Law & Order - Season 3, Episode 21
31分署のパトロール警官ニューハウスが銃撃戦に巻き込まれて殉職。パートナーが巡査部長昇進のための研修に出かけていたため、単独行動だった。ニューハウスは無線で応援を要請していたが、その連絡を受けた警官は場所を間違えて間に合わなかったという。
現場にあった証拠品の指紋と目撃証言から、傷害、麻薬所持、窃盗などで逮捕歴のあるルーチョ・マルティネスが現場にいたことがわかる。マルティネスは「自分は撃っていない」と主張するが、現場にいたことは認めた。彼の話では、別の警官2名が近くで待機していたという。ローガンはニューハウスの勤務評定を入手し、それまで申し分のなかった評価が3ヶ月前から突然悪くなっていることを知り不審に思う。ブリスコーも、ニューハウスのパートナーのマグロウが、事件直後に別の分署への転属を希望していることを知り、やはり不審に思う。
ブリスコーとローガンはニューハウスのアパートを訪れ、彼がゲイだったことを知る。また、無線連絡の時刻を精査してみると「住所を間違えた」という主張には矛盾が生じる。分署の警官たちが「ゲイの警官」を嫌って見殺しにしたのではないか――。
ストーンとロビネットは、応援に向かっていた警官たちに順番に話を聞く。彼らはゲイに対する反感を示したものの「ニューハウスがゲイとは知らなかったし、仕事は仕事で影響はない」と主張する。次にマグロウに事情を聞くと、ゲイの警官を糾弾するビラが出回っていたことがわかる。検事は、最も若いウェデカーに的を絞り「君はハーレイに命令されただけだろう?」と説得し、「ハーレイとローズがビラを書いた」という供述を得る。
事件当時、応援に向かった4人の巡査のうち、ウェデカーを除くデイヴィス、ハーレイ、ローズの3人は第2級謀殺罪で起訴される。ウェデカーは証人として、ハーレイが現場の近くでパトカーを止め、ニューハウスはゲイだから助けないと言ったことを証言する。さらにマグロウも証言台に立ち、自分もゲイであることや、それとなく無言の嫌がらせを受けていたことを証言する。転属願いを出したのは、ニューハウスのように死にたくないと思ったためだった。
弁護側は精神科医を証人として申請し、現代社会において男性にとってホモセクシュアルへの嫌悪や恐怖感はごく自然なものであると証言。さらに31分署のオハラ警部は、「ゲイの同僚は信頼できない」と言う警官がいたことを認める。だがこの裁判において問題にされているのは、ゲイではなくストレート(異性愛者)の警官の行動なのだ。
弁護人は「被告人は皆さんと同じ人間であり、この社会の伝統と価値観を守っただけだ」と主張する。対してストーンはゲイとストレートの問題に矮小化せず、人種や政治信念、宗教といった属性に敷衍できる問題として「法を執行する警官に、相手の属性に応じて誰を助けるかを選ばせて良いのか? もしそうなら、たとえ自分では仲間だと思ったとしても、緊急通報をしてはいけない」と主張する。だが結果は、3名とも無罪の評決であった。
うーん、これが無罪か! 陪審裁判の評決は、本当に予測がつかない。
ストーン検事は「何がいけなかったのか」といろいろ考えていたけれど、私としては、陪審員たちは被告人の警官たちを自分たちの「仲間」と見なして赦したのではなく、責任はあるが第2級謀殺(Murder 2)は重過ぎるとして無罪に票を投じたのではないかと思いたい。故殺なら有罪になったのでは……と。
実際のところ、彼らにどれだけの殺意があっただろうか。殺害計画を立てて直接に手を下したわけではない。死なせるつもりではなく、痛い目に遭わせて辞めさせようとしていたのではないのだろうか。とはいえ、ニューハウスが危険な状態にあることは認識していたはず。そこを敢えて放置したのだから、「死の危険があるが、死んでもいい」というレベルでの殺意があったということになるのだろうか。
ゲイをめぐるこのような事件では、えてして「被害者がゲイである」ことに関心が向きがちだ。ストーン検事の「ここで問題にしているのは、ゲイではなくストレートの警官だ」という指摘には、はっとさせられた。
それにしてもあの弁護士……命令を守って助けに行かなかったウェデカーに対して「たいした英雄ですな」と皮肉っぽく言っていたけど、そんな言い方したらあんたの依頼人はどうなるんだよ!
3人が無罪になって、ウェデカーとマグロウはどうしただろう。有罪でも無罪でも居辛くなるには違いないと思うのだが。
— Yoko (yoko221b) 2008-09-10