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Without a Trace - Season 3, Episode 13

#60 Volcano


事件概要

失踪者:イアン・ノーヴィル

自然史博物館に見学に来ていた少年イアン・ノーヴィルが行方不明になった。イアンは自閉症で対人関係がうまく取れないため、父親のダニエルが付き添って来ていた。イアンはパニックを起こしていなくなることが度々あるため、腕に時計型の発信機をつけていたが、その日に限ってダニエルは受信機を家に忘れて来ていた。受信機を持って探してみると、地下の倉庫に発信機だけが落ちていた。

ダニエルの様子に疑問を抱くジャックは、失踪時の状況を根掘り葉掘り質問する。サマンサは母親や弟のエリオットから普段の様子などを聞く。エリオットは「イアンはいつも暖かい場所へ行く」と言った。公園を調べていたマーティンは、イアンの靴が片方だけ落ちていることを知るが、目撃者はいなかった。

イアンには、アニューという専属の付添い人がおり、その日は「体調不良」という理由で休んでいたが、実は次の仕事の面接に行っていた。ダニエルは自閉症児を専門に教育する全寮制の学校にイアンを入れようとしており、アニューは、そうなると自分は不要になると思い次の仕事を探そうとしたのだった。また、イアンのセラピストは、新しい治療法のための検査を行った結果、ダニエルがイアンの実父でないことがわかったと話す。妻のケイトはダニエルと一時期別居しており、その時に別の恋人がいたのだった。

ダニエルはポリグラフのテストを受けるが結果は「判定不可」。そのまま帰宅するが、ダニエルを疑うケイトとの間で口論になり、見かねたエリオットが「僕がやった」と打ち明ける。エリオットは地下倉庫でイアンを見つけたが、発信機がフェンスに引っ掛かって取れなかったのでナイフで切った。その時にイアンの手を切ってしまい、イアンはそこから逃げ出したのだという。

イアンが好きなのは「暖かくて安全な場所」、そしてイアンが会いたがっていたのはアニューだった。マーティンは公園にインドから来た観光客の一団がいたことを思い出す。アニューもインドの出身。アニューを探して彼女に似た人たちについて行ったのではないかと思いついて、観光バスの運転手に話を聞くと、イアンはバスの荷物入れの中に隠れていたという。運転手は、イアンが荷物を盗もうとしたのだと思い、怒鳴って追い払った。イアンが逃げて行ったという方向を手分けして探し、ジャックは建物の地下に隠れているイアンを発見した。ダニエルは「怒鳴って悪かった」と言って手を差し伸べ、イアンはその手を取った。血のつながりはなくとも、イアンは大切な息子なのだった。


感想

このシリーズの典型、というかこのシリーズの良さを示すお手本のような作品。失踪者を探すうち、愛情に結ばれた一見平和な家庭の中に秘められた生々しい事情が垣間見えてきたり、家族の誰かが嘘をついていたことがわかったりする。しかし、やがて失踪時の「本当の状況」が明らかになり、そこに失踪者本人の個性を重ね合わせることで無事発見に至る。めでたしめでたし。それが決まった「型」になっているといえばそうなのだが、このシリーズでは下手に変化を求めたりせず、基本を守ることでその良さを維持してほしいと思う。地味なドラマと言われようとも、失踪者ひとりひとり、家庭のひとつひとつを丁寧に描いている所が素晴らしい。失踪者が家族のもとに帰り、抱き合う場面。それまで40分あまりの物語は、この場面を見るためにあったといっても良いくらいだと思う。

思うに、この「失踪者が家族のもとへ帰る」という図式には、見る側に何かしら郷愁のような気持ちを起させるはたらきがあるのではないか。そこに Iron & Wine の “Each Coming Night” がかぶさるのだから――これ、アルバムが出たのが2004年だからまだ新しい作品なのに、淡々とした優しいメロディとヴォーカルが70年代のフォークソングを思い出させて、懐かしさでもう胸がいっぱいになってしまう。

今回、イアンの両親を演じていた Vincent Angell と Christina Tucci は実生活でも夫婦であり、しかも自閉症のお子さんをお持ちとのこと(TV.com より)。さらに、バス運転手役の Vincent Guastaferro のお子さんはアスペルガー症候群だそうで、色々な意味で出演者の実生活に関連のあるエピソードだったようだ。そういうわけで、劇中に出てくるイアンの行動などは正確に描かれているのではないかと推察。だが「自閉症児のことを世間に伝えたい!」というような、気負いこんだメッセージ性のようなものはあまり感じられず、ストーリーが自然な流れで語られていたと思う。その点にも好感を持った。

Yoko (yoko221b) 2008-01-19