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CSI - Season 5, Episode 15
#107 King Baby
- 邦題:「王様の秘密」
- 脚本:Jerry Stahl
- 監督:Richard J. Lewis
- 初回放映:2005-02-17
It's only the truly powerful that have the luxury to relinquish power.
事件概要
ブルース・アイガー転落死事件
全員で担当。カジノの経営者ブルース・アイガーが自宅のバルコニーから転落死した。本来はスイングシフトの事件だが、被害者が大物であることから、エクリーがグリッソムを呼び出し、グレイヴヤードシフトも加わっての合同捜査となる。
顔面を損傷していることから、うつ伏せに落ちたはずだが、現場ではあお向けになっていた。妻のドナ・アイガーによると、ブルースが全裸で倒れていたので、その姿を人目に晒すのに忍びなく下着をはかせたという。毎週木曜の夜、ドナはクラブへ出かけ、メイドたちは休みを取るのでアイガー家はブルース1人だけになる。
ドナの車は整然と車庫に入れられ、鍵もかかっていた。庭には便とまだ新しいオイル漏れの跡。上のバルコニーの手すりには手形があった。ブルースの手にその痕跡はないので、別の人物がそこに手をついたはず。プランターの端が欠けていたこと以外に、争ったような形跡は見られなかった。
遺体は直腸への挿入が何度も繰り返され、括約筋が傷ついていた。臀部に軟膏、足に便が付着。死因は自分の血による窒息だった。その後、軟膏はオムツかぶれ用の軟膏とわかる。胃の中身はミルクだけで、血液中に薬物の痕跡はなかった。
アイガーはクイーン・リージェント・カジノの買収をめぐってサイ・マグリーと争い、ゲームコミッショナーを接待漬けにした疑惑が持たれていた。他にもさまざまな人物の弱みや秘密を握っていたと言われる。電話の通話記録を調べると、アイガーの自宅からマグリーのオフィスに、夜中に何度も電話が架けられていた。マグリーはアイガーの妻と浮気をしていたのだ。
キャサリンは現場の写真を見ようとして、画像が1枚もないことに気づいて愕然とする。カメラのメモリカードがすり替えられ、写真が奪われてしまったのだ。カードの指紋を調べたが何もなかった。もう一度写真を撮りに戻ったキャサリンは、アイガー家のゴミ箱に新しくゴミが捨ててあることに気づいて持ち帰る。中には丸めたカーペット、血の付いた巨大なオムツ、血の付いたドナの靴があった。カーペットには這って歩いたような手形と排泄物の跡。
カーペットをアイガー邸に戻してみると、手形の跡は壁の位置で途切れていた。だがそこの壁を動かすと通路があり、その奥には、巨大なベビーベッドやおもちゃに囲まれたブルースの秘密の部屋があった――。
そこはパニックルームを改造した部屋で、授乳用のドレス、浣腸、おしゃぶり、ロッキングホースなどがあった。冷蔵庫には哺乳瓶に入れたミルク。ブルースはそこでひそかにオムツとベビー服を身に着け、赤ちゃんごっこを楽しんでいたのだ。
オムツの血と尿はブルース本人の物。尿の中には未確認の物質があった。血液からドラッグは検出されなかったが、代謝が速く血液中に現れない薬物の可能性があった。
現場から盗まれた写真がTVのニュースで公開される。エクリーは令状を取ってメモリカードを押収し、情報源を調べられるよう手配する。写真を盗んだのはフォクシー・ハリスというジャーナリスト。彼はマグリーに雇われてアイガーのスキャンダルを探ったが見つからず、仕方なくマグリーがアイガーの妻と浮気するというスキャンダルを作り出した。ドナがマグリーに、マグリーがハリスに秘密の抜け道を教えたため、ハリスは鑑識のふりをして入り込み、カードをすり替えることができたのだ。
秘密の子ども部屋の冷蔵庫にあったミルクはすべて人間の母乳で、授乳用ドレスの上皮細胞とDNAが一致した。また、おもちゃ箱を分解すると、引き出しの下にはサイ・マグリー、サム・ブローン、ロリー・アトウォーター(保安官)など有力者に関する秘密のファイルがいくつも入っていた。その中に、名前のない赤ん坊の写真が1枚あった。
セキュリティシステムのHDDを分析すると、事件の夜、ドナが出かけた後に誰かが来て帰ったことと、ドナが帰宅してから通報するまでに1時間以上の時間があったことがわかる。ドナは倒れている夫を見つけ、血を吐いて死ぬのを嘲りながら見ていた。そしてその後、オムツを捨てて後始末をしたのだった。ドナは夫の趣味を知っていたがそれには関与せず、木曜の夜、自分はクラブへ行き夫は「ベビーシッター」を雇うという取り決めをしていた。
ブルースの尿から検出された薬物はLSDだった。LSDは20分で排泄され血液中には残らないが、幻覚状態を引き起こし、薬が物理的に抜けた後も脳はカスケード(連続した信号伝達)を続けるのだ。また、庭のオイル漏れはランボルギーニの物。サイ・マグリーは最近ランボルギーニを購入し、歌手ターニャ・ロリンズに贈っていた。ターニャがブルースの「乳母」として母乳を与えていたのだった。
ターニャは、子どもがほしいというブルースの言葉にだまされて妊娠、出産するが、出産後にブルースは子どもを取り上げ、ターニャに自分の乳母役を命じたのだ。赤ん坊に会いたい一心でターニャは5年間我慢してきたが、ブルースは「来週は子どもに会わせる」と言うばかりだった。事件の夜ターニャは浣腸でLSDを摂取させ、ブルースはトリップしてバルコニーからダイブ。ターニャはそのまま立ち去り、その後ドナが帰宅して発見、となった。
感想
オムツを身に着け巨大なベビーベッドで赤ちゃんプレイ。Bizarre Vegas もここに極まれり――といったところか? ああ、でもシーズン4「心優しき獣たち」を見た時にも同じように思ったような記憶が。人類の嗜好のバリエーションは個人の想像力を軽く凌駕する。
こういう変てこりんな事情が背景にある事件は、やはりベガスが突出していると思う。他のシリーズはどうかというと、マイアミで小児性愛、NYで四肢切断萌えと家具擬態萌えがあったかな。マイアミでは「ホレイショの怒りの対象」、NYでは「犯罪捜査の一環」であるのに対して、ベガスのグリッソムは科学者として現象をありのままに見て、冷静に分析して理解しようとしている、そういう視点の違いを感じる。グリッソムは警官じゃないから、ということもあるだろうが、まぁ小児性愛とか四肢切断は行動に移したらその時点で犯罪だから同列にしてはいけないかもしれない(子どもへの性的虐待はグリッソムにとっても絶対に許せない行為のはず。四肢切断の方はいくつか条件が整えば合法になる国もあったように記憶している)。
しかし、さすがのグリッソム主任もアダルトベビーショップでは何となく居心地悪そう。「心優しき獣たち」でPAFコンに行った時はあんなに楽しそうだったのに。
こういう嗜好って実際にあるのだろうか、それもお店を経営できるほど需要があるのだろうか――と最初は疑問に思ったのだが、やはり実在するようだ。しかも paraphilic infantilism というれっきとした名前がある。
infantilism(infant=幼児)という言葉には、成人しても知能や感情が未成熟であるという症状を指すこともあるので、Adult Baby(AB)という言葉を使った方が良いのかもしれない。さらにこの中には Diaper Lovers(DL)と呼ばれる人も含まれる。ブルースのように赤ん坊になりきりたい人もいれば、そこまで徹底しない人もいたり、性的な要素を含まないファンタジーもあれば、オムツにエロスを感じる性的なフェティシズムもあるのだそうだ。ああぁやはりよくわかりません!主任! orz
もしや日本にもあるのだろうか? と思って「アダルトベビー」で検索してみた……ら……。1)
さて今回は被害者が大物とあって、久々の合同捜査。全員で1つの事件を捜査するのは人事異動以来だと思う。最初の現場では、合同といってもグレッグとサラ、ニックとウォリックが一緒に作業していたが、後の方ではニックとサラ、グレッグとウォリックが久々に一緒に捜査していて嬉しかった。
前回弱音をはいていたソフィアは、どうやらCSIに留まるようだ。前半でキャサリンに怒られるために出てきたんかいな、と思ったら、後半ではサラと仲良く捜査。この2人のシーンはけっこう良かったなと思う。ベガスに限らないが、どうもCSIは女性同士があまり親密に描かれないように思う。ニックとウォリック、デルコとスピードルの女性版みたいなのがあっても良いんじゃないかなぁ。サラとソフィアは年も近そうだし、クリミナリストとしてはむしろキャサリンよりも共通するものを持っていそうな気がする。男性を交えたコンテキストでしか描かれないのは、せっかくのキャラがもったいない。三角関係要員なら仕方ないが、そうでないなら、もっと仲良くさせてくれないかな~。
ところで今回の話の冒頭シーン、NYシーズン1の某エピソードに似ているのは偶然なのだろうか。放映はこちらの方が2週間ほど早かったみたいだけど。被害者は巨漢で皆に恐れられる有力者。秘密を持っていて、その秘密のためにバルコニーから落ちて死んでしまう。ブルースの方は奥さんに愛されてなかったけど。
単語帳
- Mogul:大物(口語)
- Jackie Collins:ロマンス小説家。『ハリウッドの妻たち』、『LA闇のコネクション』など
- hate lay:腹いせや面当てのために寝る相手のことかな?(ドナはマグリーのhate layだった)
- transitional object:移行対象(乳児が母親への強い依存を弱める時に、物理的な愛着を移す対象。ぬいぐるみや毛布など)
— Yoko (yoko221b) 2006-08-23