The Wire - Season 3, Episode 11
“We ain't gotta dream no more, man.” - Stringer Bell
警察幹部は、市長からの命令が出ればすぐにフリーゾーンをすべて閉鎖する準備を整える。市長の周囲には、ハムステルダムを即刻取り壊すべきという意見と、犯罪率の低下や保健局の介入が効果を出していることを評価する意見が対立し、なかなか結論が出せない。決断を待つ間、警視総監、市議会、市長の間で「ハムステルダム」の処遇をめぐるパワーゲームが水面下で行われていた。
ストリンガーは弁護士のリヴィに不動産関連の書類を見せ、クレイ・デイヴィスに賄賂のための金をだまし取られたことを知る。怒ったストリンガーはヒットマンのスリム・チャールズに「デイヴィスを殺せ」と命令しようとするが、エイヴォンに阻止される。エイヴォンは相変わらず、マーロとの抗争を止めようとしていなかった。
MCUでは、バーナードに売りつけた携帯電話の盗聴が成功していたが、肝心のストリンガーの通話だけが捕捉できない。ストリンガーは、部下たちとは別の電話機を使用し、側近のシャムロックはストリンガーにかけるための専用の電話機を持っていたのだ。
マクノルティは、携帯電話の周波数識別装置を利用することを思いつく。市警察の倉庫には、国土安全保障省から支給され、使われないまま眠っている装置があった。その装置を使って使用されている携帯電話の番号をすべて網羅し、同時に部下の動向や監視カメラの映像から通話時間を割り出して絞り込んでいくことで、少しずつストリンガーの番号に迫るという方式だった。
ボクシングジムを開いたデニスは、備品が粗悪で危険であったため、エイヴォン・バークスデールを訪ねて援助を求める。エイヴォンは、デニスの言い出した額を上回る15,000ドルを渡す。
エイヴォンはブラザー・ムーゾーンから、ストリンガーがオマーをだまして襲撃させたことを聞く。その頃ストリンガーはひそかにコルヴィン警視と会い、エイヴォンの潜伏先の住所を渡していた。
カルケッティはコルヴィンを訪れ、ハムステルダムについての話を聞きウェスタン地区を見回る。かつて売人がたむろしていた街角には静けさと平和が戻り、警官たちは本来の警察業務に打ち込めるようになっていた。タウンミーティングでは住人たちが「お巡りさんが私たちに声をかけてくれるようになった。こんなことは長らくなかったことよ」と喜んで話し合っていた。カルケッティはその後、ハムステルダムに足を踏み入れその実態を目の当たりにする。
ダニエルズはフィッツユー捜査官を呼び出し、港湾の捜査での情報リークを持ち出して、ストリンガーの盗聴をすぐに実行できるようにしろとゴリ押し。フィッツユーはストリンガーの本名が「アハメド」だということにして盗聴を敢行(FBIではテロ対策が優先事項である)。
エイヴォンとストリンガーは、エイヴォンのコンドミニアムで酒を酌み交わし、昔の思い出話をした後、抱き合って別れる。別れ際にエイヴォンはストリンガーの翌日の予定を聞いていた。
MCUはストリンガーの通話の盗聴を続け、ついに犯罪の証拠をつかみ喜び合う。だがその直後、改築予定の現場を訪れたストリンガーは、オマーとブラザー・ムーゾーンの襲撃を受け、射殺される。
ストリンガーがあああぁぁぁっ!
これは……ディアンジェロの時よりもショック大きかったかも。このところのストリンガーは、不動産の仕事もうまく行っていないようだし、カルテル内部からは突き上げを食らう、エイヴォンとの間もぎくしゃくして、どうも精彩を欠いているような気がしていたが……まさかこんなことになるとは。エイヴォンとストリンガーの「別れ」の場面、そしてマクノルティたちの喜び合う場面と襲撃場面を対比させる画面構成が素晴らしい。エイヴォンの表情の動きもすごく良い。
倒れるストリンガー、そして窓の外にはためく “B&B ENTERPRISES” のシートが……。B&Bって漫才コンビみたいだけど、これはベル&バークスデール(順序は逆かな)ってことだよね……。
クレイ・デイヴィスってストリンガーたちの上を行くワルだったんだ。今シーズンは政治家が大勢出てくるといっても、市レベルの人たちばかり。デイヴィスは州の議員で、本来の業務はほとんど描写されないのだが、普段はどんな議員なのだろう。それにしても、ストリンガーの表の仕事に弁護士は全然タッチしていなかったのだろうか(リヴィは刑事弁護士だからかな)。
抗争を続ける一方で、エイヴォンは仲間を抜けたデニスにジム設立の援助。そういえばエイヴォンもボクサーだったっけ……と、シーズン1を思い出す。エイヴォンが援助したのは、彼なりのphilanthropyではないだろうか、とふと思った。カーネギーやロックフェラーが大学を作ったように、エイヴォンはかつての自分たちと同じような境遇の子どもたちのためにジムを作る。勝ち抜いて生き残ってきた者がその責任として、次の世代のための足がかりを作る、という意味において、彼なりに理に適った行いなのかもしれない。
このエピソードには、元ボルティモア市長のKurt Schmokeさんが衛生局長の役でご出演とのこと。この方「ホミサイド」にもボルティモア市長の役で出ているらしい。
— Yoko (yoko221b) 2008-01-22