Without a Trace - Season 3, Episode 6
エブリマートという量販店に勤めるシングルマザーのコリーンが、3歳の息子ジェイクをベビーシッターに預けたまま姿を消した。生活苦から子どもを置いて逃げた可能性もあったが、荷物を部屋に置いたままなのが不自然であったし、何よりコリーンはジェイクをとても可愛がっていたという。
ベビーシッターの話では、コリーンはいつも金に困っていたが、失踪する前の週だけは臨時収入を得ていたようだった。住んでいるモーテルの管理人の「男を連れ込んでいた」という話から、売春も疑われた。モーテルの住人は、強面の男がコリーンを脅していたのを目撃していた。
コリーンは量販店の仕事と掃除の仕事を掛け持ちし、ぎりぎりの収入で生活していたが、掃除の仕事は雇い主とのいざこざでクビになったばかりだった。さらに、ジェイクの聴力に問題があることがわかり、補聴器を買わなければならなかったが、その500ドルを捻出できず、勤め先のエブリマートで商品を盗もうとしたこともあったという。そして臨時収入を得たのは、そのすぐ後のことだった。
コリーンが失踪時にジェイクを預けたシッターは、本来その日(木曜日)は休みなので預からないはずだった。コリーンからどうしてもと頼まれて半日だけ引き受けたのだった。ならば、毎週木曜には別の子守に預けていることになる。ジェイクの話と通話記録から、もう1人の子守ジャネット・マリスの存在が判明。アパートに踏み込んでみると、ジャネットはヘロインを打って朦朧としていた。
ジャネットの話から、コリーンは金のために麻薬の運び屋を引き受けたらしいことがわかる。ニューヨークへ運搬に行くためジェイクを預けに来た時、荷物の中にヘロインを見つけたジャネットがこっそり1袋くすねていたのだ。コリーンはそのために窮地に追い込まれてしまった。バスターミナルでは、絶望した様子のコリーンが目撃されていた。
マーティンとサマンサは過去の事件を調べ、同じように女性の運び屋が失踪した事件を発見。そこで目撃された男性の似顔絵は、モーテルでコリーンを脅していたという男性の似顔絵とそっくりだった。その事件では、失踪した女性はその後、遺体で発見されている。
サマンサはその似顔絵を持ってマローンのオフィスへ行き「考えがあります」と切り出す――。
(後編に続く)
原タイトルの “Nickel and Dimed” は、バーバラ・エーレンライクというコラムニストが書いた同名のルポに由来するらしい。同書(翻訳版、下記参照)の訳者あとがきには「『ニッケル・アンド・ダイムド』のニッケルとはアメリカの五セント硬貨、ダイムは一〇セント硬貨を指す。アンドでつないで『取るに足らない』という形容詞にもなるが、ここでは動詞の受身の形で『少しずつの支出がかさんで苦しむ』または『少額の金銭しか与えられない』という意味となる。」とある。
この本、面白いことは面白いのだが、読んでいると勤労意欲が減退する――何というか、働くことに関してすごくネガティブな気持ちになってしまうのが難点だった。
脚本家は実際にこの本を参考にしていると思う。安いアパートを借りるための1ヶ月分の家賃と敷金が出せないために、結局割高になっても週払いのモーテルに住まなければならない、というような事情も書かれているし、著者がウォルマートで体験した作業風景も、後半で少し紹介されるエブリマートの日常を連想させた。ただし、ドラマに登場するコリーンのモーテルは少々きれいすぎるような気もするけれど。
安い時給で懸命に働いて子どもを育てていたシングルマザーのコリーンに、妙に肩入れするサム。「コリーンのような人は、何かあっても誰も気にしないし、責任を取らないから」というのがその理由だそうだが……何か個人的な思い入れがあるのかな、と思った。むかし家出した話はシーズン1にちょろっと出て来たけど、ひとつ間違えばサムもコリーンのような暮らしをしていた可能性があったとか?(実はシーズン2をまだほとんど見ていないので、そういうバックストーリーがあったのかどうかわからないけど)
それにしちゃこの前の、フィリピン系ベビーシッターは容赦なく犯人扱いしていたじゃないか。あれは人種的偏見ではないのか。それとも家族や仕事にも恵まれて「孤独ではない」から、なのだろうか。
— Yoko (yoko221b) 2007-12-07