Kavanagh Q.C. - Series 1, Episode 4
企業の乗っ取り屋として知られるパトリック(パット)・ハットンが、宿泊先のホテルで殺害され、事件当夜彼とともに部屋へ行った売春婦のアン・ルイスが逮捕される。カヴァナーと同僚のジェレミー・オルダーマーテンが弁護人に就任。
アンは、ハットンに襲われて身を守り、ハットンの顔を引っかくなどしたが、殺害は否定。午前1時頃にホテルを出たと主張する。ハットンの死亡推定時刻はそれより後の3時から4時。だがホテルのフロント係はアンが出て行く姿を午前3時過ぎに見たと言う。また、アンが利用したタクシーの運転手も、アンの主張より遅い時刻に乗せたと言い、アンのアリバイは成立しない。
検察は、故殺罪で9年の実刑(素行が良ければ5年程度で仮釈放)という取引を打診。断って有罪になれば終身刑か、最低でも12年の実刑が予想される。だがアンはあくまでも「自分は無実だ」と主張。そうである以上、カヴァナーは有罪答弁を勧めることはできなかった。
カヴァナーは、「アンを3時過ぎに乗せた」と言うタクシー運転手に対しては、記憶がそれほど確実でないことを反対尋問で印象付ける。ハットンの助手は、フロント係のデイが普段から売春婦を斡旋していたことを証言。アンはデイを介さない(つまりデイにマージンが渡らない)女性だった。また、ハットンは仕事柄敵が多く、ボディガードを雇ってもいた(事件の夜はハットンが帰していた)。
アンの元彼は、彼女が書いていた日記帳を提出。そこには、「男を殺害する」情景が生々しく記載されていた。検察はそれをアンの動機の一部と位置づけるが、カヴァナーは、それが元彼のカーターに対する暴力的な空想であるという解釈を尋問から引き出していく。元彼といってもカーターはいわばポン引きであり、アンはカーターと同居中に暴力を受けており、カーターと暮らしていない時期の日記に暴力描写はなかったのだ。
アンは自ら証言台に立ち、ハットンに暴力を振るわれて逃げたが殺していないこと、日記は「精神的な安全弁」であることなどを証言する。次にアンは、反対尋問に立った検察官の挑発に対して「ハットンを憎んだ、殺してやりたかった。殺したとしても自分は後悔せず罪悪感も持たなかっただろう……だが殺さなかった」と言う。
カヴァナーは検察の主張する「証拠」がいずれも、アンがハットンを殺さなかったとしても成り立つものであることを主張し、陪審員は無罪の評決を下す。
父親の職場見学に来ていた息子のマットは「デイが犯人を知っているのでは」と言うが、カヴァナーは「知らんな」と答える。証拠が不十分であることを証明したところで弁護人の仕事は終わり、後は警察の仕事になる。好奇心というものは弁護人には許されない贅沢なのだ。
ハットンの妻は夫の買春行為や暴力を信じられず、ひとりアンを訪ねて「誰にも言わないから、あの証言は嘘だったと言って」と懇願するが、アンはそれを拒絶する。
今回は評決が有罪なのか無罪なのか、最後まで予想がつかなかった。有罪評決でも全然おかしくないケースだったと思うのだが、リベラルな陪審員が多かったのだろうか。
ともかく評決は無罪。「無罪」は “Not guilty” であって「無実」とは限らない(仮に犯人であっても証明が不十分であれば無罪になる)わけだが、無罪評決が出た以上「真犯人は誰だ?」という疑問が出るのは必然。しかしカヴァナー先生は興味を示さない。なぜなら、検察の証拠が不十分であることを証明したところで、弁護人の仕事は終わるから。真犯人を挙げるのは警察の仕事であり、好奇心は弁護人には許されざる贅沢だ―― “I can't allow myself the luxury.” と言う。かっこいい! キメすぎです先生!
しかし弁護人はそれで良いとしても視聴者としては気になる! 真犯人は結局誰だったんだ!
証拠は不十分だったが、真犯人はやはりアン――という可能性もあることはあるが、さまざまな描写を総合してみるとアンは無実かな。とすると、フロント係のボビー・デイが偽証したということになる。アンが出て行った時、ボビーは確かに時計で時刻を見ていた。売春斡旋のことで口論になってボビーが殺したのか、企業の乗っ取りの件で被害者を恨んでいた第三者、あるいは被害者の助手が殺害して、ボビーを買収して偽証させたのか……。でも真相はわからないんだよね~気になる~。
さて、今回のエピではカヴァナー家にも変化の兆しが。娘のケイトは大学進学が決まるが、彼氏から「同じ大学に来てくれないなら別れる」と言われて悩む。これはつまり、大学のランクを落とせということなのだろう。それは困るよね。夫人のリジーさんには新しい仕事のオファーが来るが、勤務地はフランス。ケイトはともかく、弟のマットは両親の留守に友達を呼んでドンちゃん騒ぎをするなど、まだまだ目が離せない様子。そんなわけで、さすがにカヴァナー先生も難色を示すが、最後にはリジーさんの気持ちを理解して、その仕事を受けるよう励ます。リジーさんが単身赴任して、週末に行き来することになりそうだ。92年に欧州連合条約が調印され、ヨーロッパがどんどん狭くなっていった時期だったのだろう。
カヴァナー家の問題はこれまでにも少しずつ描写されて来たが、シリーズの最終話に来たところで、それぞれが少しずつ成長しながら次の段階へ進んでいく――という、良い感じの締めくくりになったと思う。
— Yoko (yoko221b) 2011-05-02