Dexter - Season 6, Episode 10
一連の犯行がすべてトラヴィス・マーシャルひとりの手になるものであることを知ったデクスター。当然ゲラーもトラヴィスの手にかかったものと思われたが、トラヴィスは偽預言者たるデクスターこそがゲラーを殺したのだと叫び、ゲラーの幻覚に向かって「あなたは必要ない。僕は他の協力者を得て使命をやり遂げる」と宣言する。
デクスターはトラヴィスを警察に渡さず自分で始末するため、ゲラーの手を使って教会に指紋を残し遺体を処分。モーテルでトラヴィスのパソコンを使ってゲラーのブログに偽のメッセージを書き込む。
トラヴィスはネットカフェでブログへのコメントを読み、「ドゥームズデイ・アダム」ことスティーヴ・ドーシーに目をつける。
デボラらは聞き込みの途中で廃墟の教会を発見し、「怒りの鉢」に続くタブローが「ニガヨモギ」であることを知る。黙示録の第8章には「ニガヨモギという星が天から落ちて人類を毒殺する」という文言がある。
デクスターは、トラヴィスに解放された女性ホリー・ベンソンがニガヨモギの犠牲になるのではないかとにらみ、行方を捜す。ホリーは恋人ピーター・グラントが所有するボートに乗っているらしい。だが、トラヴィスとスティーヴが先回りしてホリーを捕えていた。トラヴィスらは「信念を試す」ためにホリーを殺害する。
教会の現場で発見された薬瓶からトラヴィスの主治医が判明。主治医はすでに死亡していたが、トラヴィスが統合失調症を患い、幼い頃から暴力的で無感情、両親を殺害した疑いもあったとわかる。
ルイスは自作のゲームをデクスターに見せるが、デクスターは「連続殺人犯になるゲームは良くない」と不快感を示す。
デクスターはマリーナへ行くがホリーのいるボートは見当たらない。デクスターは警備室へ忍び込んで防犯ビデオを確認し、トラヴィスが乗り込んだことを知る。トラヴィスは船上でホリーを殺した後、毒ガスを生成していた。
デボラはジェシカに花を贈った人物がいることを知り、花屋に問い合わせてそれがマシューズであることを知る。
エンジェルは、スティーヴがDDKのブログへのコメントで「僕と妻は最後の戦いの戦士に選ばれた」と言っていることを知って自宅へ向かう。ベスは「ブログへのコメントは冗談です」とごまかそうとするが、エンジェルは本棚にゲラーの本が何冊もあることに気づく。だが次の瞬間、エンジェルはトラヴィスに殴り倒されていた。
デクスターはボートに乗り込み、防護服に身を包んだ男をトラヴィスだと思って刺殺するが、それはスティーヴだった。デクスターは錨につながれたホリーの遺体を発見。さらに空き容器から彼らの武器が毒ガスであることを知る。デクスターはハリーの幻影と言い争い、「自分よりも偉大な力に身をゆだねよ」というブラザー・サムの言葉を思い出して匿名で警察に通報する。
ゲラーがすでに死亡しており、一連の犯行はトラヴィスひとりの手によるものだと知ったデクスターは、邦題のとおり軌道修正を余儀なくされる。トラヴィスも、デクスターと警察の手を逃れて「タブロー」を完成させるために新たな協力者を探すことになる。そして「ドゥームズデイ・アダム」ことスティーヴの家を訪れたトラヴィスの表情! 今までの「トラヴィス」とは全く違う、預言者然とした威厳をたたえた顔になっていた。今まで視聴者に「ゲラー」として見せられてきた人格は、実際にはこういう顔のトラヴィスだったのかもしれない。
今回のタブローは「ニガヨモギ」。
チェルノブイリ原発事故が起こった後、ロシア語でチェルノブイリは「ニガヨモギ」の意味であるということから、あの事故は黙示録で予言(預言)されていた! と話題になったことがあった。なので「ニガヨモギ」のタブローには放射性物質を使うのかと思ったら、そうではなく毒ガス。まぁ放射性物質はそう簡単に入手できないし、即効性もないからタブローには不向きかも。ちなみに、辞書を見るとチェルノブイリ(чернобыль)は確かに「よもぎの一種」と出ているが、黙示録に出て来るニガヨモギと同一かどうかはわからない。登場するのは黙示録の第8章で、小羊が第7の封印を解いた時に7人の天使がらっぱを手に現れて、1人ずつらっぱを吹く。3番目のらっぱの時に、「ニガヨモギ」と呼ばれる大きな星が天から川に落ち、その川の水が汚染されて多くの人が死ぬ。
この場面は、オットハインリッヒの聖書(図1)もデューラーの木版画(図2)も同じような構図で、左下で落下している星がそれだと思うのだが、この章ではもうひとつ別の星が落ちる場面があるので(イナゴが出て来る直前)、もしかしたらそっちの方かも。
デクスターはブラザー・サムの言葉に従い、警察に通報。「偉大な力」って警察のことかよ! いや、サム自身はもっと超自然的な、霊的な力のことを言っていたと思うのだけど、デクスターにかかると妙に現実的な解釈になってしまう。殺人を懺悔したことといい、こういうギャップが何だか面白い。
ところで、今までメインのストーリーラインに絡んでこなかったので(今も絡んでいないが)特に取り上げてこなかったネタをちょっとおさらい。
まず「アイストラック・キラー」事件の証拠品である、被害者の義手。これは、マスオカの助手ライアンが盗み出してネットオークションにかけていた。マスオカはそれを知ってライアンを解雇し、新しく採用した助手のルイスに落札者の追跡を命じる。落札者は不明だったが、その後何とルイス自身が義手を落札して手に入れていたことがわかる。ルイス君は現場で血痕分析をするデクスターを「かっこいい」と褒めそやし、高性能の検索エンジンを勧めたり、自作のゲームを見てくれと自宅に押しかけてきたりとつきまとう。ただ単純に憧れているのか、それとも何かウラがあるのか、現時点ではまだわからない。
次にホテルで変死していた女性、ジェシカの件。死因自体は薬物の過剰摂取で、殺人とはいえない。死亡時に誰かが一緒にいたことは確かだが、殺人なら心肺蘇生はしないだろうから、死亡はやはり事故なのだろう。ジェシカが売春婦なら、客が逃げようとするのはある意味当然だ。ラグェルタが現場にいたのは、警察幹部か政治家から揉み消しを頼まれたとしか思えない……と思ったら、案の定「お客」はマシューズ。マシューズさん、買春行為をラグェルタに知られてしぶしぶ昇進させたばかりなのだから、少し行いを慎んではどうだろうか。
— Yoko (yoko221b) 2012-12-23