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CSI - Season 14, Episode 22
#317 Dead in His Tracks
- 邦題:「警部の決断」
- 脚本:Andrew Dettmann
- 監督:Alec Smight
- 初回放映:2014-05-07
事件概要
ロジャー・マザーズ
郊外の街エリス・スプリングス。線路わきで男性の射殺体が発見される。氏名はロジャー・マザーズ、テキサス在住だが出身はこのエリス・スプリングスだった。地元保安官は、ロジャーは25年前に強盗事件に巻き込まれ、親友の一人を殺されたことがあると語る。
25年前の事件では、ポールとベンのオマリー兄弟がマフィアのボス、スカルノの家から金品を強奪し、その途中でベンが撃たれた。ポールは線路わきの小屋にベンを連れて行き、薬を調達しに行ったらしい。その間に、当時子どもだったロジャー・マザーズとその親友、スコッティ・ゲイツとタイソン・ブリッグスが来て、ベンと盗品の入ったカバンを発見。逃げようとしたところをポールと鉢合わせし、ポールはスコッティを人質として連れ去ったという。
ポールは翌日逮捕されるがスコッティの姿はなく、そのポールも翌朝留置場死亡しているところを発見された。スコッティは湖に沈められでもしたのだろうと思われていた。盗まれた金品の行方もわからず、いまだに「お宝」を探しに来る者が多い。一人生き残ったタイソンは、久しぶりに戻って来たロジャーと会ったことは認めたが「スコッティのことは一言も話さず、金の話ばかりしていた」と言う。
スカルノには美術品泥棒との噂があり、オマリー兄弟が奪った財宝の中には古代オリエントの獅子像があると言われていた。これは本来2体で対になるもので、その片方が先日オークションに出されて高額で落札されていた。ロジャーはそれを知り、もう一体の獅子を探しに来たのだろう。破れた航空写真のようなものを持っていたことも、「お宝」探しに符合する。
その航空写真からは、突起弓状紋という珍しい形状の部分指紋が検出される。25年前の事件の証拠であるスコッティの眼鏡からも同じ特徴を持つ部分指紋が検出されていたため、両方を合わせてみたところ、同一人の指紋らしいと判明。警備員のサム・ビショップで、当時は保安官補だったが、事件の後に解雇されていた。
ビショップの自宅を調べたところ、事件ファイルや証拠品が山のように保管されており、一人で科学捜査を行っていたことがわかる。ビショップは科学捜査に関する優れた知識と技術力を持ち、保安官補として鑑識を行っていたのだ。しかも当時の標準的な鑑識技術を凌駕するほどのレベル。ビショップはスコッティを探したい一心で、気球にカメラとタイマーをセットして独自に航空写真を撮影していた。ビショップはオマリー兄弟と保安官の癒着を知り、強盗事件の背後に保安官がいるのではと疑っていた。解雇されたのも保安官に不利な証拠を見つけたためらしい。
ビショップが提供したネガフィルムを最新の技術で分析した結果、ロジャーが探していた場所が判明する。だがそこへ行ってみると、地面はすでに掘り返されていた。近くには白骨死体と、獅子像が埋められていたような痕跡があった。
骨を調べた結果、スコッティのものと判明。頭蓋骨に損傷を受けた形跡があり、傷の大きさから獅子像で頭部を殴られたことが死因と思われた。
遺棄現場の近くにはシャベルが残されており、付着していたローションを調べた結果、持ち主はビショップの娘カレンと判明。カレンもロジャーたちの幼馴染で、ロジャーに写真を提供して協力したことは認めたものの「場所を突き止めて行ってみたら、お宝はすでに掘り返された後だった」と犯行を否定する。
ビショップはラッセルやフィンとともに頭蓋骨の模型と獅子像のレプリカを作って再現実験を行い、犯人は「身長約150cmで左利き」と判断する。その条件に当てはまるのは、タイソンだった。
本当は25年前、タイソンはベンが死んだのを見て金を持ち逃げしようとした。そして通報するべきだと言ったスコッティと言い争いになり、獅子像で殴ってしまったのだ。しかしその話には続きがあった。タイソンは殴っただけで殺してはいなかったのだ。その時カレンが現れ、車が来ると警告。少年たちは物陰に隠れ、カレンがスコッティのうめき声が聞こえないように鼻と口をふさいだ。そしてポールが走り去った時、スコッティはすでに窒息死していた。
彼らはスコッティの遺体と獅子像を埋め、現金はロジャーの家に隠した。だがその後、ロジャーの家は火災で全焼し、現金も灰になってしまったのだった。
ロジャーとカレンはおそらく、お宝を見つけたものの分け前をめぐって争い、カレンが銃を撃ったのではないか――と思われたが証拠がない。そこへ、父のビショップが拳銃と獅子像を持ってやって来る。ビショップは、カレンが十代の頃にタバコを隠していた場所を知っており、そこで証拠を発見したのだった。
感想
シーズン9以来、久しぶりにクリフハンガーのない落ち着いたシーズンフィナーレになった。邦題が「警部の決断」なのにブラス警部の去就がはっきりしなかった所が気になるけれど……しかし警部はこのエピソードで降板だったはず。エリーのためにこのまま辞職?
事件とは関係ないので上のあらすじには書かなかったが、冒頭のあたりでエリーが自殺を図り、ERに運ばれる場面があった。そこで救急医が「二十代後半」と言っていたが、いやエリーは三十代でしょう。初登場はシーズン2の「いとしきエリー 我が娘」で、それからもう12年以上経っているのだから(演じている女優は替わっているけど)。
幸い命はとりとめ、立ち去ろうとするブラスにエリーが「ここにいて」と呼びかけ、和解の可能性を感じさせる場面で終わっていた。考えてみると、今シーズンはエリーで始まりエリーで終わったようなもの。シーズン2で初登場した時には予想もしなかったなぁ。しかしこの親子はナンシー殺害の事実をどう乗り越えていくのだろう。
事件の方は、これまた久しぶりに「実は子どもが犯人でした」という結末(スコッティ事件の方ね)。事件の捜査に没頭する父、それを見て育つ娘、娘の悪事を見逃せず証拠を提出する父――前シーズンから事件描写に何度も登場した「父と娘」の関係がブラス警部に重なる。だからこの場面では、ビショップの前にいるのがなぜブラス警部じゃないんだろうという気がした。
25年前の事件では、結局兄弟の背後に保安官がいたのか、逮捕されたポールが死亡したのはどういう経緯だったのかという点がちょっと消化不良な感じで終わってしまった。田舎の自宅兼ラボで最先端の科学捜査を行うビショップさんは良いキャラだと思うので、再登場を期待したいところだけど……残念ながらなさそうだ。
フィナーレだからといって変に複雑な事件にしたりメインキャストが命の危険にさらされたりしない、これぐらい「普通の話」が良いのかもしれない。見ている私も淡々と次のシーズンへ移行しよう。