Table of Contents

Law & Order - Season 5, Episode 15

#103 Seed


God doesn't make babies, Mr. McCoy. I do.

事件概要

People v. Jordan Gilbert (判事:Rebecca Stein)

銀行に支店長の妻が押しかけ、「私の赤ちゃんを殺しておいて何とも思わないの!」と罵り、オフィスに向けて発砲、警備員はやむなく彼女を射殺する。支店長夫妻は、5年間にわたって不妊治療を続け、ようやく妊娠したが流産していた。妻はそのことで夫を非難し続けたため、支店長は耐え切れず家を出て別居していたという。

目撃者の話から警備員の発砲は正当と認められ、ブリスコーとローガンは捜査を終了しようとするが、妻の言葉を不審に思ったヴァン・ビューレンはその点をもっとよく調べるよう命じる。

彼らは当初、家庭内暴力を疑うが、検視の結果その可能性はないとわかる。だが、刑事たちは検死医から「夫人は一度も妊娠していない」と聞かされ驚く。「妊娠したと嘘をついて、その後流産したことにした」という詐欺が疑われたため、今度は主治医のジョーダン・ギルバート医師の患者を対象にした捜査が行われる。

調べていくうちに、匿名の精子提供を受けた患者のうち「ドナー No. 2133x」で受胎したケースが42件あることが判明。ギルバート医師は、同じドナーの精子は4回までしか使用しない(異母兄妹/姉弟がお互いを知らずに結婚することがないよう)はずだった。患者をだましているという怪しい状況ではあるが、患者の医療記録を調べる目的は詐欺(偽装妊娠)事件の捜査のためで、流産を経験した患者のみに限定されていたため、それ以外の目的で証拠を使用することはできない。

残る方法は、それらの記録を使用せずに別の検事が独自に調査を行い、不可避的に同じ結論に到達すること。そこで、今度はマッコイが調査を始める。マッコイはまずギルバート医師の会計記録を調べ、ある年を境にHIVテストの経費がゼロになっていることに気づく。マッコイは「赤ん坊が1人でも感染していればこれは犯罪だ」として令状を求め、HIVテストを行う。結果は、31名すべて陰性。だが、検査担当者は赤ん坊のうち25名がCF(Cystic fibrosis=嚢胞性線維症)キャリアであることに気づく。CF遺伝子を持つ人間は数が少なく、偶然でここまで多いことは考えられない。ここでマッコイが「その25名に使用された精子は同じドナーから得たものである」という結論に独自に到達したため、キンケイドが捜査に合流する。さらに、HIVテストが不要であることを医師が確信できたことから、自分の精子を使っていたものと判断。

とはいえ、ドナーはあくまで「匿名」であり、ギルバート医師のしたことを明確に禁じる法律はない。患者のひとり、クララ・ブロックは匿名ドナーではなく、夫の精子で妊娠したことになっていたので、ブロック夫妻の証言があれば起訴できる見込みはあったが、夫妻は「自分たちを巻き込まないでほしい」と協力を拒否。赤ん坊の血液サンプルはすでにあるので、ギルバート医師のサンプルと比較すれば親子鑑定はできるはずだったが、医師は憲法の第4修正条項に基づいて拒否し、判事もこれを認める。

マッコイは別のアプローチを考案。ギルバートが自分の精子を使ったのであれば、ブロック夫妻との契約は無効になり、子どもの父親はギルバートということになり、児童支援(child support)の責任もギルバートが負うことになる。そこでキンケイドが赤ん坊の訴訟後見人(ad litem)となって家庭裁判所で審問を開き、ギルバート医師を追及。医師はCFキャリアの数の多さを説明できなかったため、家裁の判事は血液検査を妥当と判断する。

ギルバート医師は自分の精子を提供したことを認め、マッコイはあらためて窃盗(詐欺)罪で起訴するが、判事は被害者の証言を必須とし「証言しないなら審理無効」と言い渡す。

だが、ブロック夫妻はあくまでも証言を拒み、法廷を非公開にすると言っても聞こうとしない。しまいにクララは「医者たちは何もわかっていない」と怒り始める。その言葉に何かを感じたマッコイは、ブロック夫妻にギルバート医師を紹介したラング医師に話を聞くよう指示し、そこで意外な事情が判明する。

ブロック夫妻にはデブラという娘がいたが、白血病を患い、昨年わずか8歳で死亡していた。骨髄移植が必要だったが、夫妻はいずれも一致せず、最後の手段としてもう1人子どもを作ったが、やはり一致しなかったのだ。夫妻が本当に恐れていたのは、息子のボビーが自分の生まれた本当の理由を知ってしまうことだった。

真相がわかった以上、ブロック夫妻の証言は望めない。「デブラ・ブロックの生存の可能性を著しく下げた」ということで殺人の可能性も模索するが、それも見込みは薄く、今のところは打つ手がない。将来誰かが証言する可能性に賭けるしかなかった。


感想

うぉー何だかすごい複雑なエピソード! 話が二転三転して、ようやく終盤に来たと思ったらそこでまた衝撃の事実が明らかになった。移植のドナーにするために子どもをつくるという話はCSIのエピソードにもあったが、その10年前すでにこういうエピがあったんだなぁ。こんな事情があったなんて、このインチキ医師にはいったいどんな罰が相応しいだろうと思っていたら、ここまで来て起訴断念。ここまで引っ張ってこんな終わり方だなんて、ひどい。

最初に銃を振り回した奥さんはもう、殺人課の刑事たちに事件を担当させるためだけの露払いみたいな感じで、途中からはきれいに忘れ去られてしまった。ヴァン・ビューレン警部補が奥さんの言葉を気に留めていなければ、単に流産で頭が変になった挙句の発砲事件ということで終わっていたんだろう。

そして、こんなぶっ飛んだ話にも元ネタがあるのがすごい。今回の元ネタはセシル・ヤコブソンで、妊娠したと嘘を言って後から流産でごまかす詐欺と、不妊治療に自分の精子を何度も使っていた点が同じ。現実では詐欺と偽証で起訴されて有罪となり、刑期を終えて現在は釈放されているらしい。このエピ放映の1年前に “The Babymaker: The Dr. Cecil Jacobson Story” というタイトルでドラマ化されている(DVDではタイトルが “Seeds of Deception” になっている)が、そこでヤコブソンを演じたのはシーズン1のグリーヴィ巡査部長ことGeorge Dzundzaだった。こんな所でご縁が……。

今回は、胡散臭さ全開のギルバート医師を追い込もうと、あの手この手を考えるキンケイド検事が活躍。刑事コンビに比べると、検事コンビはメインとサブの役割分担がはっきりしていて、サブの検事はあまり活躍しないことも多かったのだが、今シーズンに入ってからはキンケイド検事が法廷で尋問を担当したりして、目立つようになってきた。一歩間違うと職を失う羽目になる、とわかっていてなおギルバート追及を諦めきれないキンケイドの信頼に応えるマッコイの姿も頼もしい。ケミストリーという点で言うと、ストーン時代よりマッコイ&キンケイドの方がずっと良くなってきているなと、これはそう思わざるを得ない。

このエピ、続編があっても良さそうなんだけど作られていないみたい。ギルバートの精子から生まれた赤ちゃんたちも今頃はティーンエージャーになっているし、知らずに同じ学校に通っている子たちもいるだろうから、タイミング的にちょうど良い時期なのだけど、本家が打ち切られてしまったのでもう無理なのか。残念。

Yoko (yoko221b) 2010-06-17