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CSI: Miami - Season 9, Episode 8
#199 Blood Sugar
- 邦題:「砂糖地獄」
- 脚本:Gregory Bassenian
- 監督:Rod Holcomb
- 初回放映:2010-11-14
事件概要
エドアルド・サンタナ
砂糖工場で爆発が起き、従業員のエドアルド・サンタナが遺体で発見される。同じ工場で働くニーナ・カスティーヨと1ヵ月後に結婚する予定だった。
爆発物はなく、どうやら粉塵爆発らしいとわかる。粉塵爆発は換気の悪い場所で大量の粉塵が飛び交った場合に発生する。オーナーのロジャー・キャバナーは、最新の換気装置を使い扉も開放していると言うが、工場を管理しているのはロジャーの娘のクリスティで、経費節減のため1日数回装置を止めていた。クリスティは安全基準を守っていたと主張するが、扉の開放を確認する係の従業員が持ち場を離れ、移民局の摘発による混乱で、爆発時には扉が閉まっていた。
従業員の多くは、トレーラーに暮らす貧しい不法移民。その日も、聞き込みに行ったホレイショの目の前で、ニーナの姉イザベルが連行される。ニーナは米国で生まれたが、イザベルは生後2ヶ月で米国に来たのだ。摘発は毎月のようにあり、エドアルドも以前捕まりそうになったことがあった。どうやらロジャーが移民局と内々に話をつけ、誰かを引き渡す代わりに他を見逃してもらっているらしい。
検死の結果、エドアルドは体中を粉砕骨折し、砂糖に埋もれた状態で死亡したとわかる。つまり、エドアルドが砂糖のタンクに転落し、その衝撃で容器が破損して砂糖が舞い上がり、たまたま扉が閉まっていたために粉塵爆発が起きたと思われる。工場でエドアルドと最後に話したのは現場監督のルイスだが、ルイスはエドアルドと話しただけで、自分がその場を離れた時に彼はまだ生きていたと主張する。
ニーナがエドアルドの遺品から医療記録を発見。それはエドアルドが工場で負傷した時のもので、珍しい血液型の血をロジャーが輸血して助けていた。ロジャーはエドアルドが息子であることを認める。エドアルドはオーナーが実父であることを知っても、命を助けられたことに感謝しただけで、他には何も要求しなかったという。ロジャーは娘には何も知らせていないが、息子に遺産の半分を残し、工場を任せるためルイスに頼んで管理職の仕事を覚えさせようとしていた。
だがクリスティは、父親のパソコンに不正アクセスしてそのことを知っていた。クリスティはエドアルドを弟と認めず、「遊びにも行かずに工場と砂糖業界のことをずっと勉強してきた、私だけが父の後継者であるべき」と反感をあらわにする。
デルコとウルフは、現場のサイロに焼きついた奇妙な形を検証し、拍車の付いたカウボーイブーツであると判断。該当する靴をはいているのは現場監督のルイスだった。
ルイスに会いに行くと、彼は事情を察して工場へ逃げ込む。ホレイショらが後を追うと、ルイスはロジャーに銃を突きつけていた。ルイスの息子は先月の摘発で移民局に連行されていたが、最初彼らはエドアルドを連れて行くつもりだった。そこへロジャーが割って入り「こいつにしろ」とルイスの息子を引き渡していたのだった。ルイスは事情をうすうす知っており「ボスの息子なら見逃しか」と恨みに思っていた。それでエドアルドと口論になり、はずみで転落してしまった。助けようとしたができなかったのだという。ホレイショの説得でルイスは銃を下ろしたものの、そこでロジャーが「息子を殺したな!」とつかみかかろうとしたので、ルイスは発砲しロジャーは即死、ルイス自身もホレイショに撃たれて倒れる。
クリスティは不正アクセスの罪で起訴を覚悟するが、ホレイショは「検事に口添えしてもいい」と取引を持ちかける。クリスティはそれを受け入れて工場に奨学金制度を設け、イザベルは学生ビザで米国に残れることになった。
感想
原題の “Blood Sugar” は「血糖」の意味だが、本エピでは「血統と砂糖」だった。砂糖工場と、そこで働く中南米出身の不法移民たちという、マイアミならではの素材と言えるだろう。何となく初期シーズンを思い出す、懐かしいエピソードだ。移民と隠された父子関係の話、そういえば以前もあったなぁ……と思って確認してみると、シーズン2「満月の惨劇」だった。原題は “Blood Moon” でタイトルも似ている。Blood Moon といえば、ベガスのシーズン11にも同じタイトルのエピソード(邦題は「ブラッドムーン 満月の夜」)が……ああ何かややこしい。
危険を伴う重労働に不法移民が低賃金で雇われる、という話はこの手のドラマで何度も取り上げられており、かなり以前から社会問題になっていることが伺える。健康保険もなく、怪我をしても保障されるどころか解雇されるだけ。常に逮捕される危険に脅え、多くは英語もままならないため、そのような劣悪な環境でも我慢するしかない。ロジャー・キャバナーはルイスに重要な仕事を任せていたようだし、怪我の手当てもさせていたので(息子だけ? じゃないよね)そこまでひどい雇い主ではなさそうだが、しかし人件費を低く抑えるために普段から不法移民を安くこき使っていたのだろうと思われる。
虐げられる貧しい労働者として象徴的に登場するのがエドアルドのフィアンセ、ニーナと姉のイザベル。黒髪、ラテン系で薄幸の美女――ということで、これはホレイショが助けてあげるんだろうなと思ったらやはり、期待を裏切らない展開。ただし、ホレイショもさすがにポケットマネーで学費は出せなかったとみえて、クリスティを脅して金を出させていた。もともと半分はエドアルドの物になるはずだった遺産なので、彼も天国で喜んでいるだろうと思いたい。
ニーナはアメリカで生まれたが、イザベルは生後2ヶ月で渡って来た。これが姉妹の運命を変えた、というのだが……エドアルドもアメリカ生まれではないの? ロジャーが「母親の部屋へ通っていた」ことをルイスが知っていたくらいだから。おそらく移民局はそれを知らずに連行しようとして、ロジャーは「いつもの犠牲」としてルイスの息子を差し出しただけ、ということなのだろうと思う。しかし、だとすればエドアルドは「ボスの息子だから」助かったわけではなく、「アメリカで生まれたから」助かったことになり、ルイスの行動は少々説得力を欠いてしまうことになる。
……ということもあって、ルイスがロジャーに銃を突きつけて以降の展開はイマイチかなぁと思ったが(スローモーションもあまり効果的でなく、むしろかったるく感じた)、全体としてはラテンな雰囲気満点で、良いエピソードだったと思う。