Law & Order - Season 6, Episode 16
ウェバー家に強盗が入り、母親のジョイスと10歳の息子ウィリアムを射殺、娘は重傷を負って病院に運ばれる。押し入った形跡はなく、空の宝石箱が落ちていた。娘は病院で、確かに鍵はかけたと言う。父親は出社しておらず行方不明だったが、その後帰宅。事件の夜はバーへ行き、泥酔して帰らなかったという。
ジョイスは酒類販売認可の仕事をしており、厳しい仕事ぶりで知られていたが、詳しく調べてみると、最近になって急に賄賂を求め始めたらしいとわかる。夫は仕事上でトラブルを抱え、解雇される寸前。夫妻は子どもの学費やビーチハウスなどに金を使い、貯蓄はしていなかった。事件の2日後にウェバーが妻の生命保険金を要求していたことがわかり、捜索令状を取ると、オフィスからジョイスの宝石類が発見される。
ウェバーは起訴され、キンケイドの友人のマーゴ・ベルが弁護に就く。マッコイは「死刑を求刑しないことが最大限の譲歩」と言い、ベルもそれに理解を示すが、ウェバーは頑として無罪を主張し、取引を受け入れない。
オリヴェットは、ウェバーが家族殺し (family annihilator) のプロファイルに当てはまると判断する。家族を愛し大事に思っているが、経済的な危機にさらされると「自分がいなければ家族もない」と殺してしまうのだという。だが被告人が精神疾患を主張していないため、オリヴェットは被告人に接触できず、直接診断を下すことはできない。
公判が始まる。ジェナは事件の直後、病院で「確かに戸締りをした」と供述していたが、証言台では「その日は鍵をかけ忘れたかもしれない」と言い出す。
オリヴェットは証言をするが、家族殺しのプロファイルとは「40代でミドルクラスの白人男性、教会に通い、家族を大切にし、暴力は振るわない」というような、いってみればごく平凡なもの。弁護側の専門家はそれに対し「家族殺しは通常、家族全員を殺害するものなので、この事件は当てはまらない」と反論する。
ウェバーは自ら証言し、自分は家族を愛し絶対に殺したりはしないと涙ながらに証言する。宝石がオフィスにあったのは、売るつもりだったが恥ずかしくて言えなかったため。マッコイの厳しい追及にウェバーは泣きながら「自分は殺していない」と繰り返す。その様子を見ていたオリヴェットは「家族殺しであれば、あの状況では罪を告白するのが普通だ」と言い出す。それを聞いたシフは「第1級故殺で取引しろ」と指示。
キンケイドはベルと相談し、ウェバーをオリヴェットに面接させることを了承させる。ウェバーはやはり罪を認めず、オリヴェットは彼が犯人かどうかの判断は保留しつつ、娘と家族の間に何か確執があったらしいことを指摘する。
ジョイスの妹の話では、家を支配していたのはジョイスで、彼女はジェナが不良の恋人チェスターと会うことに反対していたという。
ウェバーは実際に犯人なのか。マッコイとキンケイドは事件について話し合い、ジェナが手引きをしてチェスターが押し入ったのではないかと思いつく。家が荒らされていなかったのはジェナが宝石箱の場所を教えたから。だが中身はすでにウェバーが持ち去っていたので、チェスターは怒って母子を射殺し、ジェナも撃った。ジェナは自分が共犯であることを言い出せないが、父親が無実であることも知っているので彼を庇う。
彼らは敢えてジェナの前でウェバーが有罪答弁を受け入れるという芝居を打つ。ジェナはそれを見て「父は無実です」と言い、自分が手引きしてチェスターを中に入れたが、チェスターが母と弟を射殺するとは思わなかったと認める。だがマッコイはさらに「君が自分で宝石を持ち出して彼氏に渡せばずっと簡単なのに、なぜそうしなかったのか」と問い質す。実は、ジェナは母親を殺すためにチェスターを雇い、宝石を報酬にするつもりだったのだ――。
一家惨殺事件(正確には4人家族のうち2人死亡、1人負傷だけど)。で父親が怪しいということになり、オリヴェット先生が専門家として意見を求められる。ただし今回は、被告側が精神疾患を主張していないため、本人と面接することはできないようだ。なので「正確な診断はできない」という条件を付けつつ「被告人は家族殺し (family annihilator) のプロファイルに当てはまる」と判断する。
家族殺しというのは、普段は家族を愛し大事に守ろうとしているが、失業など経済的な危機にさらされると「自分がいなければ家族もない」と思いつめて殺してしまうタイプの殺人者とのこと。そのプロファイルがどういうものかというと「40代でミドルクラスの白人男性、教会に通い、家族を大切にし、暴力は振るわない」だそうで……うーん、このプロファイルに当てはまるからといっても、イコール殺人者予備軍というわけじゃないよね。まぁ「クリミナル・マインド」で言っていたと思うが、プロファイリングという物はまず、該当しない人を除外するためにあるのだろう。
で、その流れで出てきたジョン・リスト事件。どんな事件かと思ったら、自分の母親と妻と3人の子どもを皆殺しに、すぐに発覚しないように偽装工作をして逃亡し、別人になりすまして結婚までして10年以上も生活していたというとんでもない人物だった。上記の「家族殺し」とはちょっと違う例かもしれない。
しかし結局、起訴された父親は無実。実は生き残った娘がボーイフレンドを手引きしていたのだった。それも、最初は「母親の宝石を盗ませるつもりだったのが、宝石箱が空だったので彼が怒って母と弟を撃ち殺した」と言っていたのが実は大嘘。
宝石を盗むだけなら、自分で持ち出せばずっと簡単に済むわけだ――この点を見逃さないのが、いつもマッコイなんだよね。娘は実は、支配的な母親を憎んでおり、母親を殺すためにボーイフレンドを雇い、宝石をその報酬にしようとしたのだった……怖い! 冒頭では想像もしていなかったこの結末には、ぞぞ~っとさせられた。
ところで、今回弁護についたのはキンケイド検事のお友達のマーゴ・ベルさん。この女性同士のやり取りが、気心の知れた間柄で、なおかつプロ同士のドライな部分もあって、良かったと思う。マーゴさん、絶対に知っている顔だと思ったら、最近「クリミナル・マインド」で子どもを誘拐された母親の役で出演していた。
作中「州は、弁護側が精神疾患を主張した時には専門家を提供する必要がある」という文脈で言及された判例、Ake v. Oklahoma はおそらく↓の事件。
また、作中で名前が言及された Park Dietz は実在する犯罪心理学者。下記のWikipediaエントリによると、有名な事件(ジェフリー・ダーマー、スーザン・スミス、DCスナイパーなど)で検察側の専門家として証言を行っているようだ。名前で検索するとIMDbのページがヒットするので何かと思ったら、この Law & Order シリーズや Murder One でテクニカルアドバイザーを務めたらしい。
— Yoko (yoko221b) 2012-04-24