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CSI - Season 6, Episode 6
#123 Secrets and Flies
- 邦題:「神の子」
- 脚本:Josh Berman
- 監督:Terrence O'Hara
- 初回放映:2005-11-03
'Cause dead flies tell no lies.
事件概要
クリスティーナ・アダリアン殺害事件
グリッソムを除くCSI全員とブラス警部担当。シングルマザーのクリスティーナが、10ヶ月の息子を残して拳銃で頭を撃って死亡。遊びに来た姉(妹)が発見した。手に拳銃を握り、傷は至近距離から。冷蔵庫には母乳のストックがあり、テーブルには「ジョーイにとって私はいないほうが良い」という遺書が残されていた。自殺と思われたが、拳銃には飛沫血痕があるのに手にはない。誰かが撃った後、手に銃を握らせたのだ。キッチンの扉には、へらでこじ開けた形跡もあった。
クリスティーナは未婚で、エヴァンという恋人がいたが彼は父親ではなかった。検死の結果、クリスティーナは未婚どころか処女であることが判明。キッチンの扉をこじ開けたのはエヴァンだったが、それは子どもを中に置いたまま閉め出されてしまったクリスティーナに頼まれて開けたのだった。
銃を購入したのは弁護士のマクウェインで、彼はそれを事務所の補助職員リタ・デイに譲渡していた(拳銃は持ち主を変えても再登録は不要)。リタはそれをポーカーゲームに負けて取られたという。相手は両目の間に大きなほくろのある男という以外、氏名も何もわからなかった。
赤ん坊のジョーイは、クリスティーナともエヴァンとも血縁関係はなかった。クリスティーナは「プロジェクト・サンフラワー」という団体に登録し、受精卵の移植を受けたのだ。その団体は、試験管であっても受胎した瞬間に生命は誕生するという考えのもと、余った受精卵を冷凍保存して、受け入れる女性が現れた時にそれを移植していたのだった。
ジョーイの遺伝的な両親はケンリー&ダン・ジョンソン夫妻。クリスティーナはそれを知っており、しかも自分が死んだらジョンソン夫妻がジョーイの後見人になることを遺言に残していた。ジョンソン夫妻は人工授精を試みていたが、何度も着床に失敗して断念し、残った受精卵はサンフラワーに託した。ダンはその後ひき逃げにあい死亡。ケンリーと母親のサンドラ・ウォーキーは毎月何度かジョーイを訪ね、クリスティーナの遺言のことも知っていたという。
ケンリーの衣服からは発射残渣が検出されたが、それは母サンドラの衣服から移った物だった。サンドラは娘のケンリーがジョーイの養育権を得られるようにするために、クリスティーナを殺害したのだった。銃を突きつけて遺書を書かせ、射殺して手に銃を握らせた。その銃は、両目の間にほくろのある男――サンドラの亡夫がポーカーゲームで得たものだった。
ジョアンナ・ウィットソン殺害事件
保安官代理マッキーンが名付け親になったジョアンナ・ウィットソンが殺害され、プレストン・ブレックマンが逮捕されて起訴されていた。弁護人は昆虫学者マーク・セイヤーを雇い、遺体についた虫から死亡時刻を推測するよう依頼する。セイヤーはブタの死骸を使って再現実験を行い、ジョアンナが殺害されたのは発見の15日前、すなわち11月1日であるという結果を導いた。ブレックマンは11月3日までメキシコにいたので犯行は不可能ということになる。
弁護側はその実験経過を記録したビデオを再生しようとするが、前もってビデオのコピーを提出していなかったため検事は異議を唱え、休廷となる。グリッソムは次に法廷が開かれるまでにビデオの内容を分析することになった。
それまでの実験結果からは、どう考えても発見は死後11日、それより長いという結論は導き出せない。グリッソムがそれを証言することもできるが、ビデオの証拠は陪審員に対してはるかに強力に影響するはず。11日かければ実験できるが、それも無理だ。アーチーはビデオを分析するが、映像に細工した形跡はまったく見つからなかった。ヘンリー・アンドリュースはラボで「証拠品」の幼虫をミキサーにかけて分析。
証拠品のビデオは法廷で上映された。グリッソムはその後、検察側の証人として出廷し、実験に使用されたブタから採取した幼虫から殺虫剤が検出されたことを証言する。ブタに殺虫剤が塗布されたため虫が卵を産み付けるのが遅くなり、4日分の誤差が生じたのだった。セイヤーは偽証罪で逮捕される。
感想
虫だ! スーツだ! 法廷だ! わーいやはりCSIはこうでなければ! もう主任の事件がメインプロットでも良かったのに!
CSIの脚本家は、マディソン・リー・ゴフの『法医学昆虫学者の事件簿』(単行本『死体につく虫が犯人を告げる』を文庫化に当たり改題、下記参照)をネタ本にしているらしい。今回の脚本を担当した Josh Berman も、“Crime Scene Investigation Companion” の中でそう語っているが、ゴフの本を読んでいると「あ、これ知ってる」と思うことがいくつかある。マラチオン(殺虫剤)の摂取によってウジの繁殖が遅れたという話もちゃんと載っていた(別に証拠を捏造した話じゃないけど)。昆虫によって得られる結論は「死後経過時間の推定ではなく、昆虫が死体の上で活動した時間の推定なのだ」(単行本 p.84)というゴフの記述が思い出される。
証言台に立つ主任が、あくまで冷静に、例のソフトな口調で淡々と説明する場面が説得力を増していると思う。いいな~この場面。
メインプロットの方は、いきなり受胎のCGから始まって「何事?」と思ったら……。あの赤ちゃん、ママが射殺されるところを目撃してしまったのね。3歳未満の記憶は残らないというけれど、「母親としての動機を持つ」加害者ならば、せめて別室に連れて行くくらいはしてほしかった。また、いまいちストーリーに「乗れなかった」のが残念。捜査官が Pro-choice でも Pro-life でもいいんだけど、現場でいきなり論争を始めないでほしい。聞き込みに来たんだから、さっさと用件に入ればいいのに(サラが冷静で良かった)。それに、(特に女性が)何か主張すると、すぐに個人的な体験に結び付けられてしまうのもいささかうんざりする。
でもマクウェイン弁護士が登場した時はちょっと笑ってしまった。中の人がマイアミに再登場したのを見たばかりだったので……何もそんなに連続して出演しなくても。