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Headhunter
小説版CSI第10弾、今回の著者はやはり初登場のグレッグ・コックス。ラスベガス大学の人類学部に人間の干し首が送りつけられる。調べてみるとその首は本物で、しかもごく最近に製作されたものとわかる。グリッソムらは殺人事件として捜査に着手するが、頭部のみでDNAも劣化しているため、まず被害者の身元特定に苦労する。
書誌情報
Headhunter
内容・感想
CSI小説も早いものでもう11作目(今年の6月には17作目が刊行されるので、全然追いついていない)。時期的にはシーズン8の後半と思われる。サラはすでにいなくなり(描写から察するに、シフトを移っただけでなく辞職後らしい)、ウォリックはまだチームの一員として働いているので。ドラマ版ではいつの間にかいなくなっていたソフィアも刑事として登場(ニックとのコンビが良い感じ)。
小説では珍しく事件はひとつだけ――ラスベガス大学の人類学の教授宛てに本物の干し首が送りつけられ、開封した事務員が警察に通報したというもの。これが歴史的な物であれば事件性はないことになるが、調べてみるとその首の主は赤毛の白人で(ホレイショじゃないよ)美容整形の形跡がある。つまり首を切られて干されたのは最近のことで、殺人事件の可能性大として捜査が始まる。事件発生時刻からいうと本来は遅番 (swing shift) の事件だが、大きな事件があって全員駆り出されているため深夜番 (graveyard shift) のグリッソム班が担当。こういう事件なので主任はもう大喜びだ。遅番の人員に余裕があっても強引に捜査に加わったに違いない。
この干し首は、製作時期こそ新しいものの、作り方としてはアマゾン川上流域に居住していたヒバロー人の間に伝わる伝統的なもの。現地の言葉で tsantsa(ツァンツァ)という。検索すると、そのものズバリの画像も出てくるのでご注意を。
被害者が首だけなので、まず身元特定に一苦労。グリッソムはテリ・ミラー(結婚して苗字が変わっていたけど新しい名前を失念)に「干し首からの復顔」を依頼するが、テリは忙しいらしく代理の女性がやって来る。「復顔」はそもそも頭蓋骨に肉と皮膚を貼り付けて作成するものなので、いわば土台がない状態で正確な顔は期待できないが、何とか「元の顔」らしき物を数バージョン作成する。ウェンディはDNA鑑定を行うが、核DNAが劣化しているためミトコンドリアDNAを使用(母方の血縁者がわかる)。キャサリンとウォリックは「干し首マニア」たちの実態調査。グレッグは死亡推定時期の失踪者リストをチェック。ニックは干し首の装飾品や、添えられていたメッセージの紙や使用したレーザープリンターを鑑定。
で、結局はプリンターが使われていたクリニック(心療内科かな)が特定されたことで、「その住所は失踪者リストで見た」「失踪したドクターが復顔似顔絵に似てる」「mtDNAが一致した」と次々に結果が出て、あっという間に身元特定。ここまでが全体の約3分の1くらいで、いちばん面白かったのも結局ここまでだった、かな。
中盤では干し首マニアや被害者の周辺を探ってみるものの、ことごとく空振り。このへんで登場した「容疑者」たちは、読んでいても「これシロだろ」って感じで……ミステリには必要な要素かもしれないけど「話の中では怪しいが、読者から見ると怪しくない」というタイプ。
その後、同じ犯人による2人目の被害者が発生。といっても首ではなく、最初に干し首を送られた先の人類学教授が、首を切り落とされた状態で発見される。おそらく首は犯人が持ち帰ったものと思われる……で、この事件が起きたことで事件は急展開。どうやら、この教授が本命だったらしく、身辺を探ってみると容疑者があっさり判明し、多分あの人の正体が犯人じゃないかな、と思ったらやはりそうだった。登場人物の中で年齢と性別が当てはまりそうなのはその人くらいしかいなかったし。なので、やはり前半がいちばん面白かった。
ラボの皆さんも活躍。ウェンディはDNA鑑定だし、文書鑑定のロニーさんも登場(マニアックな人選!)。アーチーは復顔担当の女性からモーションをかけられていた。しかし「アーチーが25歳」という記述は間違いだろう。だってこれシーズン8の時期でしょ。アーチーはシーズン2から登場してるんですよ?
ホッジスももちろん登場。出番はあまり多くなかったが、終盤で犯人が主任の命を狙う時に、偶然命を救うという美味しい役だ。で、本人も主任もそれに全然気がつかないまま、というのがまたホッジスにぴったりだ!
— Yoko (yoko221b)