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CSI: NY - Season 1
#22 The Closer
- 邦題:「クローザー」
- 脚本:Pam Veasey
- 監督:Emilio Estevez
- 初回放映:2005-05-11
I like the possibility of changing everything.
事件概要
マーゴ・トレント死亡事件
マック、ステラ、フラック刑事担当。建物から下着姿の女性が逃げ出し、通りに飛び出したところでトラックにはねられ死亡。手首には強く拘束されたような痣があった。運転手は飲酒もスピード違反もしていなかった。被害者の名前はマーゴ・トレント。内股に精液の跡、手にバーかダンスクラブのスタンプがあった。飲酒はしていたがごく少量。死因にも運転手の供述にも不自然な点はなく、事故死と判断された。レイプ容疑が残っているが、それはフラック刑事の担当となる。
CSIの捜査はいったん終了したが、ノヴォトニー事件との関連が浮上し、再び捜査が再開される。
マーゴはスポーツエージェントで、彼女がいたのは、事務所が接待用に所有していた部屋だった。マーゴは浴室の窓から外に出たと思われる。部屋の片隅には、野球のボールが転がり、浴室の扉が破られていた。マーゴが同僚のエージェントとともにバーへ行ったこと、彼と性交渉を持ったことがわかるが、その男性は部屋には来ていなかった。
マーゴは、エージェント契約を結ぼうとする選手デローザとともに野球観戦に行き、ノヴォトニーの隣の席に座った。そこでノヴォトニーがデローザにキスしたことをマーゴが冗談のタネにして笑ったため、デローザは激怒。マーゴは浴室へ逃げ、逃走。通りに出たところでトラックに轢かれた。デローザは怒りにまかせてボールを浴室の扉に投げつけたのだった。
ギルバート・ノヴォトニー殺害事件
ステラ、ダニー、エイデン担当。スタジアムの駐車場に停まっていた車の中で、ギルバート・ノヴォトニーという男の遺体が発見された。マサチューセッツ州の住人で、ボストンのチームのファン。前日のゲームを観戦し、その後車に乗って死亡したようだ。車両の外にも、被害者の身体にも血痕はなく、鼻に微量の乾いた血痕があるだけだった。遺体のそばには、土と茶色い毛髪のついた野球のボール。ボールを受け止めた時に鼻血を出しただけのようだった。
死因は脾臓の破裂。凶器が素手でないことは確かだ。何かで強く打たれて肋骨が折れ、脾臓が破裂し、車に乗ったところで内出血により死亡したのだった。被害者の頭にはクラッカージャックが付着していた。誰かがボストンのファンを馬鹿にするため、口に含んだクラッカージャックを飛ばして頭にぶつけたのではないかと思われた。
ボールに付着していた髪は、車に轢かれて死亡したマーゴ・トレントの髪と判明。球場の監視ビデオを見ると、ノヴォトニーの隣は空席で、ひとつ置いた隣にマーゴがいた。ノヴォトニーがボールを受け止めた時、たまたまマーゴの髪がからまった様子が映っていた。だがマーゴの死因は事故で、その時ノヴォトニーはすでに死亡していた。本当に関連はあるのか。
ノヴォトニーのチケットはラジオ局からのプレゼントだった。ラジオ番組でブロンクス在住のトニーという男がノヴォトニーと激論し、DJは2人にチケットを送って「球場で決着をつけろ」とけしかけたことがわかる。クラッカージャックのDNAはアンソニー(トニー)・リアネッティと判明するが、トニーは殺害を否定。途中で球場を出たという。
検死官は皮膚に残る傷を調べ、痣の形が野球のボールであることを確認。それもファウルボールがあたったのではなく、15メートル以内の位置から直撃を受けている。マーゴがいた部屋の浴室の扉もボールで破られていたことから、マックとダニーは野球のボールで実験。元野球選手のダニーがいくらボールを投げても、扉はびくともしなかった。次に機械を使って試すと、時速94マイル(150km)で扉に穴が開いた。
球場の監視ビデオを再チェック。ノヴォトニーとマーゴの間には、最初男が座り、怒っている様子。彼は野球選手のルーベン・デローザで、マーゴは彼のエージェントになろうとしていた。ルーベンの投球は時速94マイルだった。ダニーはルーベンが手に唾をつけてからボールを投げるのを見て、そのボールをキャッチ。そのボールと、マーゴの部屋にあったボール、ノヴォトニーの車にあったボールのDNAはすべて一致した。
ボストンチームの熱狂的なファンだったノヴォトニーは、試合中に興奮し、冗談めかしてデローザの唇にキスした。デローザは怒り、途中で退席。試合後、彼が持っていたボールを奪って投げつけた。そして、その出来事を笑ったマーゴにも腹を立てたのだった。
アリッサ・ダンヴィル殺害事件
マック、ステラ担当。アリッサ・ダンヴィルという女性がハンマーで撲殺された。ハンマーに付着した血液からは、建設作業員クイン・サリヴァンのDNAが検出されていた。アリッサが通るたびにクインが彼女を見ていたという証言もあり、クインは逮捕され、起訴される。
マックは証人として法廷に立ち、ハンマーのDNAについて証言するが、その2日後、拘置所のクインから、自分は無実だという電話を受ける。ステラは、自分たちの捜査にミスがなかったことを確信しているが、マックはアリッサの事件ファイルを調べ直し、拘置所でサリヴァンと面会する。サリヴァンは事件当時、凶器のハンマーは自分の物ではないと主張していた。それは、自分の物だと言えば有罪にされると思ったためだという。
だが、自分の物でないはずのハンマーに、彼のDNAを含む血液が付着していた以上、彼が加害者としか考えられなかった。このような場合、基準サンプルは採取しないことになっていた。ハンマーがサリヴァンのものなら事情は異なる。そうであれば、彼のDNAは事件前にすでに付着していた可能性が高いからだ。つまり、「サリヴァンの血液」と認識されたものは、サリヴァンの上皮細胞の上に被害者の血が付着しただけかもしれない。ステラは、いっしょに担当した自分が何の相談も受けなかったことに抗議するが、マックの説得を受け同意。だが、ハンマーを再テストするには、判事の同意が必要だった。
マックは判事の同意を得て、証拠を再度テストする。レーザーマイクロダイセクションで血液の白血球と上皮組織の細胞を分離して調べると、サリヴァンのDNAは上皮組織にのみ含まれていることがわかった。マックはそれを証言しようとするが、検察官はマックの召喚を拒絶。
マックは弁護側の証人として法廷に立ち、サリヴァンは釈放された。なぜ自分を助けたのかというサリヴァンの問いに「あなたが真実を話したから」と答える。自分の仕事は証拠を集め、先入観も期待もなしに結論を出すことであり、容疑者が有罪か無罪かを期待することはない。だが今回だけは、以前の結論が間違っていることを期待した、と――。
感想
最初の事件、マックとステラが出てきておいてこれで終わりってことはないよなぁ……と思っていたら案の定、もうひとつの事件と関わりがあることが判明。というわけで、全員で両方の事件を追うことになるのだが、でも捜査に向かう時はマックとステラ、ダニーとエイデンが組んでいる。やっぱりこの組み合わせが相性いいみたい。
今回マックの実験の犠牲になったのはダニー。別にダニーが投げなくても、最初から機械を使えばいいような気もするけど。でもあの場面のやり取りは「親子でキャッチボール」を思わせてちょっとなごむ。
このメインの事件より、マックが再調査した事件の方が印象深かった。
証拠の再調査について話した時、マックはステラに「タワーが崩れ落ちクレアが死んだ……この世の不正と不当さをあれほど明確にした光景はなかった。私はそれに対して無力だった」と言う。それが、サリヴァン事件の証拠を調べ直すこととどうつながるのか。はっきり語られていないことは見る側の解釈に任されていると思うので、自分なりに解釈してみた。
マックが何もしなければ、サリヴァンは有罪になっただろう。だがサリヴァンは真実を語った。その言葉を聞いた者の責任として、マックは自らの役割を果たした。ここでひとつの正義が行われた。それこそが重要なのだと思う。今ここでもう一度あのようなテロ事件が起きたとして、やはり彼は無力だろう。だが、世の中を変えるのは、奇跡でも暴力でもなく、ひとりひとりが自らの役割を誠実にまっとうすることであるべきだ――彼はそう言いたいのではないかと思う。それが彼の信じている possibility ではないだろうか。
クレアは何のために死んだのか、残された自分は何をすべきなのか、マック・テイラーはそれをずっと自問してきたのだろうと思う。指輪をはずさない、はずしたくないのは愛惜からだけではなく、それを忘れないためでもあるのではないか。あるいは83年、熾烈を極めたベイルートの市街戦のことも関係があるのだろうか。
でも、あんなに証拠をデスクに広げたまま出かけちゃ駄目じゃん、マック。
単語帳
- john:“Prostitute fights with her john.” johnには「売春婦の客」という意味もある(色んな意味あるな~ジョン)
- Field Level:スタジアムの1階席。
- Cracker Jack:クラッカージャック(商標。ポップコーンをシロップで固めた菓子)
- laser micro dissection:顕微鏡で組織を観察しながら、その組織の一部をレーザーで切り出して分離する装置
- rebuttal:原告からの反駁、反証
- Brady material:被告人の有罪/無罪に大きく影響する情報。通常は被告人に有利な材料であり、検察官がこれを伏せておくことはできない。検察側は、被告人の無罪を証明する証拠または情報を弁護側に公開しなければならない。ブレイディ対メリーランド州事件の最高裁判決より(Wikipedia エントリ)
— Yoko (yoko221b) 2006-05-07