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CSI - Season 5, Episode 1
#94 Viva Las Vegas
- 邦題:「ラスベガス狂気の夜」
- 脚本:Danny Cannon, Carol Mendelsohn
- 監督:Danny Cannon
- 初回放映:2004-09-23
Well, they say gamblers are creatures of habit.
事件概要
氏名不詳男性/ケン・ウィラード
グリッソム、グレッグ、ブラス警部担当。ナイトクラブで何者かが射殺され、店内はパニックに。被害者は至近距離から額を撃ち抜かれて死亡。店の入口には金属探知機があったので、銃を持って入ることは難しい。被害者の側には誰かの遺体らしき写真があったが、端が焼かれていたので、身元は判然としなかった。
グリッソムは、この事件をグレッグの現場捜査官としての適性テストにすることにして、現場を調べるよう指示。グリッソムは駐車場の車でアンサリングマシンを発見。メッセージが9件入っていた。一方、グレッグはランプシェードの中から拳銃を発見。その銃は凶器と確認された。握りの部分には何かの青い物質が付着していた。
グリッソムは写真に写る薬ビンを拡大する。そのラベルと処方箋から持ち主を特定し、家に踏み込むと、写真と同じ部屋に写真と同じ男の遺体があった。首に巻かれていたワイヤーは、最初の被害者の車にあったものと同種類だった。第2の被害者の名はケン・ウィラード。最初の現場となったクラブのオーナー、マニーの共同経営者だった。最初の被害者は雇われた殺し屋で、彼がウィラードを殺し、その証拠写真を撮った後、雇い主に射殺されたものと思われた。
グレッグが発見した拳銃には、テープの接着剤とトイレの消毒剤が付着していた。グレッグは現場のトイレの水が青かったことを指摘するが、それでグレッグが現場を調べる前にトイレを使ったことがわかり、証拠を汚染したかもしれないと叱責を受けてしまう。
銃のシリアル番号は削られていたが、復元してみると登録はマニーだった。マニーは先週銃を盗まれたと主張するが、彼にはクラブの所有権をめぐる動機があった。
現場でトイレを調べると、給水タンクの中にダクトテープが貼られていた。テープに残っていた指紋は、店の従業員クリスタルのものだった。クリスタルは麻薬所持で逮捕され公判を控えており、マニーが保釈金を払っていた。クリスタルはケンと交際し、ケンに頼まれて運び屋になったのだった。そのクラブには、ケンに利用されて捨てられた女性が他に何人もいたらしい。クリスタルは裏切ったら殺すと脅され、1万ドルで殺し屋を依頼した。だが、事後に殺し屋がとても払えないような金額を要求してきたため、マニーの拳銃を女子トイレのタンクに隠してチャンスを待った。そして殺し屋を射殺したのだった。
現場を汚染したことでグレッグは不合格になったかと思われたが、ラボに代わりの人員も来たので、グリッソムはもう一度チャンスを与えることにする。しかし「代わりの人員」のシャンドラは、あまりの忙しさに1日で辞めてしまった――。
レイヴンことニコール・リチャーズ
キャサリン、ヴァルタン刑事担当。ホテルのクリーニング係が、客室のベッドの上で血まみれで倒れている二人の男女を発見した。女性は死んでいたが、男性は気を失っていただけ。致命傷を与えた凶器は、バスルームのタオルかけと思われた。端に尖った装飾があり、そこに血と毛髪が付着していた。バスルームの床には、尿の跡とはずれたアンクレット。
男はカール・ジョンソンというオハイオのセールスマン、女性は本名ニコール・リチャーズ、ステージネームをレイヴンというストリップダンサー。男は、自分は何も覚えていないと繰り返し、女性に薬物を飲まされたと主張した。被害者の傷は頭蓋骨にまで達しており、死因は脳への打撲と硬膜下出血だった。血中アルコール度はリーガルリミット(車を運転できる許容量)の4倍。長期にわたる飲酒の習慣があると、血小板が減少して血液が薄くなり、血が凝固しにくくなることがある。その傷以外は、足首が腫れているだけだった。
部屋で検出した指紋は、DVの前歴があり現在はエンバシーの警備員をしているジョージ・クレイヴンのものだった。ジョージはレイヴンの恋人で、彼女に売春させていたのでホテルにいただけだったと主張。彼女が売春をするのは気にしないが、客と寝るところを見ていたくもないので、トイレで用を足してすぐ帰っただけだと言う。防犯カメラの映像を見ても、人を殺した直後には見えず、服に血痕もなかった。また、血液検査の結果から、ジョンソンが薬物を摂取していたことも裏付けられた。
キャサリンは現場に戻り、バスルームの床をもう一度精査。床にすべった痕跡があった。レイヴンは濡れた床で足を滑らせて転倒し、タオルかけの端の尖った部分に頭をぶつけて出血。飲酒癖がたたって血が止まらず、頼みのジョンソンは一服盛られて眠っていたため助けを呼ぶこともできず、そのまま失血死したのだった。
砂漠エイリアン(エドワード・トーマス)
ニック、サラ、トラヴィス刑事担当。郊外の空き地で銃を発射して遊んでいた若者がミイラ化した遺体を発見。長い頭、長い指で、ステレオタイプな「宇宙人」のような扮装。そこはエリア51に近い地区だったため、UFOマニアたちが事件を見守っていた。遺体のそばには、ピンクの塗料のついたシャベルがあった。
モルグでデイヴィッドは不審な電子音を聞く。その音は、被害者が装着していた補聴器のものだった。宇宙人のような扮装はマスクによるものだったが、異常に長い指は本物。マスクに書かれていた “Big City Costume” という店の名が書かれていた。店に問い合わせた結果、マスクはとある「チャペル」のための特注品であることがわかる。その「チャペル」では、被害者とそっくりの宇宙人のような扮装をした牧師が、結婚式を行っていた。そのコスチュームは、コレクターによって盗まれることがよくあるという。
シャベルの塗料は車の塗装に使うもので、車種は60年代のビンテージキャデラックと判明。ニックとサラは、宇宙チャペルの隣のプレスリーチャペルに、ピンクのキャデラックがあったことを思い出す。一方、補聴器のシリアル番号から、被害者の身元はエドワード・トーマス牧師と判明。住所は宇宙人コスプレチャペルだった。
プレスリーチャペルへ行ってみると、そこでプレスリーのコスプレをして結婚式を執り行っていたのは、例の宇宙人牧師ブライアンだった。本来は、ブライアンがプレスリーチャペル、エドが宇宙チャペルを運営していた。だが結婚式場は競争が激しく、ブライアンとエドの間にも争いが絶えなかったという。シャベルに塗料がついたのは、エドがキャデラックに傷をつけたためだった。ブライアンはエドと和解しようとしたが、行ってみるとエドが死んでいた。それで、エドが望んだだろうと思ってエリア51に埋葬し、教会はちゃっかり引き継いでいたのだ。だが、その時エドは死んだのではなく、内出血で意識がなかっただけだった。エドの指が長いのはマルファン症候群といい、これは眼球や血管の異状を伴うことがある。エドは埋められた後に息を吹き返し、地上に出ようとしたがかなわず窒息死。胃の中や爪の下に土が残っていた。
ランス・フレイザー
ウォリック、キャヴァリエ刑事担当。安宿のバスタブの中で、宿泊客が死んでいた。バスタブには電熱器。このせいで感電死したと思われた。名前はランス・フレイザーで、金も身寄りもなかった。手首には自殺未遂らしき古い傷跡。財布は空、ポケットには煙草の箱とホットドッグの包み紙があった。だがウォリックは部屋にあった花のレイに気づく。
それはカジノで大当たりを出した客の首にかけるものだった。マネージャに話を聞くと、ランスが前日の夜に5万ドルを当てていたことがわかる。
ランスが獲得した5万ドルは、部屋にはなかった。銀行口座も車も持っていない。金を得てから死ぬまでの間、約30分で全額使い果たせるはずもない。ウォリックは被害者の足取りをたどり、ホットドッグスタンドへたどり着く。店員の制服には、電熱器に焼け焦げて付着していたものと同じ、赤と青の布が使われていた。前日の夜に働いていた店員は、急に辞めたという。
その店員の部屋へ踏み込むと、部屋の中には高価なオーディオ製品と、焼け焦げのできたホットドッグ売りの制服。店員はランスが大金をあてたことを知り、彼を尾行し、バスタブの中に電熱器を放り込んで感電死させて金を奪ったのだった。
車両火災(放火?)事件
ニック担当。詳細不明。
???事件
ウォリックが法廷で証言。詳細不明。
感想
1回で事件が4つ――これはちょっと多すぎやしないか。多くてもいいんだけど、それなら時間も延長してほしい。
CSIもシーズン5に入り、ベガス・マイアミ・NYのトロイカ体制が始まったところで、原点に返ろうということなのだろうか。たしかにシーズン1の1話は事件が合計8件だったが、うち4件は全体が語られない断片的な描写のみ。きちんと事件として描かれていたのは、ミランダ事件と家宅侵入事件と昏睡強盗事件(+交通事故)。昏睡強盗と交通事故は合わせて1件と数えていいと思うので、実質3件。さらに、ニックの担当した事件が単純にあっさり解決したことと、ミランダ事件が未解決だった(つまり解決に至る描写がない)ことを考えると、慌しい印象のわりに、エピソードの「濃さ」はそれほどでもなかったのではないだろうか。
また、初回のエピソードでは事件よりも登場人物紹介が中心だったことを考えると、今回のエピソードはそれなりに全員の存在感がある分、やはり密度が高すぎるように思う。シーズンを重ねてドラマを積み上げていくということは、こういうことなのかと、しみじみ思う。
だが、原点に返ろうという試み自体は面白く感じた。TV.com のページには、Pilot を思わせる要素がいくつか列挙されている。
- 新しいDNA技術者のシャンドラ → ホリー・グリッブス役のシャンドラ・ウェスト
- 新人の採血
- 足の爪に関するウォリックの研究発表 → Pilot でウォリックが担当した事件の決め手
- 売春婦が客に一服盛る事件(今回のキャサリン担当/Pilotでのニック担当)
考えてみると他にもあるな。今回ウォリックが担当した「バスタブの中で自殺に偽装する」殺人は、ミランダのあの事件だ。ニックとウォリックはシャンドラが辞めるかどうかで賭けてるし(以前に賭けたのはシーズン1の8話「グリッソムへの挑戦者」だったけど)。赤外線カメラを装着してシャンドラに “You're hot!” と言う主任も、初期のちょっとナンパな主任を思い出させる。
今回のグリッソムは珍しく、犯人に対して辛らつな物言いをしている。ケンを殺すか刑務所に行くか2つに1つだった、というクリスタルに “Congratulations. You got both.” と言った時は、ホレイショ化現象かと思った。いやホレイショでもここまで言うかな……犯人が女性の場合に。これももしかしたら、「妻を殴る男と子どもへの性的虐待と麻薬の売人、この三者だけは許せない」と言ったシーズン1の主任が戻ってきたのかもしれない(クリスタルは運び屋として麻薬の売買にかかわったわけだから)。
珍しいといえば、2番目の現場に乗り込む主任が珍しく銃を抜いている。シーズン4「狂気の仕置人」の事件がきっかけで宗旨替えしたのだろうか。以前なら違和感を持ったかもしれないが、なにしろマイアミではこのエピ放送の3日前に(ネタバレにつき自粛)。丸腰じゃ不安だ! 主任は見かけによらず射撃が上手いし、きっと銃の手入れも怠りないだろう。
さて、そういう「昔を振り返る」事件が多い中、サラとニックが担当したエイリアン事件は、ちょっと異色。そういえばエリア51ってネバダ州にあったんだっけ!と思い出した。でも、実際の「現場」はどこだったのだろう。ニックとサラに事件を割り振るときの台詞は “in Ely, off Groom Lake Road.” となっていたけれど、ネバダ州のElyはベガスからかなり遠いし、クラーク郡でもない。「エリア51」自体はリンカーン郡にあるらしいのだが、ここは空軍基地のど真ん中なので、民間人は入れない。空軍の敷地は、クラーク郡の北部まで続いているので、おそらくこの周辺――ということなのだろう。
この事件で初登場のトラヴィス刑事が「発見者はまずダン・ラザーに通報したらしい」と言っていたので「え、ダン・ラザーってこの時まだいたんだっけ?」と思ったら、この回の放映は2004年9月23日。CBSの看板キャスターだったラザーが、ブッシュ大統領の軍歴疑惑を報道したのは、同年9月8日のことだった。その直後に証拠のメモが捏造だったということがわかり、一転ダン・ラザー祭りになってしまった。ラザーはその後、05年3月に「CBSイブニングニュース」を降板する。放映当時はまだ騒ぎの最中だったろうと思うと、視聴者の反応はどうなったのだろうと興味深い(タイムラグがあるのが残念だ)。
……そんなこんなで、ベガスの夜は忙しく更けていった。主任の靴にくっついてしまったグレッグの代わりにDNAラボへ来たシャンドラも、コネティカットとベガスではペースが違いすぎたのだろう。出演はどうやら今回限りらしい。「24」つながりで保安官とのツーショットも見てみたかったんだけどな。レイコ・エイルズワースはこの後「24」のシーズン4へ戻ってCTUのツンデレ支局長代理になったわけだが、まぁ役柄としてはそちらの方が好きだからいいか。
単語帳
- blitz:電撃作戦(Blitzkrieg)。この場合は第二次大戦当時の様相を擬して、照明を消してサーチライトを点けたりする演出のことだと思う。
- last rite:臨終の者に対する最後の秘跡(秘跡=キリストに定められた恩恵を受ける方法。洗礼、聖餐など)
- booze:大酒を飲む
- juice:補聴器が “out of juice” だった。この場合は口語の「電気、燃料」などの意味か。
- B.O.:体臭(body odor)
- turn a trick:(俗語)売春する、犯罪を犯す
— Yoko (yoko221b) 2006-07-12