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CSI: NY - Season 1
#23 What You See Is What You See
- 邦題:「この目に映るもの」
- 脚本:Andrew Lipsitz
- 監督:Duane Clark
- 初回放映:2005-05-18
I saw what I saw, but the evidence knows what was really going on.
事件概要
コーヒーショップ銃撃(+その他)事件
マックはコーヒーショップで朝食中、銃撃戦に巻き込まれる。銃を持った若い男が客の一人を射殺し、ウェイトレスに重傷を負わせる。マックは男を一度取り押さえるが、逃げられてしまう。店には他に、マックに話しかけた女性客と、事件後いつの間にか姿を消した男性客がいた。
被害者はアダム・バクスター。犯行に使われた銃は、以前にも未解決の強盗と殺人に使用されていた。店から採取したDNAはスティーヴ・コリンズという前科のある男で、マックも顔を確認した。スティーヴは、血のついた衣服を部屋に残して姿を消していた。マックとステラは、母親の家でスティーヴを逮捕。彼が隠れていたトレイラーには犯行に使われた拳銃があった。
スティーヴはなぜかすぐに釈放されるが、分署を出た所でオートバイに乗った何者かに狙撃され負傷。現場に居合わせたマックは、救急車の中でスティーヴを尋問。彼が釈放されたのは、別の事件の情報を提供したためと思われた。部屋にあったスティーヴの服の内側にテープがあったのは、集音マイクを貼り付けていたのだ。
ステラは狙撃現場で40口径の薬きょうを発見。現場にはオートバイのタイヤ痕、足跡と謎の物体。エイデンはフラックとともにタイヤ痕をテストして車種を割り出す。銃はエイミーの兄ジェイムズが買ったものだった。ジェイムズはスズキのオートバイも持っていたがそれは売ったという。銃はエイミーの恋人が暴力を振るうので、彼女が身を守れるよう買ったものだと主張。現場にあったタイヤもスズキによく使用されるものだった。
スティーヴの母親が殺害される。頭を殴られた後に首を絞められ、口の中には丸めた紙片が押し込まれていた。何かのメッセージかと思われたが白紙。スティーヴは連邦政府の命令で働いていたらしく、地方検事にも手が出せなかった。
狙撃現場の物質は、ブドウ糖、果糖、パルミチン酸、ステアリン酸とカフェインで、すべて靴底から移った物。マックは、狙撃犯はコーヒーショップにいたと判断。アダム・バクスターを撃った弾はペイストリーの容器を砕いていた。ここにブドウ糖と果糖。エイミーはベーコンの乗った皿を落としていた。ここにパルミチン酸とステアリン酸。最後にマックがスティーヴを一度取り押さえた時、コーヒーが床にこぼれた。犯人はその時店の奥にいて、それらを全部踏んで通ったのだ。だがマックはエイミーの手当てに気を取られて、その男の姿を見ていなかった。
コリンズ夫人の口に入っていた紙は、紙幣に使われる紙とそっくりだった。マックは、最後に立ち去った客が偽造紙幣の犯人であるとにらみ、その客が置いて行った20ドル札を調べる。その紙幣には、コレステリック液晶(CLC)のインクが使用されていた。これは角度によって色を変える効果を持ち、紙幣の金額部分とよく似た印刷を実現できる。スティーヴはシークレット・サービスに雇われていたのだ。では彼は、その時誰と会おうとしていたのか?
マックとステラはCLC研究の第一人者、ニューリン教授を訪ね、エイミーの恋人デニスが教授の助手であることを知る。彼はその朝、店でエイミーと話しており、事件が起きる前に去っていた。だが大学に届けている住所にはいなかった。エイミーに話を聞くと、兄から銃を渡されたが、銃を持っていると余計に不安になるのでデニスに預かってもらったという。マックの頼みでエイミーはデニスに電話をかけ、話をする。信号を追跡して踏み込むと、そこは偽札の印刷工場だった。そこでデニスと、コーヒーショップにいたクラーク・ボイドを逮捕。彼らは偽札を印刷するため、スティーヴから財務省の本物の紙を買うことになっていた。だがマックが店に入り、クラークは彼が警官だと気づいた。それでクラークが合図してデニスは店を出た。スティーヴの母親を殺害した金属棒は、工場にあったプレス機械の部品だった。
感想
またしてもライブ銃撃戦。今回巻き込まれたのはマック。「疑惑の任務」のダニーと比べると、さすがの貫禄を感じさせる。弾の行方もちゃんと見ているってすごい。マックはオートミール好きか……私はオートミールというと、和風だしか鶏がらスープで雑炊風にするのだけど、マックはアメリカ式にミルクなんだろうな。
その舞台になったコーヒーショップ、画像を見比べてみると前回「クローザー」でステラと話したのと同じ店。左が前回で右が今回の画像。しかもマックは同じ席に座っている。刑事が常連にしてることくらい事前に調べておけよって感じだなぁ、あの偽札犯人。
で、そのあと釈放されたコリンズは “Lower Manhattan NYPD 12th Precinct”(ロウワーマンハッタン、NYPD 12分署)から出てきたので、おそらくマックはこの地区に住んでいるのだろう。地図で見ると Lower Manhattan はマンハッタン島の南端で金融街がある場所。グラウンド・ゼロもこの地区だ。改めて見ると、そのすぐ北にチャイナタウンがあって、「雨のチャイナタウン」の強盗犯人とグラウンド・ゼロの位置関係に、今頃になって得心がいったりする。「まばたき」のラストを見た時も、あの後どうやって帰ったのだろう? タクシーを待たせていたのか? 地下鉄がまだ動いていたのか? とちょっと疑問だったが、おそらく徒歩で帰ったのだろう。
今回、事件は面白かったのだ。アクションもあったし、CLCのような新技術も登場したし、ドン・フラックのオートバイ実験もかっこ良かった!
しかし! しかし、あのラストは私には許せないものだった。前回の「クローザー」でクレアへの想いを語ったあの同じ店の同じ席で出会った女性の誘いに応じるなんて……しかも指輪まではずしているなんて……。クレアを愛し続けているマック・テイラー、という人物にひかれてきた者には、受け入れがたい。
これが現実であれば、もう3年半も経つのだし――と思うだろう。だがこの「CSI: NY」というドラマではまだ、それを納得させるに足りる時間は経過していないし十分な描写もない。マック・テイラーがグラウンド・ゼロで苦悩する姿を見せてから、まだせいぜい半年といったところではないか。
マックが事件の後、ビーチボールだけを残してクレアさんを思い出させるものを処分してしまったのは、彼女の死という現実を受け入れられなかったからではないのか。それにどう向き合い、どう対処してきたのか、それはほとんど語られて来ないままではないか。もうちょっと見る側を納得させるエピソードがほしい。できれば、クレアさんを失った悲しみだけではなく、どのように彼女を愛し、ともに生き、幸福に過ごしたかを知りたかった。カミンスキーの小説には、ちょこちょこと回想シーンが出てくるんだけどね……。
いずれにしても、これで今シーズンはお終い。次のシーズンではまた、ストイックなマック・テイラーに出会えることを期待したい(指輪も戻して~)。
単語帳
- Rikers:NY市にある刑務所。クイーンズとブロンクスの間を流れるイーストリバー上の島で、島全体が収監施設(刑務所と拘置所両方あるらしい)になっている。
- Lower Manhattan:マンハッタンの南、Chambers Street以南の地区。
- CoBIS(Combined Ballistic Identification System):銃のデータベース。2001年3月以降、NY州で合法的に販売される銃は事前に試射され、CoBISに登録される。
- GCMS:ガスクロマトグラフと直結した質量分析計
- rag paper:ぼろ布パルプ製の紙(最高級品)
- cholesteric liquid crystal:コレステリック液晶
— Yoko (yoko221b) 2006-05-07