Law & Order - Season 4, Episode 13
-Unfortunately, inhumanity is not against the law.
ERの受付で意識不明の女性が発見される。氏名はデブラ・エルキンスで、出産したばかりのはずなのに赤ん坊がいないため、警察が呼ばれる。その後デブラは意識を取り戻し「赤ん坊の服を買うために街へ出てきたが、出産のことは何も覚えていない」と言う。彼女は未婚で、レイプされて妊娠したため父親はいない。だが自らも出産経験のあるヴァン・ビューレン警部補は彼女の話に疑いを抱く。
その後、デブラを病院へ運んだタクシーの運転手がわかるが、赤ん坊の姿はなかったという。彼の話から、デブラが宿泊していたホテルが判明し、そこでデブラが出産したこと、実は恋人が同行していたことがわかる。
デブラの通話記録からさらに調べた結果、彼女はエージェントを通じて赤ん坊をサヴィット夫妻に養子に出すつもりだったが、直前で気が変わり赤ん坊を育てたいと言っていたことがわかる。その後「恋人」スティーヴン・ショーの居所がわかり、その場でショーと新生児が発見される。
結局のところ、デブラがホテルで出産して赤ん坊を恋人に預けただけではないかと思われたが、その後、病院に預けられた赤ん坊を誰かが引き取って行ったことがわかる。彼女は看護師で、赤ん坊を引き取るための正式な書類も持っていたので病院スタッフは信用してしまったのだ。
その看護師はドロシー・バクスターと判明。彼女と夫のハーバートはサヴィット夫妻より前にデブラの子を引き取ろうとしており、デブラと契約を交わしたので赤ん坊は自分の子であると主張する。赤ん坊を連れ出したことは決して無視できないが、ドロシーに害意があったわけではない。検察は罪状を児童の保護妨害(custodial interference)に落とし、執行猶予と精神科の治療を受けることで合意する。
キンケイドはドロシーが口にした一言に疑問を抱き、さらに調べを進め、デブラがバクスター夫妻、サヴィット夫妻の他にもう1組の夫婦に対して養子縁組の話を進め、多額の金銭を得ていたことがわかる。デブラは3組の夫婦に対して「金銭と引き換えに赤ん坊を渡す」と明言しないものの、間接的に赤ん坊を渡すことを信じさせ、「やはり中絶する」と脅してさらに金銭を出させたりしていたのだった。実質は人身売買であるとはいえ、名目上デブラが受け取ったのは医療費。
ストーンは「子どもを養子に出す意図もなく相手にそれを信じさせるのは……」と言いかけるが、デブラの子はすでにサヴィット夫妻の養子になっており、それは成立しない。養子に出す出さないは母親が自由に決定できることであり、デブラが接触した夫妻が金銭を出したのはあくまで自由意志だという。デブラは妊娠中からすべてを巧妙に仕組んでいたのだった。サヴィット夫妻は子どもを失うことを恐れて検察への協力を拒む。
検察はデブラが「やはり中絶する」と脅したことを根拠に、恐喝での立件を検討。中絶するという脅しは「第三者に危害を加える」という条件に該当するという主張であったが、弁護人は、24週間未満の胎児は「人」とはみなされず、刑法の拡大解釈は許されないと反論。判事はそれに理解を示したものの、判断は陪審員に委ねることを決定する。
弁護側はサヴィット氏を証人として呼び、デブラに有利な証言をさせる。反対尋問に立ったストーンは弁護人の異議を無視してサヴィットを厳しく追及したため、判事がこれを注意し反対尋問をすべて排除してしまう。
だがその後、サヴィット夫妻が検察を訪れ「証言を変更したい」と言い出す。サヴィット夫妻もまたデブラの脅しに遭っていたものの、子どもを失いたくないばかりに偽証していたのだった。だが、偽証した後、恋人のショー(実は彼が父親)にさらに金銭を要求され、ようやく「キリがない」と気づいたのだった。
自分だけが刑務所に行き彼女は自由の身になるかもしれない、と言われたショーは「全部デブラのアイデアで、妊娠も計画的だった」と言い出す。デブラは自分の言動に細心の注意を払い、詐欺や恐喝とみなされそうなことはすべてショーにやらせていたのだ。彼女は以前にも子どもを産んで養子に出したことがあったが、その時に妊娠中だけちやほやされ、利用されるだけで出産後は放り出されたことを恨み、次は自分が彼らを利用してやろうと思ったのだった。
弁護人は第2級重窃盗罪で最少の刑期を要求するがストーンはそれを拒絶し「4~12年」の刑期を主張する。
妊婦への襲撃事件と思って捜査を始めてみると事態は二転三転、最初に気の毒な被害者だと思っていた女性が実は――という、シーズン2の「Misconception(ねじ曲げられた真実)」を思い出させるエピソード。と思ったら脚本(原案)に同じ人が参加していた。
今回のデブラも狡猾で残酷な悪女には違いないのだが、不思議とそれほどの嫌悪感はなかった。まぁ子どもを殺したわけじゃないしね……。終盤の場面ではむしろ、子を産むためだけの存在として道具のように扱われ、ひとりの人間として尊重されることのなかった女の悲哀を感じさせた。追い詰められ、絶望の果てに子どもを連れ出してしまったドロシーも、デブラに苦しめられたサヴィット夫妻も、それぞれに気の毒でしょうがなかった。
ちょっと疑問に感じたのは、サヴィット氏に対するストーン検事の反対尋問。厳しい追及ぶりは良いのだが、弁護人の「異議あり」を無視してしゃべり続けるのって、何だか「らしくない」ように感じてしまった。また、裁判長が異議を認めた(Sustained)のに証人が答えている場面もあったのだけど、これは何だったんだろう。
— Yoko (yoko221b) 2009-02-02