Law & Order - Season 5, Episode 20
NYPDの性犯罪課に所属するビル・モリノ刑事が、頭部を撃たれた遺体となって発見される。本人の銃が持ち去られていた。モリノ刑事はローガンの幼馴染。仕事熱心で素行も良く、不正もしていなかったが、内務調査に協力したため同僚の警官から恨まれている可能性があった。ローガンは元上司で現在は不正対策のタスクフォースを率いているクレイゲン警部から内々に事情を聞かれる。
ローガンはモリノの妻から「3週間ほど前に神父のジョー・クロリンスキーから連絡があった」と聞かされる。クロリンスキーは15年前に神父を辞め、現在は妻子のある身。仕事の都合で最近マンハッタンに戻り、モリノとは数回電話のやり取りをしただけだと主張する。神父時代のクロリンスキーは実は小児性愛者で、モリノや他数名の少年と関係を持っており、ローガン自身も一度誘いをかけられたことがあった。ローガンは他の仲間たちに話を聞き、モリノがクロリンスキーを告発、あるいは復讐しようとしていたのではないかと疑う。
その後、モリノの頭部を貫通した銃弾が発見され、モリノ自身の銃と一致。発見当時、モリノの手袋はポケットに入っていたが、調べてみるとそこから発射残渣が検出される。最初に現場に到着した巡査は、モリノが銃を右手に持っていたことを認める。自殺ではなく殉職にすれば遺族への保証が良くなるため、銃を処分して手袋をポケットに入れるという工作をしたのだった。
工作した巡査は不起訴処分となり、モリノの件は解決するが、ローガンは「クロリンスキーをこのまま野放しにして良いのか」と納得がいかない。とはいえ、過去の行動については出訴期限が過ぎているため今さら起訴もできない。そこでローガンとブリスコーは、クロリンスキーの周辺を調べ直す。
クロリンスキーは60年代に一度だけ逮捕され、不起訴になったことがあった。その当時の被害者スチュワート・ウォラーに「本当は何があったのか」を確認した結果、ウォラーは実際よりも被害を軽度に報告していたことがわかる。母親がクロリンスキーに心酔していたため、結局「服の上から触られた」としか言えなかったのだ。それは軽犯罪だったが、改めて重罪として起訴すれば、まだ出訴期限内だった。だが、30年以上も前の事件を今さら蒸し返すのかと弁護側は取り下げを要求し、判事もその言い分を認める。
そこでクロリンスキーの経歴を精査したところ、クロリンスキーはあちこちの教区でわいせつ行為の苦情を受け、治療を受けて「治った」と判断され、別の教区に送り込まれてはまた同じことを繰り返していたことがわかる。苦情件数は全部で100件にも上るが、それでも起訴できるだけの材料は見つからない。
マッコイは、警察の報告書にあった、クロリンスキーとモリノの会話を思い出す。クロリンスキーはモリノに金銭を渡して「そっとしておいてくれ」と頼んでいたのだ。警官を買収する行為は共同謀議の証拠になり、それは60年代の犯罪からモリノを買収した瞬間まで、すべてを包含することができる。つまり、クロリンスキーとローマ・カトリック教会が児童虐待の共同謀議を行ったのだ(この場合、教会を実際に起訴する必要はない)。
まず、クロリンスキーが本当にモリノを買収していたことを証明する必要がある。クロリンスキーはモリノが死ぬ前の週に5万ドルの現金を引き出していた。モリノの口座はすでに調査済みだったが、調べてみるとモリノの妻がその金を受け取っていたことがわかる。
だがクロリンスキーは「共犯者との間での金銭のやり取りは共同謀議の構成要件ではない。したがってこの事件は成立しない」と言い出す。つまり、モリノはクロリンスキーのための少年を調達していた実質上の「ポン引き」で、5万ドルはその謝礼だったというのだ。
公判が始まり、クロリンスキーのかつての被害者たちが証言台に立ち、モリノが仲介役をしたことを否定する。ローガンはマッコイに頼んで証人から外してもらっていたが、実はモリノから野球の観戦チケットと引き換えに、クロリンスキーの誘いを受けないかと言われたことがあったのだ。クロリンスキーはローガンを召喚し、ローガンはモリノを通じて誘いを受けたことを認める。
モリノが共犯者ということになれば金銭授受は買収ではないので、共同謀議を「延命」することはできない。マッコイはそれに対抗するため、オリヴェットを呼び、児童虐待のケースでは、大人が常に支配権を持ち、児童の側から同意することは不可能である(共犯者にはなり得ない)と証言しようとする。モリノは当時13歳で善悪の判断はつく年齢のはずだったが、親から愛情を受けられないまま小児性愛者の標的になってしまい、支配権を持つ成人(クロリンスキー)を喜ばせるためなら何でもするように仕込まれてしまうのだ。
一方、キンケイドはクロリンスキーの妻が子どもを連れてNJへ引っ越したことを知る。その様子が気になって調べてみると、クロリンスキー夫人は3年前に息子とともに家族福祉課を訪れ、父親による息子への性的虐待を訴えていたことがわかる。だが、夫人はその直後に訴えを撤回。職員は調査できないまま記録だけを保管していた。さらに、生前のモリノが死ぬ直前にその件を調べていたこともわかる。それが買収を裏付ける証拠となり、クロリンスキーはようやく15年の実刑で取引を受け入れる。
このシリーズには珍しい、レギュラーの個人ストーリー色の強いエピソード。マイク・ローガンの幼馴染だった刑事が自殺し、そこから少年時代の暗い過去が次第に明らかになっていく。このシリーズでもやはり、過去は暗くないとダメなんですかね~。クレイゲン警部までお久しぶりの登場だったが、演じているダン・フロレックはこのエピソードの監督も努めている。部署は移ってもマイクとはまだ親しい仲であり、かつ直接のボスではないから、ブリスコーやヴァン・ビューレンやマッコイに言えないこともクレイゲンには言えてしまう。モリノとクロリンスキーのことなと、「事件担当者」としては聞かなかったふりははできないし、マッコイなどはそれを知ったら被告側に通知する義務があるのだから。
でも結局マイクは、真実を述べるという誓いを破ることができず、検察に不利な状況に。そこまで正直に答えることないのに!「記憶にございません」でいいじゃん!と思いながらも、マイクが偽証しなかったことに安心する気持ちもあったりする。
そんなこんなで、マイクのさまざまな面を見られたのは嬉しいが、彼が今シーズンいっぱいで降板することがわかっているので、どうもこのエピ全体が「さよなら特集」のように感じられて、ちょっと寂しくなってしまった。
後半では、クロリンスキーの行為を「共同謀議」とすることで事件を延命させるという理屈が、ちょっとよくわからなかったかな。それも、誰と誰が謀議したのかというと、クロリンスキーとローマ・カトリック教会ですと? ちょっとここ最近、こういう技巧に走りすぎな感がなきにしもあらず、なのだが……。
そして、マッコイが些細な点に気を留め、そこから重要な事実が判明して形勢逆転、というのもちょっとお約束化しているような。マッコイ登場エピからそうだったから、印象に残りやすいのかも。
このエピの元ネタは、1950~60年代に100人を超える子どもへの性的虐待を行ったとされる神父、ジェイムズ・ポーターの事件とのこと。ポーターは1993年に実刑判決を受け、その後獄中で病死。しかし、カトリック教会での性的虐待事件はその後も後を絶たず、教皇の退位を要求する抗議デモも起きているらしい。
変態(元)神父を演じたBill Raymondは、The Wire のギリシャ人役。Law & Orderシリーズでは、シーズン3「Wedded Bliss(ドレスに潜む闇)」にも出演し、妻とその愛人の犯罪行為に引きずられる気の弱そうな夫を演じていた。今回の役では、最後まで「私は病気なんだ」と悪あがきを続ける姿にムカツキまくり。
判例(詳細は未確認):
— Yoko (yoko221b) 2010-07-04