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CSI: Miami - Season 3, Episode 9
#57 Pirated
- 邦題:「危険な集団」
- 脚本:Michael Ostrowski, Steven Maeda
- 監督:Duane Clark
- 初回放映:2004-11-22
One animal at a time.
事件概要
漁船アイリーン乗組員殺害/ロベルト・ロペス店舗襲撃事件
潜水中のカップルが、手首を縛られてつながれた5名の水死体を発見。続いてもう1人の遺体が発見され、総勢6名になった。服装から6名とも船員で、死後少なくとも5~6日は経過し、生きたまま海に投げ込まれたと思われた。
遺体の絆創膏からクロマグロのウロコが発見されたため、クロマグロ漁をしている漁船を探すと、「アイリーン」という船が出航したまま戻っていないことがわかる。船主オーウェン・ハレルは、アイリーン号からの連絡が途絶えても、漁師としての仕事に不利になるからと報告していなかった。アイリーンの乗組員が9名と聞き、ホレイショは沿岸警備隊に捜索を手配する。
潮流のシミュレーションからおおよその位置を割り出し、捜索に向かうと、ゴムボートに乗った3人が発見された。1名はすでに死亡、2名は衰弱していたが助かった。彼らは船員ではなくマイアミ大の学生。ボートには、オリーブグリーンの塗料の痕跡があったが、それは外国の軍隊で武器ケースを塗装するために使用している塗料だった。
デルコは海賊が船を乗っ取って塗装し直しただろうと推測して、大量の塗料を購入した者を調べ、黒く塗装された(元)アイリーン号を発見。SWATを動員して船を取り囲むが、そこを何者かがロケット・ランチャーで攻撃、銃撃戦に。船の中には、オリーブグリーンに塗装され「…ино низкой」とキリル文字で書かれたRPG-7ランチャーのその船倉には、他にもケースをいくつか保管していたらしい形跡があった。
銃撃現場にはロケットランチャーが置き去られていた。せっかく入手した武器を置いて行ったのは、撃った者が武器の扱いに不慣れで、反動で顔に怪我をしたためだった。救急病院を調べ、目の周囲に怪我をしたダリル・モーガンを発見。ダリルは「自分は憲法上保証された権利を放棄しない」「弁護士の同席なしではいかなる質問にも答えない」云々と書かれたカードを持っていた。武器の携帯は憲法の第2修正条項で定められた権利であると主張し、イェリーナに対して人種差別的な態度を取る。
ヒスパニック系住民の居住地域で、ロケットランチャーを使った襲撃事件が発生。オーナーのロペスが負傷した。現場にはダリルと同じように目の周囲に痣をつくり、同じように自分の権利を主張するカードを持った男がいた。その周囲には車のガラスの破片。ランチャーを撃った時に、反動で後方へ抜けた爆風がガラスを砕いたのだ。ガラスには紙片が付着していた。
その紙は、中古車の窓に添付される書類で、車両の識別番号が部分的に読み取れた。ダリル・モーガンの父親ウェスリーは中古車のディーラー。店にある車を1台ずつ調べると、うち1台でニトログリセリンの反応があった。ウェスリーの鼻孔からは、使用されたRPG-7と一致するニトログリセリンと硫黄が検出された。ウェスリーは「この流れは止められない」と言うが、ホレイショとデルコは「一人ずつ追い詰める」「我々は決してあきらめない(We never close)」と言い放つ。
チップ・マニング殺害事件
ボートで救助された学生のうち、アダムとブライアンは生存、チップはすでに死亡していた。チップの足には、人間の歯で噛みちぎった跡があった。アダムの胃からは、チップのDNAが検出される。アダムは、チップが衰弱死したので、生きるために他に方法がなく食べたと認めたが、カリーはチップの死因に疑いを抱く。
チップは脱水症で死亡したが、その原因は、塩分を大量に摂取したことだった。カリーとウルフはカップの指紋から、アダムがチップに海水を飲ませて死に至らしめたと確信するが、殺人で起訴するだけの根拠はなかった。
だがウルフは、ブライアンの供述から別の点に気づく。彼らは夜中、暗闇の中でボートに乗った。事件の夜は新月なので、明かりを持っていなかったアダムに「海賊が近づいて来るのが見えた」というのは無理がある。彼らは海賊に協力し、報酬を得ていた。金を払ったのはウェスリー・モーガンだった。
感想
2つの一見無関係な事件が結びついていく様子は面白かったのだが、船主と学生の役割で、ちょっとすっきりしない点が残った。船主は最後の方で逮捕されていたが、この人は武器を密輸しただけかな? 船主が仲間なら、アイリーン号をハイジャックして塗装し直したりする必要はないよね……。
あの船主が武器を運んでいることを知り、学生が手引きして、過激な人種差別グループが武器を強奪して店を襲撃した……ということで良いのだろうか。学生たちは逃げおおせるはずだったが、何かの間違いで漂流してしまったのだろうか。でも仲間ならそのままアイリーン号に乗って、上陸して逃げればいいじゃん? 金を渡されたからって、そんな死ぬようなことをしなくても(実際一人死んでるし)と思うのだが……そのへん、もうちょっと説明がほしかったかなと思う。
海賊から密猟、武器の密輸入と展開は二転三転。武器の流れた先はマフィアかテロ組織かと思ったら、人種差別からくるヘイトクライムだったという結末。移民国家で正統性もあるまいと思うのだが(それを言うならおまえらが先にヨーロッパへ帰れYO)。そもそも千年万年単位で考えると、移民していない民族など殆どないんではなかろうか。2億年前は大陸だって移動したんだし。
異民族が気に入らないからといってバズーカをぶっ放す、というのはとても普通に共感できる行為ではない。それに対してフランク・トリップの感覚はもっと身近なものだ。トリップは基本的に正義と良心の人であって、偏見に基づいて捜査するようなことは決してしないはずだと思う。個人個人に対して含むところはないが、個人を捨象した集団としての彼らには、少々身構えるところがある、といったところか。
トリップ自身には何も悪気はなくて、自分の言葉の何がデルコを怒らせたのかもわからなかったのだろう。自覚のないところが危険という面もあるけれど、逆に、だからこそ自覚が生まれれば和解することもできる。それを表しているのが、あのラストの場面ではないかと思った。CSIや刑事が総出で店の片付けを手伝って新しい看板をかける、というのは、いささか過剰なまでに「良い話」すぎる気もするが、やはりこの場面は必要かなと思う。マイアミは、こういう硬派なテーマと優しい描写を併せ持ったエピソードがあるせいで、「アクションとホレイショ鑑賞」だけのドラマにならずにすんでいる。とはいえ、今回もちょっと珍しい表情のホレイショ鑑賞を楽しんだけど。やっぱり良い笑顔だよね~このホレイショは。年配の親父さん相手にもホレイショ物質は惜しみなく分泌されるのだ。
民族対立というものは、旧ユーゴでもそうだが、対立感情が高じて争いになるのではなく、争いが起きたせいで対立感情が生まれるもののようだ。つまり平和な時はそれなりに仲良く共存できていたわけ。やはり平和は大切だ。