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CSI - Season 12, Episode 20
#271 Altered Stakes
- 邦題:「殺しの衝動」
- 脚本:Elizabeth Devine
- 原案:Melissa R. Byer, Treena Hancock
- 監督:David Semel
- 初回放映:2012-04-11
事件概要
ロバート・ジェームズ
不祥事を起こして死亡したベガ刑事が担当した事件が再審されることになる。
それは7年前に大学生のロバート・ジェームズが撲殺された事件で、目撃証言からカール・ボウデンが逮捕されて有罪になっていた。ボウデンは犯行を認めた後、遺体の遺棄現場を自供しており、有罪が明らかだったので取引に応じて収監された。だが、ボウデンが今になってその自供が「暴力で強要されたもの」であると言い出したのだ。
当時ベガとともに事件を担当したのはニック。取り調べは数時間におよび、途中で録音テープを補充しに室外へ出て行き、戻って来るとボウデンが唇から血を流していたという。ニックは「ボウデンがつかみかかって来た」というベガの言葉を信じてその件を不問にし、ボウデンはその後に犯行を認めていた。
判事はボウデンの言い分を認め、再審ではボウデンの自供とそこから導かれた証拠がすべて、遺体も含めて排除されてしまう。目撃者はいたがすでに故人。残された物は、犯行現場に落ちていた凶器のブロックなど、わずかなものしかなかった。
ベガ刑事の継子であるモレノ刑事がブラス警部に頼み込み、非公式に捜査に協力することになった。
事件が発覚したのは、路地に血溜りがあるという通報によるもの。ニックは事件当時、溶剤か接着剤のような臭いがしていたことを思い出す。また、ボウデンの車は7年間保管されたままになっているが、その車内にもかすかに同じ臭いが残っていた。ボウデンの車は事件当日、当て逃げされてボロボロになっており、運転できる状態ではなかった。遺体の運搬には別の車を使用したはず。
ボウデンは当時、自動車の修理工場で働いていた。現場に漂っていた臭いは、修理工たちが使う止血スプレーのものだった。雇用主はボウデンを「修理の腕は良いが、怒りっぽくすぐにキレる」と評する。事件当日、工場にあった車のうち、走れる状態だったのは1台のみ、しかもトランクの大きな車種だった。その車を調べたところ、血液が検出されるが、かなり時間が経って劣化しているため、決め手になるほど絞り込めない。
エイプリル・レイノルズ
ニックは念のためにとボウデンのDNAを再度採取し、顔や体に生傷がいくつもあることに気づく。看守や囚人との喧嘩が絶えないようだ。ロバートを殴ったのも、車を当て逃げされた怒りのはけ口を求めたものと思われた。
であれば、他にも事件を起こしているはず――ということで、同様の手口の事件を調べてみたところ、フィンが類似事件を発見。エイプリル・レイノルズという女性が公園で襲われて瀕死の重傷を負った事件で、現場で止血スプレーの臭いがしているなどの特徴が似ているが、この件はすでに解決済み。エイプリルが、親友の夫であるデイヴィッド・ジョーゲンセンが犯人であると明言したのだ。エイプリルを殴ったのは木の枝で、ジョーゲンセンの手にも同じ木のトゲが刺さっていたという証拠もあった。ジョーゲンセンは無実を主張するが有罪となり、現在も収監されている。
しかし改めて証拠を分析してみると、凶器の枝からは止血スプレーの成分が検出され、ジョーゲンセンの手に刺さっていたトゲにはその成分がなかったことがわかる。また犯行当時、ボウデンは現場の近くにおり、その日に仕事をクビになってムシャクシャしていたらしいということもわかる。
実はジョーゲンセンは本当に無実で、真犯人はボウデンではないのか。エイプリル本人は今もジョーゲンセンの犯行を確信していたが、彼女は頭蓋骨を何ヶ所も骨折し、脳に損傷を受けていた。そのため記憶が混乱し、ジョーゲンセンに殴られたと思い込んでいる可能性があった。しかしこれも裏付けのできる話ではない。
グレッグはエイプリルを発見した女性にもう一度話を聞く。彼女はその日、犬を散歩させており「エイプリルを発見した後に犬の具合が悪くなった」という話をする。その犬は何でも飲み込んでしまうという癖があり、その日に飲み込んだのは鍵束。話のネタに保管しているというその鍵束を調べると、ホルダーの内側からエイプリルの血液が発見される。さらに、その鍵のひとつをボウデンの車で試してみたところ、見事エンジンが始動。
検事がジェームズ事件をあきらめたためボウデンは刑務所から釈放されるが、その直後にエイプリルの殺害未遂容疑で再び逮捕されてしまう。
感想
8話「過去から来た処刑人」の後日談。この話のラストで、ベガ刑事が実は悪人だったことが明かされていた。情報屋を殺害し、その罪を逃れていたわけだが、おそらく言い逃れしようのない殺人だったのだろう。スタン・リチャードソンがリストにしていたのは、そんな犯罪者ばかりだった。
そのベガ刑事の継子(奥さんの連れ子)という設定で、シーズン10に1度だけ登場したモレノ刑事が再登場。今は風紀課に異動しているようだ。演じているのがエンリケ・ムルシアーノなので、やはりWaTのダニーに見える。
で、その情報屋殺害の話が出るのかなと思ったら違った。それが誤解でやはりベガは善人だったという話を期待したのだけど……。そうではなく、ベガ刑事が過去に扱った事件が再審を受けることになったという話。これは別に冤罪とかいう話ではなさそう。暴力を振るったことが事実であっても、遺体の遺棄場所という犯人しか知り得ない事実を自供したのだから。
しかしそれは違法収集証拠ということで排除される。事件の直後であれば、使用した車の血痕などから不可避的に発見できたかもしれないが、今となってはそれも難しい。
だから容疑者が自供した場合でも、証拠固めは重要なのだな……とはいうものの、今回の再審がなく、あっても犯行を十分に証明できていればジョーゲンセンは冤罪のままだったわけだけど。何しろ、被害者のエイプリルがあれだけはっきり証言しているのだから。
こういう場合、昔の証拠が奇跡的に保存されているという偶然に頼らざるを得ない。以前も、犯行の凶器が木の幹に刺さり、そのまま木が成長して保存状態良好、という事件があったが、今回もかなり奇跡的な幸運だった。
で、結局ベガ刑事は「元は良い刑事だったが、熱血過ぎて暴力に走ることもあり、それがエスカレートして……」ということなのだろうか。いまいちスッキリしない感じではあるが、これはこれ以上引っ張らない方が良いかな。和気あいあいの野球試合とヘンリーの可愛さで、ちょっと後味が中和された感じ。