The Wire - Season 5, Episode 2
“This ain't Aruba, bitch.” – Bunk
バブルスはNarcotic Anonymousのミーティングに出席する。彼がドラッグを断って15ヶ月。スポンサーのウェイロンは、バブルスにシェロードのことを語らせようとするが、まだ心の準備ができていないらしい。
カルケッティは補佐官やワトキンス下院議員とともに、将来のことを話し合う。予算を投入した甲斐あって学校の成績はアップしたが、そのぶん警察が犠牲になったので、「犯罪率の低下」を宣伝に使うことはできない。カルケッティはすでに、市長の任期半ばで知事選挙に出馬するつもりでいる。ワトキンスはそれは時期尚早ではないかと感じていた。
ボルティモア・サン紙では、編集主幹のホワイティングが学校問題の特集記事を提案する。ヘインズは反対するが、ホワイティングは強硬に意見を通し、彼に賛成したスコット・テンプルトンに記事を書かせようとする。
マクノルティは高齢の女性が遺体で発見された事件を担当するが、どうやら自然死であるらしい。翌朝、マクノルティはモルグで解剖結果を待ちながら、郡警察の刑事と世間話。明らかに過剰摂取で死亡した男性を、新人の検死官が「殺人」と判断して意見が対立しているという。殺人と判断した根拠は、折れた舌骨と点状出血だったが、これらは死後のもの。救急隊員が死亡を確認後、バスタブとトイレの間にはまりこんだ被害者の身体を引っ張り出すために首をつかんだためだった。死後時間が経っていない場合、傷の区別ができないのだ。
マーロはセルゲイ・マラトフに面会しようとするが、行ってみると現れたのはエイヴォン・バークスデールだった。エイヴォンは、プロポジション・ジョーを出し抜いてギリシャ人から直接麻薬を仕入れようとするマーロの意図を見抜いていた。マーロはエイヴォンの姉に送金し、2度目にようやくセルゲイに面会してヴォンダスへの橋渡しを頼み込む。
マーロは警察の監視がなくなったことに気づき、抗争による版図拡張とオマーへの報復について話し合う。フリーマンは、独自にマーロの動きを監視してマクノルティに伝える。監視用の機材と人材を融通できれば彼らの動きを追えるはずだが、ボルティモア市警には期待できそうにない。2人は、FBIのフィッツユー捜査官に捜査の話を持ちかける。フィッツユーは事件をFBIに持ち帰るが結果は却下。上層部の政治闘争の影響だった。
テンプルトンは球場でファンに取材しようとするが、なかなか思うようなコメントが得られず苦労する。その後彼は「13歳の車椅子の少年がチケットを買えず球場に入れなかった」というストーリーを持ってオフィスに戻って来る。写真はなく、少年の身元もはっきりしない。ヘインズはテンプルトンの話の裏付けを取ろうとするが、該当する少年は見つからず、本名すらわからない。ヘインズは、記事にするにはもっと確かな情報が必要だと主張するが、テンプルトンを気に入っているホワイティングは、彼の記事を一面に抜擢する。
フリーマンとシドナーはパールマン検事とともにクレイ・デイヴィスの資金の流れに関する捜査を継続。デイヴィスは何とかそれを阻止しようと警視総監バレルの元へ怒鳴り込むが、市長も地方検事も変わった今では、バレルも以前のような強権はふるえない。
クリス、スヌープ、マイケルはマーロの命令でジューンバグを襲撃。マイケルは裏口へ回るが、逃げ出してきたのがまだ幼い子どもであったため、命令に背いてその子を見逃す。その後、事件現場にはグレッグスとクラッチフィールドが到着。グレッグスは、クローゼットに隠れていたもう一人の子どもを発見して保護する。
マクノルティとバンクは、廃屋でホームレスらしき男が死亡している現場に到着。マクノルティは、鑑識が来るまで自分がここにいるからと言ってパトロール巡査を帰らせ、現場に細工をし始める。争ったような跡を偽装し、首を絞めて痣を作って殺人のように見せかける。
犯罪捜査のためのリソースが満足に得られないことに業を煮やしたマクノルティは、どうやらとんでもないことを思いついてしまったらしい。事件性のないホームレスの遺体を使って「インスタント連続殺人」をでっち上げようとする……こ、これはドラマの主人公の行動としてどうなんだろう? これまでマクノルティは第一線の捜査からはずされて酒びたりでボロボロになったり、逆に健全すぎてつまらなかったりと、さまざまな面を見せてくれていたけれど、視聴者が共感できる水準は維持してきたと思う。今後の展開は「それでこそマクノルティ!」という痛快なものになるのか、それとも「いくらマクノルティでも、やり過ぎだ」となるか――。
そしてテンプルトンの「車椅子の少年」の話は……これは、でっち上げなんだろうなぁ。ボルティモア版「ジミーの世界」といったところか。マクノルティの行動は、視聴者の立場から見て「許せる」物になる可能性を持っているが、テンプルトンの方はまったく許せない「嘘っぱち」になっていくと思う。サン紙で「視聴者の共感」を得る役割を担っているのはヘインズで、テンプルトンはそれに敵対する存在だから。
カルケッティ市長は就任してまだ1年だというのに、もう市長を踏み台にして知事選に打って出ることを考えている。シーズン3~4あたりでは、まだ政治家としての信念というか「熱っぽい」面が野心と同居しているところを感じさせていたが、最近はもう市政より「自分が知事になること」最優先って感じ。カルケッティのモデル(のひとり)と目されている元ボルティモア市長のマーティン・オマリーも途中でメリーランド州知事になったが、彼の場合は2期目の途中での出馬だったはず。このカルケッティ市長の行動はどうなんだろう。
警察の監視がなくなったことで、マーロが本格的に動き出す。まずは刑務所に出向いてセルゲイに面会。シーズン2を見ている頃、このシーズンはまだ放送が始まっていなかったが事前情報はいろいろ流れてきており、その中に「セルゲイ再登場」という話があった。セルゲイのキャラはけっこう好きだったので楽しみにしていたのだが、どうやらこの回だけらしい……がっかり。檻の中じゃしょうがないか。
今回のエピグラフに出てくるArubaは、2005年の5月に高校の卒業旅行に来ていたという女の子が失踪した土地。ホロウェイ事件は、CSI:Miamiで「無防備な18才」の元ネタにもなっている。「アルバで白人の少女が1人行方不明になれば世間は大騒ぎするのに、西ボルティモアで黒人の若者が何十人殺されていようと見向きもされない」と嘆いたマクノルティに対して「ここはアルバじゃない」とバンクが言った場面だ。ただしナタリーの両親も、ハリケーン・カトリーナの影響で事件の報道が削られたことが不満らしいが。
— Yoko (yoko221b) 2008-11-10