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csi:s09:195_deep_fried_and_minty_fresh

CSI - Season 9, Episode 13

#195 Deep Fried and Minty Fresh

  • 邦題:「さわやかな凶器」
  • 脚本:Corinne Marrinan, Sarah Goldfinger
  • 監督:Alec Smight
  • 初回放映:2009-02-12

事件概要

ボブ・グラハム、ゲイリー・コムストック

ニック、ライリー、ラングストン、ブラス警部担当。「チュージーズ・チキン」の店でマスコットのチキンが倒れてガラスが割れ、巡回中の警官が立ち寄ったところ、厨房で男性の遺体を発見。地域マネージャーのボブ・グラハムであった。厨房にはボブ以外の男性の着替えや荷物が置かれており、従業員の誰かが店に寝泊りしていたものと思われた。床には油と滴下血痕。形状を観察すると、油の跡は店の中から外へ、血痕は逆に外から中への移動を示していた。

チキンのマスコットを倒したのは、西ラスベガス大学の学生とわかるが、その学生はマスコット人形を盗もうと思っただけで、誰の姿も見なかったと主張する。

従業員全員が集められて指紋とDNAを提供するが、所在不明の店員が2名。ゲイリー・コムストックは薬物所持の前歴があり、厨房で寝泊りしていたのはこのゲイリーと思われた。エリザベス・マーティンは事件前に売上金をまとめていた。だが店に残っていた現金の額と伝票のメモを比べると、200ドル不足している。

カウンターには巨大な掌紋が残っていたが、指紋は店員の誰とも一致せず。マンディは「滑る床に注意」という警告板に、誰かを殴るような持ち方を思わせる指紋を発見する。

ラングストンは、店の外に出してある廃油のドラム缶が、チュージーズではなく中華レストランの物であることに気づく。そのレストランでは、何度もドラム缶を盗まれているという。監視カメラの映像で確認したところ、確かにドラム缶は夜のうちに車で持ち去られていた。

車のライセンスプレートから持ち主を探したところ、ドラム缶を持ち去っていたのはティモシー・ランドという人物であることが判明。ティモシーは、廃油を捨てるより「バイオディーゼルを精製してリサイクルすべき」という主張で廃油を「回収」していたという。前日にチュージーズから持ってきた未処理の缶を開けてみると、そこには男性の遺体が入っていた。身元は、行方不明のゲイリーと確認される。フライヤーに頭をつっこまれ、熱い油を吸い込んだため窒息死したものと思われた。

また、フライヤーからはボブの眼鏡と180ドル分の紙幣が発見される。その180ドルと、ボブのポケットにあった20ドルを合わせると200ドルで、店から消えた売上金と同額になる。

ニックたちは再び現場へ戻り、状況の再現を試みる。ボブとゲイリーは厨房で争い、ボブがゲイリーの頭をフライヤーの油に突っ込み、そこで眼鏡と札束を落としたのではないかと思われた。身元不明だった掌紋は実はボブの物で、強い力がかかったために隆線と溝が反転した「逆指紋」になっていたために気づかなかったのだ。そしてボブはゲイリーの遺体をドラム缶に詰め、再び店内へ戻る。ではボブ殺しの犯人は誰なのか。

その後、所在不明だったエリザベスの居場所が判明。彼女は本名をロサ・ゴンザレスといい、不法入国の容疑で入国管理局に拘束されていたのだった。エリザベスは、ボブから「売上金が足りない。身体検査をする」と脅されて服を脱がされたことを認める。そこへゲイリーが入って来て争いになり、彼女がボブを警告板で殴ったという。

エリザベスはボブを殺したと思って逃げたが、彼女の一撃は死因ではない。エリザベスが逃げた後、ボブはゲイリーと再び争って彼を殺害していたのだ。

ラングストンは、ボブの死は事故ではないかと思いつく。ボブはすでに頭を殴られており、その後眼鏡を落としていた。加えて床は滑りやすい状態だったので、ボブが足を滑らせて転倒し、床で頭を強打したとしてもおかしくない。

メリンダ・タッカー

キャサリン、グレッグ、ヴァルタン刑事担当。不動産仲介業者のメリンダ・タッカーが自宅でベッドに手錠でつながれたまま死亡。当時自宅には夫のスコットがいたが、泥酔しており「何も覚えていない」と主張する。

メリンダの胃には、チューブ2本分の練り歯磨きが入っていた。フッ素入りの歯磨きを大量に摂取したための中毒死と思われる。また、毒物検査により抗ヒスタミン剤も検出される。これは催眠とともに嘔吐を抑える効果があるため、メリンダは歯磨きを吐き出せず死に至ったのだ。

自宅のゴミ箱からは空になった歯磨きのチューブが発見されるが、調べてみるとメリンダが飲み込んだ歯磨きは成分が異なることがわかる。そこで改めて捜索したグレッグは、隣家のゴミ箱から手袋と別の空チューブ、薬のパッケージなどを発見。だが、その手袋の内側に残っていた上皮細胞は、スコットではなくメリンダ自身のものだった。

メリンダとスコットは夫婦で不動産の仕事を分担していたが、サブプライム問題で仕事は行き詰まり、そのうえローンの焦げ付きで家を奪われた顧客たちに恨まれて、散々な目にあったという。スコットは、メリンダが顧客たちと親しく付き合いすぎたせいだと妻を非難し、夫婦仲は険悪になっていた。メリンダは「夫が自分を殺した」と疑われるような状況を偽装して自殺したのだった。


感想

さわやかな凶器っていったい何よ? と思ったら、練り歯磨きかい!:-o

胃の中から大量の練り歯磨きが検出され、教授が一言「さわやかだ~」。何も、そんなに力強くタイトルメッセージを言わなくても。

こんな物でも大量に摂取すれば命取り。食べ物ではないとはいえ、普通に口に入れる物なのであまり意識していなかったが、「自然界にあるものはすべて毒になりうる」というホレイショの台詞を思い出す。初期シーズンでまだ鑑識をやっていた頃(爆)の……。

歯磨き事件では、メリンダ&スコットに「あからさまなモデルがいる」として、放送後に脚本家のサラ・ゴールドフィンガーとCBSが不動産業を営むメリンダ&スコット・タムキン夫妻から訴えられていた。

訴えた理由はこのエピの「メリンダ&スコット」が現実の2人に似すぎていること。最初の脚本では名前も「タムキン」で(撮影直前に変更)、役者も2人に似ている人がキャスティングされたらしい。以前にゴールドフィンガーが2人の仲介で自宅を購入しようとしたものの、途中で取引を白紙に戻したという経緯があったらしいが、これは2005年でエピソード放映より3年も前のことだ。

この訴訟事件、その後どうなったのかと検索してみると、2011年の3月に訴えが退けられていたようだ。CBS側はカリフォルニア州のanti-SLAPP法1)に基づき事件の棄却を申し立てていた。一審ではCBS側の主張が退けられたものの、控訴審ではCBSが逆転勝利。カリフォルニア州にはこの上に最高裁があるが、タムキン氏側は上告できるのだろうか。でも3ヶ月経った現在続報がないということは、これで確定したと見て良いのか?

タムキン氏側は「撮影直前に名前を変えたのは訴訟を避けるための小細工」と主張していたが、ゴールドフィンガー氏は「脚本家が草稿に実名を使うのはよくあること」と反論。夫婦で不動産業を営んでいるケースはタムキン夫妻しか知らなかったので、覚えやすいように2人の実名を使っただけで、後から変更される予定だった、とのこと。ただ、その草稿時点での名前が「スコット:大酒のみでポルノ好き、メリンダ:変態プレイ中に死亡?」みたいな形でキャスティング用の資料に記載され、それがスポイラーサイトにリークされてネットに出回ってしまった。

しかし高裁の判断は「キャスティング資料を読んでTVエピソードを見ても、理性的な人間はそこに描かれた架空の人物が原告であるとは思わない」というもの。キャスティング資料を見て「これってあの2人じゃないの?」と疑ったとしても、実際のエピソードに描かれた共通点は「確実にあの2人だ」という証拠としては弱い。

当時、タムキン夫妻が訴えたのは売名行為ではないか、とか、和解に持ち込んで大金をせしめるつもりではないか、とか言われていたような気がするが、Webサイトで名前も顔も公開して商売している身には、視聴率の高い人気番組でこういうことをされるのは迷惑かもしれないな、とも思っていた。劇中の2人の素行だけでなく「顧客と友達づきあいの度が過ぎて、怒りの捌け口にされた」というスコットの台詞などは特に。でも、こうして見ると問題だったのはエピソードよりも、本名が明示されているキャスティング資料がネットに流出したことの方だったのかもしれない。Ripped from the headlines のエピソードなんてドラマの世界には腐るほどあるし。

まぁ、タムキン氏もまだ仕事を続けているようだし、キャスティング資料なんていうのも、「スポイラー」として価値がある期間は限られているので、放っておけばすぐに消えただろうし、そんなに実害があったというわけでもなさそう。でもそれはそれとして、草稿に実名を使う習慣って(本当だとしたら)ちょっとイヤかも。

そんなこんなで、肝心のストーリーが何だかどうでも良くなってしまった。白状すると、わざわざ別の歯磨きチューブを用意して錠剤のカラと一緒に隣に捨てた理由が理解できていなかったりする。スコットはどうせ泥酔していたのだから、歯磨きを飲んだ後、そのチューブに彼の指紋を付けて捨てておいても良かったような気がするのだけど(隠す必要があったのは手袋ぐらいか)。ま、いっか。

それからもう片方、Deep Fried 事件の方は、関係者を一巡して誰も犯人じゃなかったわ、というところで「事故」という結論でおしまい。捜査が二転三転したわりに結論があっさりすぎる感はあるけど、ラングストン教授のキャラでけっこう面白く仕上がっていた。中国語に堪能なところを見せて「以前に論文を書いた時に文献がほとんど中国語でね」と、サラッと言ってくれちゃいましたよ。教授のおかげで科学捜査の基礎からおさらいするようなエピソードが増えて、この点は確かに面白くなって良かったのだが、この人はこんな所で新人CSIなどさせておいて良いのだろうか。

Yoko (yoko221b) 2011-06-15

1)
SLAPはStrategic Lawsuit Against Public Participationの略。それに対するアンチということで、恫喝的な訴訟から表現の自由を守るための法律。
csi/s09/195_deep_fried_and_minty_fresh.txt · Last modified: 2020-04-09 by Yoko