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Riptide
小説版CSI:マイアミ第4弾、著者は前回に続きドン・コルテス。ダイビング中に殺害された女性の無残な遺体が発見される。その後再び殺人事件が発生し、手口から連続殺人と思われた。犯行に使用された水中銃、旧型の車を使って施された奇妙な「演出」、遺体に残る動物の物らしき噛み跡、以前に発生していた暴行事件の証言などから、加害者の特異な性癖が浮かび上がる。
書誌情報
Riptide
- 著者:Donn Cortez
- 発行:2006-07-25
- ISBN:978-0743480581
CSI:マイアミ 水中の悪魔
内容・感想
うーん、結構ややこしくて読むのが大変だった。
とにかく登場人物が多すぎ! イルカの研究者から始まって、過激な環境保全団体、旧ソヴィエト海軍のイルカ担当士官、ラテックス大好きなフェティッシュな人々、昔の特撮映画のマニアな人々――と、関係者が次々に登場して、いったいこの事件の加害者は何にこだわっているんだ!? という所で何だか混乱してしまった。最後の方でやっと加害者の正体がわかるのだが、そこで名前が出てきても「これ誰だっけ?」状態。
だが、そこへ至るまでの地道な科学捜査の描写は相変わらず緻密だ。ほんの小さなラテックスの欠片からフェティッシュ・クラブに行き着く所もすごいし、クラブに聞き込みに行くカリーの姿も何だかハマりすぎ。それはいいのだが、そのラテックスから何をどう特定できるのか、という特性に関する薀蓄が結構すごかった。何か証拠があがるたびに科学捜査や分析に関する語りがえんえん入るというのが、コルテスの個性なのだろうか。でも、もうちょっとシンプルに易しく書いてもらえるとありがたい……
ニコール・ジェンコ博士のキャラは印象が強くて魅力的だと思う。しかし旧ソヴィエト海軍出身のロシア人(いや、名前からするとウクライナ人か?)で海が大好きという設定なのに、デルコとの接触がなく、彼の特技が生かされなかったのがちょっと残念。デルコが活躍するとホレイショが博士とからめないからかな?
ライアン・ウルフの服装の描写も面白い。彼のファッション・センスは世界的にチェック対象なのだろうか。ウルフは「geekの常として服装には関心を持たなかった」が、ホレイショを師と仰ぎ、その手法を真似ようとするあまり服装まで同じような、オープンカラーのシャツと上着という組み合わせになってしまったのだそうだ。それにしても小説版のウルフは真面目に仕事する奴なんだな……有名な特撮ホラー映画を一人だけ知らなくて戸惑ったりしていたが、そういうセンスのずれっぷりも何だか可愛い。
犯人がわかった後の展開では、派手な突入シーンこそなかったが、犯人の隠れ家でホレイショが汗をかいていることに「おおっ」と驚く。ホレイショは南国マイアミでもスーツで決めて、汗ひとつかかず日焼けもせず――というイメージが定着していたので。しかし、何しろ犯人は水棲動物になりきっているので、隠れ家の湿度の高さもただごとではないのだ。さすがにホレイショの額にも玉のような汗が浮かび、それが頬骨から顎へと滴り落ちていくわけですよ!(興)しかもその後ラストではホレイショの手錠プレイまで!(奮)
科学捜査の薀蓄はほとんど頭に残っていないが、満足感が残った小説だった。あーもっと読みたい。
— Yoko (yoko221b) 2006-10-23