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CSI - Season 11, Episode 8
#237 Fracked
- 邦題:「冒された町」
- 脚本:Bradley Thompson, David Weddle
- 監督:Martha Coolidge
- 初回放映:2010-11-11
事件概要
ウォルター・バーンズ、リチャード・アダムス
郊外の硫黄温泉で男性の遺体が発見される。死因は溺死だが、声帯内に残っていた水は温泉の物ではなく、別の場所で殺されて遺棄されたものと思われた。被害者の身体には前癌病変が多数発見される。身元は、ケーブルスプリングスで牧場を経営するウォルター・バーンズ。通話記録を調べると、ケーブルスプリングスの地元新聞を発行しているロザリンド・ジョンソンと何度も話していることがわかる。
その後、フリーモント付近で血の付いた車が発見され、カーナビの履歴から、その車がバーンズの牧場に何度も行っていたことがわかる。持ち主は「コンサーヴォ・ソリューション」という天然ガス会社に勤務する検査技師、リチャード・アダムス。カーナビの履歴をたどり、悪名高い売春地帯のゴミ捨て場で、アダムスの遺体を発見する。アダムスの携帯電話を調べると、最後に話したのはロザリンド・ジョンソンだった。
コンサーヴォはケーブルスプリングスでガスの掘削をしており、アダムスの仕事は周囲の牧場などの安全確認。アダムスの妻は「会社の仕事については、守秘契約があるので話せない」と口が重い。突っ込んで聞いてみると、数日前、玄関に死んだヤギの頭部が置かれていたという。そのヤギを回収して調べてみると、やはり同じような前癌病変が見られた。
アダムスの携帯電話には、その同じヤギの写真が残されていた。撮影場所は、バーンズの牧場の近くで、ギブソンという男性が経営する牧場。現地へ行ってみると、そこはガス掘削現場の目の前。いきなり銃声が響き、CSIたちは驚くが、それはギブソンが牧場の最後のヤギを撃った音だった。ギブソンは「井戸水が汚染されて妻は病死した。ヤギも病気だったので楽にしてやった」とコンサーヴォへの恨みを切々と語る。コンサーヴォから受け取った採掘権料は妻の治療代で消えた。バーンズの妻も同じ病気で死亡。周辺住民にも病人が大勢いる。水道局にも市長にも訴えたが、誰も何もしなかった。そしてバーンズは、コンサーヴォが病気の原因である証拠を掴むと言っていたらしい。ラングストンが「何が起きているのか知りたいだけだ」と言うと、ギブソンは「では見せてやる」と、火の付いたタバコを井戸に投げ込み、井戸は大爆発を起こす。
ギブソンは全身に重度の火傷を負い、死亡。ラングストンが水道の水に火を近づけると、水は燃え上がった。これは水にメタンが含まれているためと思われた。さらにその水からは薬品臭もする。メタンは無味無臭なので、別の汚染物質が混入していることになる。
ラングストンは、ジョンソンからヒントを得て「フラッキング」について調べる。フラッキングとはガス採掘に使用される水圧破砕法 (Hydraulic fracturing) のこと。地中に深く穴を掘り、水・砂・化学物質を注入して爆発を起こし、ガスを放出させる手法だ。コンサーヴォが環境基準を無視したため、注入された化学物質が地下水の層に浸入して井戸水を汚染していると思われた。エクリーはコンサーヴォへの捜索令状に難色を示すが、バーンズの遺体発見現場で発見されたエンジンオイルは、コンサーヴォの事業用トラックの物である可能性が高いため、結局令状が発行される。
グレッグは現場で血痕が付着したトラックを発見。車内には拳銃も置いてあったが、運悪く運転手のコーディ・トリンブルはひき逃げされて死亡していた。トラックを調べてみると、タイヤのバルブを緩めた形跡があった。ひき逃げ犯は、トリンブルがタイヤを調べるために車から降りるよう仕向け、そこを狙ってひき殺したものと思われた。調べた結果、拳銃はアダムスを殺害した凶器と判明。銃に付着した毛髪はバーンズの物だった。これで2件の殺人事件は解決したが、トリンブルが死亡したため、動機などの背景事情はわからないまま――つまりコンサーヴォをこれ以上追及することはできないことになる。
感想
環境問題を扱った作品は、シーズン8の「怖い水」以来だろうか。今回も水の汚染が問題となる話。ガス掘削のために行う「フラッキング」は実際に問題になっているらしい。アメリカのエネルギー事情について、ちょっと勉強してみようかなと思って、図書館から本を借りてみたものの、忙しくて読めないまま返却期限が近付きつつある。
ラングストンがフラッキング(fracking)のことを「SF用語のようだ」と言っているのは、「バトルスター・ギャラクティカ」で同じ言葉が使われているから、らしい。今回の脚本家は「ギャラクティカ」からの移籍組で、刑事役のケイティ・サッコフもそのシリーズにレギュラー出演していたので、楽屋オチ的なジョークと言えるだろう。エクリーが「エリン・ブロコビッチ」に言及したのも、キャサリン役のヘルゲンバーガーが同名の映画に出演していたことを踏まえている。私なんかは「フラック」と言われるとNYPDのドン・フラックを連想するわ。あちらはDon Flackだけど、日本人なのでRとLは区別できないの。
新聞記者のロザリンド・ジョンソン。彼女の責任ではないが「ロザリンド」といえば、むかし『聖ロザリンド』という怖~いマンガがあって……どうしてもそのイメージが喚起されてしまって困る。
……と、色々な点で本来の事件以外のところが印象に残ってしまったエピソード。本来の事件って、結局は中途半端なところで幕引きだしね。2人を殺害した実行犯は口封じに殺されてしまい、ここで捜査終了。実行犯をひき逃げした犯人は、捕まったとしても「事故だ」と言い張るのは目に見えている。きっとその犯人が「事故」の責任をかぶることで、家族は生活や将来を保証されるのだろう。これがLaw & Orderだったら、ひき逃げ犯と取り引きして、企業ぐるみの犯罪を証言させようとするところだろうが、そこまでいくと、もうCSIの仕事ではないし。