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BONES - Season 4, Episode 2
#60 Yanks in the U.K. Part 2
- 邦題:「イギリス事件簿」(後編)
- 脚本:Stephen Nathan, Scott Williams
- 監督:Ian Toynton
- 初回放映:2008-09-03
事件概要
イアン・ウェクスラー
ブレナンとブースはイギリスでの滞在を終えて帰ろうとするが、そこへプリチャード警部補が現れ、イアン・ウェクスラー博士のアパートで火事があり、博士らしい遺体が発見されたと告げに来る。2人は帰国予定をキャンセルして捜査に加わり、今回は現物ではなくX線写真などのデータをジェファソニアン研究所に送付する。
最初は、タバコに火をつけた時にガスに引火した事故かと思われたが、ニコチンが検出されなかったことから偽装の可能性があり、また頭部にも打撲痕が発見される。イアンの前日の行動や女性関係から容疑者が浮かぶが、いずれも無関係。
イアンは遺跡の発掘調査を行っていたが、その土地はロジャー・フランプトンの所有で、ロジャーは発掘現場を閉鎖してビルを建設しようとしていた。イアンは死ぬ直前に「その土地に歴史的価値はない」とする明け渡し令状に署名しており、同時にフランプトンから多額の金銭を得ていたことがわかる。
死因は頭の打撲ではなく胸への刺し傷とわかり、また遺体からは雷酸水銀が検出される。現場にあった骨を確認すると1本だけ余分な骨があり、その骨こそが凶器と思われた。雷酸水銀の濃度は、その余分の骨の部分に集中しており、さらにかなりの硬化が見られたため、ブレナンはその骨を2000年前のもの、つまり青銅器時代(正確には、2000年前のイングランドは鉄器時代)の骨だと判断する。雷酸水銀があったのは、イアンが調べていた発掘現場が19世紀に皮なめし工場だったため(雷酸水銀は皮革の加工に使用されていた)。つまりその発掘現場には本当に2000年前の遺跡があったことになる。プリチャード警部は、象徴として骨を使った儀式的な復讐殺人を疑うが、ブースは火事の偽装の稚拙さから「激情による衝動殺人」と判断する。
発掘現場へ行ってみると、地面の一部がシートとすのこで隠されていた。イアンの下で調査をしていたヴェラは「何でもない」と言うが、シートを上げてみるとそこには昔の骨片が埋まっていた。イアンとヴェラは遺跡がないことを見越してロジャーから賄賂を受け取っていたが、本当に骨が見つかったのでイアンが金を返そうとし、そんなことをされれば自分のキャリアは終わりだと怒ったヴェラがイアンを殺害したのだった。
感想
前シーズンの終わり方はあまり満足のゆくものではなかったので、今シーズンのプレミアが突然イギリスで、しかも2時間スペシャルになった事で良い気分転換になったかな。一応ザックのことは冒頭でちらっと触れていたけれど。
前半は、被害者がアメリカ人ということでブースとブレナンが捜査に加わり――というか、アメリカ勢が捜査を主導して証拠品をジェファソニアンへ空輸してしまうという、いささか強引な展開。研究所ご一行様でイギリスに来たわけじゃないので、他のスタッフが事件に関わるためにストーリー上必要とはいえ、これは可能なのか? と少々疑問に思う。
ジェファソニアンでは、前シーズンにも出ていたクラーク君がザックの後に入り(でも辞めちゃうのね)、アンジェラの謎の前夫が登場し、離婚はうまくいったものの彼がカミールとデキてしまい、何だかんだあって結局、アンジェラとホッジンスは別れちゃうの? 何だそれ。
今まで「離婚」という難関に向けてがんばってきたのが、目的を達成すると途端に気が抜けてしまった、みたいな感じなのか。う~ん……セラピストがスイーツなせいか、どうも説得力がいまいち。ここはイギリスつながりで、ゴードン・ゴードン先生に再登場していただきたかったかも。元夫さんも、期待したほど(以下自粛)
さてアメリカ勢は全編上記のような感じなのでほっといて。イギリスの犯罪現場! 当然だけど警官の制服がイギリスだし、検死官は白のツナギだし! ケイトがイアンのことを辛らつに表現していた台詞がまた、やたらに語彙が多いところがイギリスっぽくて良い(モンティ・パイソンのスケッチを思い出すわ)。
ブースはコーヒーが飲めなくてイラついていたが、イギリスのホテルだってコーヒーくらい普通に飲めるでしょ。それもアメリカのより濃いと思うぞ(あ、それが気に入らなかったのか?)。人類学者で世界各地に旅しているブレナンと、イギリスでいちいち勝手が違うことに苛立つブースとの対比が面白い。弁護士のカツラを思わず触っちゃう所なんか最高。でも、フランプトンの弁護士は役割から考えてソリシター(事務弁護士)のはずなので、ああいう格好はしていないと思うけど。ヅラにローブなのはバリスター(法廷弁護士)だけのはずでは。
※訂正:ソリシターでもSolicitor Advocateという資格があればヅラを着用できるらしいです。
ツッコミついでにもうひとつ言うと、公爵の長男は、父親が持っている爵位の中で2番目に高い爵位名を名乗るはずなので、ヘンリーのことを「ボナム卿」や「ヘンリー卿」とは呼ばないのでは? 公爵ともなれば、最高位の「イネスフォード公爵」以外にも侯爵位や伯爵位をいくつも持っているのが普通なので、ヘンリーは侯爵の爵位名で「~卿(Lord)」と呼ばれるはず。2番目の位が「ボナム侯爵」であれば「ボナム卿」で良いんだけど、古い貴族だと爵位名と苗字ってたいてい別々らしいし。また、ヘンリーが次男以下なら呼び方は「ヘンリー卿」だけど、跡取りだと言っていたのでこれも違う。何だか説明がややこしくなってしまったが、詳しくは森護『英国の貴族』を参照。
事件の方は、ポーシャの実父は――という部分の展開がいささか性急だったという印象はあるものの、まぁ謎解きがメインの回じゃないし、いいか。
DVDでは前編と後編が一緒になっていたので、本来どこで切れるのか判然としないが、FOXサイトのRecap1)を見た限りでは、タワーブリッジの場面までが前編なのかな。橋が上がるところを見られたら縁起がいいと言いながら、2人しておしゃべりに夢中で結局見逃してしまう所が良いね。
さて、後編では「イギリス版B&B」の片割れだったイアン・ウェクスラーが何と被害者に。しかも、火災でほぼ炭化――ということなので、これはミステリにありがちな「顔のない死体(実は生きていた)」だろうかと思ったら大違い。まぁ、一流の法人類学者がいるのにそうそう替え玉は使えないわね。しかし、前半でいまいち印象が弱かったので後半で……と期待したらこんなんだったので、少々がっかりな展開だったなぁ。ヴェラが犯人というのも、前半での登場場面が露骨に「伏線です」な感じで、かつ途中でシリルが容疑者になっていたので消去法で特に意外性もないし。
ともあれ事件は無事解決し、ブースは最後ケイトから玩具のメダルで騎士に叙せられてゴキゲン。イギリスの王室や伝統に対して肯定的な気持ちになったようだ。アメリカも昔はイギリスの植民地だったわけで、遠い故郷に対する憧憬に似た気持ちがあるようにも思えた。でもアメリカにだってハワイに行けば王家の末裔がいるのでは?
使用楽曲
- “Raise Today” by Peasant (Part1のラスト)
- “Ghost of a Chance” by Ron Sexsmith (Part2のラスト)
— Yoko (yoko221b) 2009-11-03, 2019-09-18 改訂