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Blood Quantum
小説版CSI第14弾、今回の著者はベガスでは2冊目のジェフ・マリオッテ。ニック、ラングストン、ブラス警部は、アメリカ先住民部族の議長が殺害された事件を担当し、捜査権の及ばない居留地へ出かけて現地警察の協力を求める。キャサリン、グレッグ、ベガ刑事は高級住宅地での発砲事件を担当。事件自体は、邸宅に侵入しようとしたホームレスを警備員が射殺したという単純な物だったが、その家の娘が数日前から行方不明になっており、事件との関連が疑われた。。
書誌情報
Blood Quantum
内容・感想
本作からグリッソムに代わりラングストン博士が登場。ライリーもサラもいないので、時系列上はシーズン9と10の間くらいになるのかな。
前作 “The Killing Jar” の感想で「Donn Cortezの小説は情報が多すぎて読むのが大変」と書いた(実際読むのにかなり時間を要した)が、Jeff Mariotte のこの小説は何だかさらっと読み終えてしまった。面白いかといえば面白いんだけど、印象が強いか? というとそうでもない……かな。微妙なところ。
さて、まずラングストンの「小説版デビュー戦」となった事件。被害者はアメリカ先住民ブラックロック部族の議長で、現場には “QUANTUM” という血文字が残されていた。この血文字の意味を探ろうとラングストンが昔の職場(大学)を訪れて専門家の意見を聞く場面があり、「学者」的な一面が見えたのが良かったと思う。
部族長はベガス市内に住んでいるようだが、聞き込み捜査に行く先は居留地。ここはベガス市警の捜査権の及ばない場所なので、居留地の警察(保安官?)に従わなければならない。で、ここで環境活動家が襲撃され、搬送先の病院がさらに襲撃されるという事件があり、死傷者を何人も出す大惨事に発展するわけだが、その割に描写はサラッとした印象だった。管轄外の「他所の事件」だからかな。病院にニックが1人で乗り込んで行く場面は、普通ならドキドキする場面のはずだが、ここでニックが死ぬわけないし。前作のライリーもそうだったけど、こういう所で小説版はどうしても緊張感を欠くというハンデがある。
犯人の方は、ラングストンが専門家を2回目に訪ねたあたりでわかってしまった。その後ウェンディが「DNAプロファイルから判断して犯人は白人」と言った時点でダメ押し。先住民族という素材の使い方は良かったと思うが、事件としてはいまいち盛り上がらなかったのが残念だ。
キャサリンとグレッグは、ベガスのカジノ王、ビックス・キャメロンの邸宅でホームレスが射殺された事件を担当する。こちらは、警備主任が発砲した状況が最初からわかっており、単純な事件だと思われていたが、その背後に何やら複雑な事情がある様子。その家の父親と息子はもう10年くらい行方不明で、病弱な母と娘の2人暮らし。だがその娘が事件の前日くらいから連絡が取れない。
と思ったら射殺されたホームレスの正体が息子で、母親と娘の病気は少しずつ毒を盛られていたためで、娘は無事に発見されたものの、その現場には父親らしき白骨死体があったという、とんでもない受難一家の話だった。
結局は一家の財政を握っていた会計士(?)が使い込みをしていて、それをごまかすために父親と息子を射殺したのが始まりだったわけだ。息子の方は何とか生き延びたものの、頭を撃たれた影響で脳を損傷してホームレス暮らし。会計士はその後、母と娘も殺そうとして毒を盛り始める。娘は身体が弱り、むかし家族で過ごした思い出の場所へ行くようになり、そこで思いがけず兄と再会し、自宅への帰り方を教えたら警備員に撃ち殺されてしまったというのが冒頭の事件。悲劇的に運の悪い一家だ。娘は兄の残した手がかりから父親の遺体を発見するが、そこで動けなくなってしまい、最後にグレッグに救助される。こちらも、事件の印象はいまいちだったが、グレッグの活躍は素晴らしい! カジノ王キャメロン家で起きた事件と聞いてピリピリするエクリーの様子も、TVで見るまんまだな~とニヤニヤしてしまった。
ところで、ビックス・キャメロンはカジノ王ということで、サム・ブローンとも交流があったらしい。キャサリンが子ども時代に会ったことを思い出す場面があるのだが、これを読むとキャサリンはブローン家の令嬢として生まれ育ったようにしか見えないんだよね……現在シーズン10の描写を見ても同じ印象があるのだが、トニー・ブローンの事件やシーズン3のフィナーレの件などは、まだ設定として有効なのだろうか。
— Yoko (yoko221b) 2012-04-13