Law & Order - Season 2, Episode 21
市議会議員のジェイムズ・ヴォーゲルが、路上で刺殺体となって発見される。ヴォーゲルは自分がゲイであることを隠しており、それをカミングアウトするべきか悩んでいたことがわかる。実際、ゲイ雑誌 “OUTWORD” の編集者バークレーがヴォーゲルの手紙を入手し、アウティング(暴露)記事を書こうとしていた。事件以前にヴォーゲルに定期的な出費があったことから、その手紙が脅迫材料だったという可能性が考えられた。
ヴォーゲルの部屋からは、州刑務所の囚人の手紙が発見される。相手のハロルド・ドワイヤーは重窃盗および傷害で6年の実刑判決を受け、2週間前に釈放されたばかりだった。ドワイヤーは獄中で雑誌に「文通相手求む」の広告を載せて何人もの相手と文通し、卑猥な手紙を書かせてそれをネタに恐喝していた。その片棒をかついでいたのは、弁護士のピーター・コルソンと思われた。
クーリエサービスからの情報で、コルソンに現金が送られたことがわかる。送り主のジョージ・ハリスも、ヴォーゲルと同じような恐喝被害者であった。ハリスは現金を送ったことを認め、コルソンからの脅迫電話もテープに録音していたが、ゲイであることを職場に知られるわけにはいかない、刑務所に行くほうがましだとテープの提出を拒否する。
ロビネットは法廷を「閉じた」状態にして、傍聴人や取材をいっさい入れずハリスを匿名の証人とすることを提案し、いったんは受け入れられる。しかし「報道の自由」を主張するバークレーの申し立てで禁止令状が出され、法廷は公開されることになってしまった。ハリスは証言を拒否したが、テープに関してはすでに宣誓して証言しているので、その証言は証拠として法廷に出されることになった。
テープを証拠に出され、コルソンは第3級の重窃盗罪で取引を受け入れる。コルソンの話から、ドワイヤーがヴォーゲルの自宅に電話をしていたことがわかる。ジェイムズ・ヴォーゲルがもう金は払わないと拒否した後、ドワイヤーは父親エド・ヴォーゲルを脅して金銭を得ていた。ジェイムズはそれを知って怒り、金を取り返しに行って殺害された。エドは息子がゲイであったことを隠蔽するために脅迫の事実を隠し、バークレーの申し立てに一流の弁護士をつけて法廷を公開させ、ハリスの証言を妨害したのだった。ドワイヤーは第2級重窃盗と第2級謀殺で有罪の評決を受ける。
クローズド・コートルームというのがあるんだ。傍聴なし、取材なし、被告人すら法廷に入れず弁護人のみが出廷。証人ジョージ・ハリスの身元は検事と判事しか知らない。弁護人は証言を聞いて反対尋問できるが、氏名は知らされない。ジョージ・ハリスは有名人(元野球選手だったかな)で経歴をかわれて今の仕事に就いたので、証言によって生活をすべて失いかねない危険があった。でも、刑務所へ行く方がマシだといっても、実際に「刑務所へ行く」ような事態になったら、その裁判だって公開なのだから自然にバレるのでは。※追記:有罪答弁して取引すれば、公判は開かれずに済むようだ。
日本ではどうなのだろう。薬害エイズ訴訟では、原告が匿名となり原告番号で識別され尋問ではついたてで顔を隠すという措置が取られていたのではなかったっけ。ただし、薬害エイズ訴訟の原告が匿名なのは差別や偏見から身を守るためであり、このエピソードの証人が被告人の攻撃(アウティングや暴力など)から身を守ろうとしたのとは、ちょっと意味合いが違うかもしれない。
もちろん、滅多にできることではないらしく、いったん認められた時は “minor miracle” と言われていたが、「報道の自由」を根拠に横槍が入ってしまう。しかもその黒幕が、被害者の父親だったとは! 息子を殺害した犯罪者を処罰することよりも、息子の性的指向に関する秘密を守ることの方が重要だったのか、親父様は。
法廷が公開になってしまい、証人は当然出廷を拒むわけだが、それまでの証言は証拠として採用して良いのね。何でも、証人が出廷できなくなった場合(死亡、病気、州外への転出など)のための規定があるらしい。ストーン検事も白々しく「証人に連絡を取ろうとしましたが、急に引っ越したようで居場所がわかりません。おそらく州外にいるのでは」とか何とか言ってたけど、どう見てもそれ嘘やろ!
— Yoko (yoko221b) 2007-11-24