yoko221b) 2009-05-20