Judge John Deed - Series 1, Episode 4
医師のヘレナ・ベリューが末期癌患者レジ・モアを殺害した容疑で起訴される。モアの体内からは大量の薬物(ジアセチルモルヒネ)が検出されており、モアの姪の夫ピーター・テイラーが、死亡当日のベリュー医師の様子がおかしかったことや、錠剤を手にしていたことなどを証言する。モアは遺言の内容を変更し、姪のモーリーン・テイラーではなくベリュー医師に財産を譲ることにしていた。今回ジョー・ミルズは弁護側で、ベリューが「財産を取られた恨みから濡れ衣を着せられた」と印象付ける。
ベリューは自ら証言台に立ち、モアに鎮痛剤を与えたこと、死亡当日は特に痛みがひどく大量に投与したことなどを証言する。安楽死を考えたこともあるが、回復の可能性を考えて思い直した、また遺産を譲られることは、モアの弁護士から連絡を受けて初めて知ったと主張する。
検察は、ベリューが以前に勤務していた病院で赤ん坊を死なせたことや、死亡診断書を書いた医師がベリューの恋人で、彼が高級車を注文していた(ベリューの起訴後にキャンセル)ことなどを持ち出して追及。だがその医師は、以前から高級車を注文してはキャンセルする、ということを繰り返していた。
事件の合間に、ディードは父親の見舞いに出かける。父親も癌を患っており、ディードの妹(姉?)は「早く楽にしてあげたい」とベリュー医師の立場に理解を示す。そしてディードは、自分が両親の実子ではなく養子だったことを知らされる。父親は、家族の誰よりも成績優秀で法律家の道に進んだ養子ジョンを誇りに思いつつも、事実を知らせれば、彼が自分のもとから去ってしまうのではないかと恐れて口に出せなかったのだという。ディードは父親に「私はずっと貴方の息子だ、何も変わらない」と言う。
法廷では、弁護側の証人として病理学者が出廷し、モア氏が自然死である可能性が高いことを証言する。検死医もそれを可能性として受け入れ、ディードはベリュー医師の無罪を確信。検事と弁護人を執務室へ呼び「陪審員には、無罪にするよう説示するつもりだ」と述べる。
無罪になった後、ベリューはディードを食事に招待する。ジョーは「LCD(大法官省)のスパイが見張っているのだから慎重に」と警告し、ディードも距離を置こうとするが、ベリューはその後もアプローチを続け、ついに官舎に押しかける。その動きは、ディードの失脚を狙うイアン・ロチェスターの部下に監視されていた。
翌日、ディードはジョーにベリューが話した内容を告げる。モアは痛みに耐えかね「終わらせてほしい」(「痛みを」とも「人生を」とも明言せず)と頼み、ベリューはアンプル4個(証言した量の倍)の薬物を投与してモアを殺害したと告白したのだった。
ディードは証拠を調べ直すが、ベリューが持ち出した薬の量はアンプル2個でしかない。他から調達した可能性も考えられるが、ディードはそれよりも偽りの告白(false confession)症候群で、以前に赤ん坊を死なせた罪悪感から「罰されたい」と望んでいたのではないかとも考える。仮に殺意があったとしてもそれを証明することは不可能と思われ、弁護人だったジョーも出廷した病理学者も「思い悩むのは止めて先へ進むべきだ」と助言する。
LCDのスパイがベリューを尾行していることを知ったディードはベリューを呼び出し、飛行場で落ち合って熱烈にキス。尾行していたスパイたちは大喜びで「密会現場」の写真を撮るが、そこにいたのはベリューではなく、彼女に扮したジョーだった。
チャーリーの友人ケイト・ランキンが、生後9ヶ月の息子ブランドンのHIVテストを受けるようにという命令を受ける。ケイトはHIV陽性だが、食餌療法などで発症を抑えており、「結果が陽性であれば自分で育てられなくなってしまう」からと検査を拒否する。
最初はチャーリーが付添人(McKenzie friend)として同席するが、その後事件はディード判事の担当になり、ジョー・ミルズがケイトの代理人に就任。令状によりブランドンは児童福祉局に引き取られてしまい、ディードはその措置が妥当であるか、またHIVテストと行うべきかどうかを審査する。
ジョーとチャーリーは、ケイトが検査に反対する本当の理由を聞かされて驚く。ブランドンは実はケイトの子ではなかったのだ。母親はケイトの友人で、ブランドンを産んですぐに乳癌で亡くなり、ケイトが自分の子と偽って育ててきたのだった。養育を任せるための正式な手続きを踏んでいないため、ジョーは「ケイトに法的な権利はない」と悩む。
ディードはケイトとスティーヴの養親としての適格性を認めつつ、福祉局がHIVテストを行うことも認める。局員たちはその場でテストを行おうとするが、ケイトらはいつの間にか赤ん坊をすり替え、ブランドンを連れて逃げてしまっていた。このまま3年間養育すれば、正式に養育権を申請することができる。その時は、再びディード自身が事件を担当することになるであろう。
今回は事件が2つですっきり。ディード判事の個人的な事情が事件に絡んでくるというパターンは同じだが、事件が少ない分ストーリーがシンプルでわかりやすかった。今回ジョーさんは弁護側。前回の件で、本当に検察から仕事が来なくなってしまったのだろうか。
判事が実は養子だったということが唐突に明らかになり、何でいきなりそんなことを? と思っていたら、それが後半でケイトとブランドンの親子関係につながっていった。で、ブランドンの件があったので、最後の「密会」場面も早い段階で予想がついてしまった。でもオチがわかってつまらないというのではなく、「やっぱりそうだったのね~」とニヤニヤするような面白さがあった。
しかしブランドン事件の結末はこれで良いの? 大丈夫なの? という不安も。ケイトがブランドンに愛情を注いでいることは疑いがないが、やってることだけ見れば誘拐じゃん? ……おそらくこれも、ドラマだから許されるのだろうと思うけど。
前回のエピソードで、ディード判事の判決は「大岡裁き」っぽいなと思っていたら、今回のエピでは、2人の女性が1人の子を取り合ったという旧約聖書のソロモン王の伝説が引用されていた。これは大岡政談にも似た話があって、キリシタンの時代に伝えられた話が元ネタではないかと言われている(中国起源とする説もあるようだが)。だからまぁ、あながち的外れな印象でもなかったのかな?
今まで英米の法廷ドラマというと、検察側と弁護側が丁々発止と言説を戦わせ、判事は文字通りジャッジ=審判に徹するというものだった(そもそも判事が主人公のドラマって少ないよね)。そういう当事者主義の国でも、こういうドラマが可能なんだなぁというのが、何というか新鮮で面白かった。
そんなわけで、第2シリーズ以降も見てみたいのだが、未見のDVDをもう少し消化するまでしばらくお休み。
— Yoko (yoko221b) 2010-02-17