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CSI - Season 8, Episode 7
#172 Goodbye & Good Luck
- 邦題:「ラスベガスに別れのキスを」
- 脚本:Allen MacDonald, Naren Shankar
- 原案:Sarah Goldfinger, Allen MacDonald
- 監督:Kenneth Fink
- 初回放映:2007-11-15
事件概要
キム・ヒメネス
サラ、ロニー担当。隣人からの通報で出かけて行くが、ヒメネス家には血痕が残るだけで住人がいない。そこへ妻のキムが帰宅するが、彼女の背中にはナイフが刺さったまま。その後夫アダムが帰宅し、警官の姿を見てキムにつかみかかろうとする。ロニーはキムの身を案ずるが、サラは諦めきった様子で「私たちの出番が来るのは、この後キムかアダムか、あるいは双方が死体になった時だけ」と言う。
キーラ・デリンジャー
西ラスベガス大学の学生キーラ・デリンジャーが、寮の窓から転落死する。背中に窓枠で引っかいた傷があったことから、自殺ではなく誰かに落とされたものと思われた。
部屋に落ちていた潤滑ローションと窓枠の指紋を調べると、マーロン・ウェストに一致。マーロンは、高校生だった頃に同級生殺害の容疑で逮捕されたものの、公判で妹のハンナがそれまでの証拠を覆して結局無罪になったことがあった(シーズン6「IQ177」)。今回もマーロンが関わっていると知り、以前に担当したサラが捜査への参加を希望する。
ウェスト兄妹の両親は前年に交通事故で死亡。IQ177の天才少女ハンナは、その後東部の大学に進んだが、現在はベガスに戻り、西ラスベガス大の大学院に在籍している。マーロンはキーラをめぐってジョーダンという男子学生と争ったことがあるとわかる。そのジョーダンは、交通事故を起こして病院に入院中。血液検査の結果、ジョーダンとキーラの両方からGHB(デートレイプ用のドラッグ)が検出される。GHBは潤滑剤の中に入れられており、セックスの際に2人ともが摂取したと考えられた。
キーラの手の傷からは人間の歯が発見され、マーロンの物と判明。キーラがマーロンともみ合って彼を殴ったと思われたが、よく調べてみると、殴った時に刺さったとすると位置が不自然。さらに、キーラをめぐってマーロンとジョーダンがケンカした場面を映していたビデオを見てみると、ケンカの後にハンナが現場で何かを拾っている所が映っていた。ハンナが落ちた歯を拾ってキーラの手に仕込み、彼女を殺害してマーロンに罪を着せようとしたという可能性が生じる。
サラはハンナを取り調べるが全面否定。逆に、模型殺人事件の話を持ち出してサラを動揺させる。ハンナの自供を諦めたサラがマーロンに事情を聞くと、マーロンは「ハンナの協力を得てGHBをローションに入れた」ことは認めたものの、殺害は否定。マーロンは両親が死亡して以来、ハンナが自分の生活に過度に干渉してくることに悩んでおり、キーラとの恋人関係もハンナに邪魔されて破綻したのだと言う。GHBは単なる仕返しだったという。
サラはマーロンの承諾を得て盗聴器を仕込み、留置場へ面会に来たハンナの会話をモニターする。なぜこんなことをするのか、という問いにハンナはただ「兄さんを愛しているから」とだけ答え、決定的なことは何も言わずに帰って行く。
ハンナがマーロンを愛するがゆえに支配欲を強め、間に割り込んできたキーラを殺害し、マーロンを独占するため彼に罪を着せて刑務所に閉じ込めようとした――というストーリーが浮かぶものの、証拠はマーロンの犯行を示唆する指紋や歯の欠片ばかりでハンナの犯行は立証できそうにない。絶望したマーロンは、留置場で首を吊って自殺する。
翌日、いつものように自信たっぷりでサラに会ったハンナは、マーロンが死んだことを知り泣き崩れる。「マーロンは大学に進学して自分の世界を広げたけれど、あなたは相変わらずフリークのままよ」と言ったサラは、ロッカーで自分のベストから名札を外し、グリッソムに別れの手紙だけを置いてラボを去って行くのだった――。
感想
サラの降板さよならエピソード。今回の感想は基本的に文句だけなので、そのつもりでどうぞ。
4話でプロポーズにOKしたと思ったら次の話から途端に暗い顔を見せ始めたので、降板エピは「燃え尽き」でいくのかな、と思っていたら案の定。サラを燃え尽きさせる「敵」として「IQ177」のハンナという人選は悪くないと思うが、どちらかというとサラの両親の話を(最後の手紙だけじゃなくストーリーとして)出してほしかったかな。あれが中途半端なままになっていることで、結局最後まで「思いつきで設定を後付けしてキャラ萌えして、そこで満足したら後はポイ捨て」という印象が拭えなかった。プロポーズも「ちょっとぎこちないけど微笑ましい、マスクごしのキス」というあの画が欲しかっただけ? みたいな。
もともとサラの描写には、初期シーズンに見られたタフなSuper!Saraと、シーズン5あたりから増え始めた、暗い過去を背負ったAngst!Saraという2つの流れがあって、その両者があまり調和していない印象があった。殺人模型事件でナタリーの罠をはねのけた時は、久々にSuper!Sara復活か? と思ったし、主任と婚約してハッピー♪なサラもその延長線上にあったと思う。でも、その後でいきなりまたAngst!Saraに戻っちゃったんだよね……。無論、この両者は決して両立しないものではなく、ひとりの人間が併せ持つ両面として描いていくことは十分に可能だっただろう。描ききれない部分は視聴者の方から歩み寄って解釈する余地を持たせることもできたと思う。
ただここ一連のエピソードは残念ながら私にとって、そこまで歩み寄らせるだけの牽引力は持っていなかった。キャラやストーリー面より、「過去は暗くなければならない」とか「職場(番組)を去ることを肯定的に描いてはいけない」とか、そういうシバリでもあるの? という楽屋裏事情が気になったくらい。何せサバティカル休暇を取るだけでも、いちいち燃え尽きてないといけない風だったから。ラボを吹っ飛ばしたその足で休暇旅行に行っちゃうどこかの主任を少し見習ってはどうか。
事件の方も、天才少女の策略に対抗するCSIとしては、いささか物足りない。かつての仇敵とはいえマーロンのために「合理的な疑い」を提示してやろう、みたいな気概を見せようとは思わないのかね。どうせ辞職するなら、弁護側の証人になるためとかさ。そもそも、留置していた被疑者を自殺させるなんて、警察としてあるまじき失態だし、それも今回初めてではないはずだ(シーズン2あたりで一度あったよね)。警察は管理責任を問われるだろうし、ハンナに対するあのような物言いは大いに疑問に思う。マーロンの唯一の肉親であるハンナは、警察か市を訴えることもできるのでは……外から見れば、サラは責任追及を逃れて辞職したように見えなくもない。
ただし、サラは降板してそれっきりというわけではなく、この後何度もゲスト出演があるので、今のところは次シーズン以降に期待――ということで。ひとまずお疲れ様! いろいろ言ったけど元気でね。