Law & Order - Season 5, Episode 5
貸し金庫が襲われ、中身が強奪される。犯人はすぐに捕まり中身が回収されるが、その中から拳銃と大量の現金が発見される。襲われた金庫の中で持ち主との連絡が取れていないものが1個だけあった。それは1971年にマイケル・キャヴァナーという人物が借りたもので、料金は毎年きちんと払われていたが、調べてみるとマイケル・キャヴァナー自身はすでに死亡していた。
ローガンとブリスコーは紙幣のシリアルナンバーに手がかりはないかとFBIを訪ねる。捜査官は何かを発見した様子を見せたものの、「何もわからない」としか言わない。不審に思った2人は71年当時の新聞記事を調べ、軍事企業から20万ドルが強奪された事件を発見。その事件ではブリスコーの先輩だった警官が殺害されていた。使用された拳銃は、金庫から発見されたものと同口径。犯人はラディカルな反戦主義者で、事件後に声明を出し、偶発的に警官を殺害したことを謝罪するとともに、ヴェトナムの「モラルなき戦争」を妨害するために金を強奪したことを主張していた。
その事件に加担したメンバーは、スーザン・フォレスト、マーガレット・ポーリー、トム・ルーディシル、サム・バーデットの4名。ルーディシルは事件後に警察との銃撃戦で死亡、バーデットは逮捕され現在も服役中。マーガレットは事件後12年間潜伏していたが1983年に逮捕され、2年前に保釈されていた。スーザン・フォレストだけは面通しで確認できなかったため逮捕されず、その後逃亡して行方不明。保釈中のマーガレットは「スーザンには71年以来会っていない」と主張。
金庫の料金は、身元不明の男性が支払っていたが、残された指紋は該当者なし。当時ポーリーやフォレストとともに反戦運動をしていた学生たちの逮捕記録を調べた結果、料金を払っていたのは、NYシティ・カレッジの教授ウィリアム・グッドウィンと判明。グッドウィンは強盗事件には関与しておらず、バッグを預かって金庫のレンタル料を払っただけで、フォレストとは連絡をとっていないと主張する。
ローガンとブリスコーは、ポーリーと接触した可能性のある人物として、同じ駐車場を利用したスチュアート・レヴィタンを訪ね、そこでレヴィタンの妻リタ・レヴィタンこそがスーザン・フォレストであることを知る。リタも自分がフォレストであることを認め逮捕される。
スーザンは弁護士を断り、強盗事件で見張り役を務めたこと、当時は正義のためと思っていたが、警官が死んだことでずっと苦しんでいたことなどを告白する。マッコイは第1級の故殺罪で司法取引しようとするが、死亡したペレラ巡査の遺族は重罰を望み、一方でスーザンはリベラル派の有名弁護士クンスラーを雇う。
事件からはすでに23年が経過しているため、証拠は散逸し証人は死亡し、検察側の材料はスーザンの告白のみ。クンスラーはその告白も、弁護士がついていなかったことを理由に排除を要求する。キンケイドは「弁護士は要らないのか確認した」と言うが、クンスラーは1971年当時すでにスーザンの弁護人であり、今回逮捕された当時もまだその関係が有効であることを理由に「自分が同席していなければ、弁護士が要るかどうかの確認自体が無効」だと主張。スーザンも前言を翻して「自分にはすでに新しい生活がある」と言い出す。
取引は決裂して公判が開かれ、マッコイは生存している証人の証言をつなげてスーザンの関与を立証しようとする。襲われた車の運転手、バーデット、グッドウィンが証言。だがグッドウィンは事件当時スーザンと話したことも、拳銃の入っていたバッグのことも「覚えていない」と言い、証言台で当時の政府による「弾圧」を非難し始める。
シフはFBIに話をつけ、当時の盗聴記録を入手する。事件当時は記録の整理が追いつかず、警察も知らなかったが、その会話内容から、スーザンは単なる見張り役ではなく、犯行の準備にもペレラ巡査の殺害にも、より重要な役割を担っていたことがわかる。だが令状がなかったため、法廷にそのテープは出せない。マッコイは、スーザンとの接触について刑事に嘘をついたことで「保釈取り消しになる」とマーガレットを脅し、またスーザンとの仲を裂こうとするが失敗。
マッコイは、銃を入手したのはスーザンだろうと揺さぶりをかけるが、銃はグッドウィンが合法的に購入したものであり、罪に問える可能性はなかった。マッコイは無駄と知りつつグッドウィンを逮捕する一方でマーガレットを再逮捕し、スーザンが仲間を裏切ったという事実を突きつける。
マーガレットはスーザンの関与を証言し、クンスラーは最初にマッコイが切り出した取引を再び要求する。キンケイドは、今は検察側が有利なのだからと反対するが、「スーザンは直接人を殺したわけではないし、現場にいたことは最初からわかっていた。言葉使いで罪状がどれだけ重くなるというのか」と、取引を受け入れる。クンスラーは第2級の故殺罪を要求するが、結局マッコイの要求を入れて第1級故殺罪で取引。スーザンは2003年まで収監され、「その頃までに60年代は終わっているだろう」とマッコイは言う。
面白い! 久しぶりに面白いと言っては失礼だが、今シーズン初めて、見ごたえのある重量級エピが来た! と思った。20年以上も前の超コールドケースなので、証拠よりも証人が頼り。こういう話のときはいつもそうだが、検察パートで交渉を繰り返し、取引を重ねてようやく公判にこぎつけるというそのプロセスが面白い。コールドケースといえば、今回スーザンを演じたMary-Joan Negroは、シーズン2「In Memory of(記憶の中に)」のジュリー役で、さらにCBSの「コールド・ケース」にも出演エピがある。コールドケースに縁のある人なのだろうか。
弁護士役のウィリアム・クンスラーは実在する人権派弁護士で、本人が演じている(名前はKunstlerで “t” の音も発音されていたように思うが、ここでは慣例の表記に従っておく)。
事件関係者の23年間の人生、70年代の記憶、マッコイとキンケイドのジェネレーションギャップなど、それぞれの人物像の描写がひじょうに巧みで、秀逸なエピソードに仕上がっていると思う。
1971年当時彼らはどうだったか。役の年齢がわからないので、俳優さんの年を当てはめてみた(役柄は実年齢よりちょっと下の設定かな?)。
うーん、こうして見ると、キンケイド検事の若さと世代の違いがよくわかる。ブリスコー刑事は俳優本人よりかなり年下の設定のようだ。
さて、これを書いている現在は、スーザンが刑期を終える2003年もとっくに過ぎた2010年。昨今の世界情勢や世論を考えてみると、確かに60年代はもう終わったと言って良いような気がする。だが同時に、60~70年代(昭和40年代と言うべきか)という時代が持つ熱気への、ある種の憧れと強い郷愁を禁じ得ない。
今回言及された判例は、実在の事件かどうかわからないが、以下。
— Yoko (yoko221b) 2010-04-04