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最終章「終らない街ラスベガス」カジノで自爆事件が発生し、オーナーのキャサリンが駆けつける。ラッセルは主任への昇任を希望するサラを捜査主任に任命。犯人の所持品からある人物が関与する可能性が浮上し、エクリーはベガスを離れているグリッソムに協力を要請する。
#336 Immortality
- 邦題:「終わらない街ラスベガス」
- 脚本:Anthony E. Zuiker
- 監督:Louis Shaw Milito
- 初回放映:2015-09-27
事件概要
カジノ他爆破事件
カジノ「エクリプス」で爆弾を身に着けた男性が自爆し、客と従業員が死傷する。「エクリプス」はキャサリン・ウィロウズが父サム・ブローンから引き継いだカジノで、警察を退職したブラスが警備を担当していた。キャサリンははFBIの支局から急遽ベガスへ駆けつける。現場へ来たラッセルは、主任への昇任を希望するサラを捜査主任に任命。
犯人は自爆する前に、イヤホンで誰かから指示を受けているような様子を見せていた。ギャンブル依存の問題を抱えており、セラピーを受けていたが、最近になってセラピストが突然廃業してしまったという。
防犯カメラの映像を確認していたモーガンは、自爆犯のベストから何か小さなものが飛び出したことに気づく。ベストの内側に縫い込まれていたもので、探し出して調べてみると「LHK」というレディ・ヘザーのロゴが刻まれていた。レディ・ヘザーはかつてSMクラブを経営していたが、その後セラピストに転身、しかし孫娘がひき逃げに遭って死亡して以降はセラピーも止めていた。エクリーはレディ・ヘザーと親しいグリッソムを呼び寄せることにする。
その頃グリッソムは海洋生物の保護活動をしており、サンディエゴでフカヒレ密猟者のボートに忍び込んで逮捕されていた。エクリーの要請で拘束を解かれ、ベガスへとやって来る。
ヘザー宅の捜索令状が発行され、グリッソムはサラとともにヘザーの自宅へ向かう。行ってみると扉が開いており、中には血痕や争ったような跡があった。血液の主は男性だが自爆犯とは別人。
爆破で死亡した被害者の体内から細長い金属が発見され、自爆犯が持っていた金属片と合わせると鍵の形になった。ヘザーの自宅の地下室の鍵とわかり、入ってみると、中には爆弾の材料とC4の梱包材。グリッソムは爆弾を組み立てて事件を行い、爆破の威力を確認。カジノの被害状況と比べてみると、爆弾に使われたのはそこにあったはずのC4の約4分の1程度であると思われた。つまり、爆弾は少なくともまだあと3個ある。
小学校の学芸会に爆弾ベストを着けた女性が現れ、児童と保護者たちが急いで避難する。爆弾処理班が出動して爆弾を解除しようとするが、女性は「時間切れよ。レディ・ヘザーが命じた」と言って自爆する。この女性も、誰かからイヤホンで指示を受けているような様子を見せる。
自爆した女性は学校教師で、やはりヘザーのセラピーを受けていた。教室には「悪魔の吐息」と呼ばれる有毒な花が残されていた。その花粉は神経に作用して判断能力を失わせる。彼女は花粉を吸い込み、言われるままに爆弾を巻いて自爆してしまったものと思われた。グリッソムはヘザーらしからぬ手口に違和感を抱き「彼女は黒幕に仕立て上げられたのではないか」と言う。
サラは再びヘザーの自宅へ向かい、セラピーのテープが3か月分なくなっていることに気づく。そこへヘザーらしき女性が現れ、呼び止めるサラを無視して外へ出て行き車に乗り込む。だがその直後、車は爆発炎上して女性は死亡、その場にいたブラスも火傷を負う。
死亡したのはヘザーと思われたが、実は別人。検死中にグリッソムは本物のヘザーに呼び出されて会いに行く。グリッソムに付き添われて出頭したヘザーは取調べに応じ、事件への関与を否定する。自宅に血痕があったのは、侵入者を見つけて争ったためで、なくなっているテープは盗まれたものだという。娘や孫の件で警察への信頼をなくしていたため、通報はしていなかった。
犯人はヘザーの館の元常連客であろう、ということでヘザーは地下室の鍵を持つ顧客リストを提供。その中からまだ健在の男性5人に絞り込んでDNAを調べるが、館の血痕と一致するものはなかった。
新人のCSIが「グリッソムさんの荷物です」とスーツケースを持って来るが、グリッソムは心当たりがない。すわ爆弾かと全員が避難して中を調べると、入っていたのは男性の遺体。ヘザーの娘ゾーイを殺害したウォルフォウィッツだった。口の中にはマイクロSDカードが入れられており、中には顔を渦巻に加工され「お前は苦しみ抜いて死ぬ……カジノの男や女教師は始まりにすぎない……フィナーレはお前のために用意している」と不気味な予言をする男の映像があった。
グリッソムはスーツケースを運んできた新人が、キャサリンの娘リンゼイであると知って驚く。キャサリンに頼まれてグリッソムはリンゼイに指紋の採取方法を指導。彼女は不自然なステッカーに気づき、その下に建物の絵と位置情報を発見する。
該当する建物へ向かうと、そこには人体模型が置かれていた。手術の練習にも使える最新型の模型で、中には蜂が仕込まれていた。種類はチャールストン山に生息するヒメハナバチと判明。
グリッソムとサラは蜂と警官たちを大勢引き連れてチャールストン山へ。そこで警官たちはいくつかのチームに分かれ、別々の場所に蜜を置く。その後、それぞれの蜜に応じた色を着けた蜂をいっせいに放し、巣箱に戻って来たハチで人間の痕跡を調べ、犯人の潜伏する方角を絞り込む。
一方ラッセルは加工画像の復元に取り組み、指紋の検出に成功していた。その指紋の主は、レディ・ヘザーの元常連客で、DNA鑑定でシロと判断されていたダルトン・ベットンだった。キャサリン、グレッグ、モーガンの3人はベットンのマンションへ向かうが、そこの地下駐車場では3台の車に大量のC4爆弾が仕掛けられていた。爆弾処理班を呼んだり住人を避難させたりするする時間はない。キャサリンは、爆弾がデイジーチェーン接続されていることを知り「3人同時にワイヤーを切断するしかない」と言う。
その頃グリッソムとサラは山で爆弾ベストを着たベットンを発見していた。ベットンは以前、リンパ腫の治療で造血幹細胞の移植手術を受けていたため、血液と唾液のDNAが一致しなかったのだ。レディ・ヘザーの最初の客だったベットンは、ヘザーを愛し「彼女を変質させて自分から奪った」グリッソムへの憎悪を見せる。グリッソムは孤独なクジラの話を聞かせてベットンを説得し、起爆装置を取り上げる。
キャサリンらは無事に爆弾のワイヤーを切断し、喜び合う。
事件の解決を見届けたラッセルは後任をサラに指名し、殉職したフィンの盾を持って東部へと旅立つ。キャサリンは「やはり私の居場所はベガス」と、ベガスCSIへの復帰を考え始める。
グリッソムは取調室でヘザーと会話し、サラへの愛を語った後、サンディエゴへと戻って行く。
リンゼイのおかげでグリッソムの真意を知ったサラはサンディエゴへ向かい、再びグリッソムと抱き合う。
感想
15シーズンにわたって続いてきた「CSI: 科学捜査班」は、このエピソードでひとまず完結となる(後続の「CSI:ベガス」はとりあえず別物と考えて)。手放しで「ベストエピソード!」とは言わないけど、ここ数年の中ではベストだと言って良いかな。久々にグリッソムとキャサリンも登場し、「ベガス感」あふれる良いエピソードになった。
2時間のTV映画(実質90分くらい)という長尺にも関わらず、次々に事件が起き、爆弾の再現実験や蜂を使った追跡捜査。ハイテクギミック満載の人体模型など、グリッソム時代に戻ったようで懐かしかった。
脚本を書いたのはこれもお久しぶりのアンソニー・E・ズイカー。ズイカー氏はCSIのメインクリエイターなので毎回オープニングのクレジットには名前が出ているのだが、直接脚本を書いていたのはシーズン4くらいまで。その後はCSI:NYをメインに手掛けるようになり、最近は偉くなったせいか脚本はほとんど書いていないはず。Written byでクレジットされるのはシーズン14「サイバーキラー」以来だし、その前となるとコスプレ蜘蛛男ぐらいまで戻っちゃう?
あちらこちらへとテンポよく移動し、良い感じに終わったなーと思っていても、エピガイとしてあらすじを書いてみると「あれ?」と思う所が出てくるのも、ズイカーの脚本では相変わらずという気がする。展開の面白さはあるけど、どこかで説明や整合性が犠牲になっちゃうんだなー。
ヘザーの身代わりとして爆死した女性は結局誰だったのか(これも患者のひとりなのだろうけど)、捜索令状を取ったのに車を調べていなかったのか、そもそもヘザーの死を偽装した目的は何だったのか、容疑者リストを渡すなら亡くなった人は最初から除外しとけや、スーツケースに入れた遺体の下半分はどこにあるのか、人体模型はあそこまで高性能な物を使う意味があったのか、ていうかどこで購入したのか、蜂は偶然に混入したのか、意図的だとすると逃げちゃったらどうするつもりだったのか、地下駐車場で鳴っていた警報はどのタイミングでどうやって鳴り始めたのか、そもそもあそこまで大掛かりな仕掛けを作れるベットンて何者? とか、まぁ色々あるけど別に重要でもないかな。
(上記の内容、説明を見落としているだけかもしれないけれど、確認のためだけに見返すのもちょっとダルい……)
しかし、スーツケースに入れられていたのが「ゾーイ殺害犯のウォルフォウィッツ」だという所は、もうちょっと確認してほしかった。シーズン6「怒りの鞭」でゾーイを殺害したのはウォルフォウィッツではなく、双子の兄弟のスネラーだ。スネラーはウォルフォウィッツを殺害し、遺体を冷凍して彼になりすましていたので、結局ウォルフォウィッツとして逮捕・起訴された――という可能性も考えられなくはないが、スネラーは軍歴があり、指紋で身元が判明しているので、それもちょっと無理がある。これは単純に脚本ミスだと思う。誰か気づけ。
レディ・ヘザーというキャラクターも謎が多い。というか出演を重ねるたびに後付けで都合良くあれこれ変えられてきたと言うべきだろうか。SMクラブ経営者からセラピストへの転身は、やはり無理があったと思う。かなり際どいプレイをする以上、人間の心理を十分に研究しなければならないという理屈はわかるのだが、SMの妖しい魅力と、警察からの協力要請を受けられる「カタギの属性」の両方を身にまとわせるために、無理してるなぁという気がしていた。
ともあれ、ヘザーがこういう形で再登場するということは、その後グリッソムとサラはよりを戻すのだろうなと思っていたら、やっぱりそうだった。
これはCSIシリーズ全体で見られた傾向だが、主人公のラブストーリーを進める際に、過去の女性関係をちょっと否定的に蒸し返すということが時々ある。シーズン7ではヘザーが元夫と再会するエピソードがあったが、その次が模型殺人でサラがサラわれるお話よ。ここでグリッソムはサラとの恋愛関係をぽろっと口にして、チームの皆がそれを知る羽目になった。
今回は今までと違って、一度結婚して別れてからの話なので、より強い描写が必要だったのか、グリッソムはサラの存在が自分にとってどのような意味を持つのか、かなり具体的に語った。
シーズン15のフィナーレではニックの成長に注目したが、それと並んでこれまでシリーズの中心近くに位置してきたのがこの、グリッソムとサラの物語だ。ここまで来たらもう、このラストしかないでしょう! ボートの上で固く抱き合い、そのまま出航していく二人。でもどうせなら、主任への昇進を正式に辞退してキャサリンに引き継ぐところも見せてほしかった。
グリッソムの専門を昆虫学から海洋生物に変えたのは、このシーンのためだったのだな……と、しみじみ思った。ネバダ州には海がないので、海へ帰るということはベガスとの別れが必然となるから。でも個人的に、グリッソムには虫オタのままでいてほしかったけど。
ところで終盤近くでは、前回とりあげたスコアボードがまだ残っていた。さすがにニックとフィンの名前は消されていたけど、その他の内容はおそらく同じだろう(よく見えない)。
フィンといえば、結局意識が戻らぬまま死亡したということがわかったが、ラッセルが盾を手に持つ場面だけで描写されていたのが何だか寂しい。お葬式の場面ぐらいやってほしかった。
ジュリー・フィンレイというキャラは、私はあまり好きではなかったし、CSIの世界にとっても成功したとは言い難かったと思うが、殉職で終るならもう少し丁寧に、敬意をもって締めくくっても良かったのではないか。
冥福を祈りたい。