Law & Order - Season 2, Episode 4
コーヒーショップの前で恋人と口論していたネイサン・ロビンスが刺殺された。犯行時、恋人は店内でコーヒーを買っており、現場は見ていない。目撃者は数人いたが「その瞬間」は誰も見ていなかった。その場から逃げた「不審な男」の描写も食い違う。口論の原因はプロポーズのやり方だったというが、その時にネイサンが持っていたはずの指輪は現場から消えていた。
店の周辺に「レモンヘッド」ことクリスチャン・テイタムというホームレスの男がいたことがわかり、逮捕。テイタムが暮らしていたシェルターの居室には指輪があった。だがテイタムは「刺したのは自分ではなくジェイムズ」と言う。テイタムは妄想にとりつかれ、自分はスパイでKGBに追われていると話すが、「ジェイムズ」が強盗を主導したのはどうやら事実らしい。目撃者の証言が食い違っていたのは、現場に2人いたためだった。
テイタムの供述から、ジェイムズが暮らしていたセントラルパークの一画を捜索するとナイフが発見され、ジェイムズ・ポレスキーが逮捕される。ナイフに付着していた血液と体毛は被害者の物と一致、傷の大きさとも整合、ポレスキーの指紋が付着していた。
ポレスキーとテイタムは殺人で起訴されるが、テイタムの弁護士は、指輪を押収したときの捜索令状がないことを指摘し、指輪は証拠からはずされる。その指輪はテイタムに対してのみ排除されるはずだが、判事はポレスキーに対しても排除すると決定してしまう。しかしナイフの証拠やテイタムの証言があり、ポレスキーは有罪判決を受ける。
判決から6週間後、ポレスキーは憲法第4修正条項に基づき控訴。彼の「住居」すなわち公園の捜索令状を取らなかったことが違法捜査だという。上訴裁判所はその言い分を認め、ナイフは証拠から排除される。一方、テイタムは前の裁判で検事と取引をして証言していたが、その時に法廷でポレスキーの姿を見て極度に脅え、その後入院させられていた。現在はとても証言できる状態ではない。ストーンは、指輪を排除したことが誤りであること、証人が出廷できない場合はそれ以前の陳述書を証拠と認めてよいことを主張。第1級故殺で取引が成立する。
police proceduralドラマを見慣れてくると時々「あ~証拠をそんな風に扱っていいのか~」とか「そこは令状が要る(要らない)のでは?」なんてことが気になってしまう。容疑者の「住居」に踏み込んで家宅捜索して証拠を押収する時には当然令状が必要だが、それ以外の場合(車とか屋外のゴミ箱とか)はドラマによって描写が微妙に違っていることがある。州や時代による違い(90年代と現在とでは事情が違うと思う)もあると思うが、単なる「ドラマ上の都合」もあるかも。
しかし、それにしても公園の一画で「捜索令状」とは! びっくりですよ。
作中で言及された事件は、1984年の Oliver vs. US と、1967年の Katz vs. US 事件。前者は自宅の庭でマリファナを育てていることを警察官が遠くから目視で確認して逮捕。令状なしで警官が「外から見た」ことが違法な捜索に当たるか? ということが争われたが、これは住居の侵害にあたらないという判断がなされている。後者は、公衆電話を使って違法なギャンブルをしていたことが、盗聴によって裏付けられて起訴されたという事件。令状なしで公衆電話を盗聴した(ボックス内には立ち入っていないみたい)ことがプライバシー侵害にあたるかという事が争われた。この事件では「プライバシー権によって守られるのは場所ではなく人である」としてプライバシー侵害が認められた。
ここで問題にされている合衆国憲法の第4修正条項とは、「不合理な逮捕捜索、もしくは押収に対し、身体、住居、書類および所有物の安全を保障される人民の権利は、これを侵害してはならない。令状はすべて、宣誓もしくは確約によって支持される、信頼するに足る理由にもとづいてのみ発せられること、かつ捜索さるべき場所および逮捕押収せらるべき人または物件を明示していなければならない。」(『世界憲法集』より)
うーん、公衆電話で電話をかける時には、「その通話の内容は、相手以外誰も聞いていない」ということを期待すると思う。だが仮に自分がホームレスになって公園に寝起きするとして、そこに官憲が入って来ないことを期待するだろうか? と思うと……これは期待しないような気がするなー。普通考えないだろ、そこまで。ストーン検事の “Jesus, Mary and Joseph” という驚き方が何というか、彼らしくて面白かった。
「クライアントは喜ばないだろうが、少なくともあと25年は屋根の下で暮らせるわけだ」という弁護人に対して「レモンヘッドもそうだ――Bellevue病院のゴムの天井(患者が暴れた時のための部屋?)がある。そしてネイサン・ロビンスは、6フィートの土の下にいる。喜ばない?それがどうした」と言う検事の言葉にも、彼らしい正義感が垣間見えたと思う。
— Yoko (yoko221b) 2007-06-13