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CSI: NY - Season 2, Episode 12
#35 Wasted
- 邦題:「幻惑」
- 脚本:Bill Haynes, Pam Veasey
- 監督:Jeff Thomas
- 初回放映:2006-01-18
So our first victim died from the paint, our second victim died for the paint.
事件概要
モデル連続殺害事件
マック、ダニー、ホークス担当。水着ショーの最中に、モデルのセリーナ・ポーティノヴァが舞台で突然倒れて死亡する。後頭部には傷があり、血の付いたボディペイントの缶も見つかるが、頭の傷は致命傷ではなく、死因は心臓が痙攣を起こしたこと。さらに、ペイント缶の血はセリーナの物ではなかった。
その後、もうひとりのモデル、ジェニファー・ファゾッティの遺体がトラック内で発見される。ジェニファーの後頭部にも殴られた傷があり、傷口の周囲には、セリーナが付けていた物と同じグリーンのボディペイントが付着していた。また、当初セリーナ事件の凶器と思われたペイント缶の血痕は、ジェニファーの血であった。
セリーナが死亡したのは、エクスタシーを摂取したことが原因であるとわかる。この薬物は錠剤で服用するものだが、セリーナの場合は肺に残存していた。つまり、エクスタシーを「吸引」したことになる。セリーナのボディペイントは検死の際に洗い流されていたが、排水管に残った水を調べると、エクスタシーの反応があった。エクスタシーはペイントに混ぜて運ばれ、セリーナはペイントから気化した薬物を吸い込み、中毒を起こして死亡したのだった。後頭部の怪我は、どこかにぶつけたものと思われた。
ダニーとホークスは倉庫に保管されていたペイント缶をすべて押収して調べるが、いずれもエクスタシーは含まれていなかった。彼らは次に、ジェニファーの首に付着していた胞子に着目する。それはアフリカに生息するもので、大西洋を渡る風に運ばれて北アメリカの南東部に落下したのだった。
ジェニファーを撲殺したのは、最近までジョージア州にいた倉庫の管理人、トッド・ミラーだった。ペイント缶には複数の指紋があったが、いちばん上にミラーの指紋があったことからも犯行が裏付けられた。トッドはエクスタシー入りのペイント缶を間違えて配達してしまい、それを通常のペイント缶に取り替えているところをジェニファーに見られて殴り殺し、遺体をトラックに隠したのだった。
レイチェル・ジェフリーズ殺害事件
ステラ、リンジー、フラック刑事担当。ポール・リッチモントという男性がフラック刑事を訪ね、「レイチェル・ジェフリーズ医師を射殺した」と自供する。ポールが示した場所には、確かにレイチェル・ジェフリーズの遺体が倒れていた。そして着衣をはだけてみると、そこには何匹ものヒルがたかっていた。
ポールが持っていた銃はレイチェルを撃った物であり、手には発射残渣もあった。だが、ポールの自供内容は現場の様子と食い違う。凶器の銃と弾丸が磁気を帯びていたことから、銃は発射する直前に強力な磁気に晒されていたと思われた。
レイチェルが持っていた鍵は、現場に近い倉庫の鍵で、その中には大量のヒルや蛆虫が飼育されていた。ポールの妻リネットは、レイチェルは「ヒルで治療する」というふれこみで大金を騙し取っていた詐欺師だと非難する。ポールは難病を患い、レイチェルの治療に頼って全財産を投げ出していたが実は治癒しておらず、ポールは余命いくばくもないことがわかっていた。
レイチェルは宝石類をいくつも持っていたが、それは「患者」たちから現物で支払われた物だった。その中のロケットには、小さな女の子の写真が入っていた。写真から「成長後の顔」を予測するプログラムを使用したところ、それはリネットの顔だった。リネットは病院へ行きレイチェルを非難した。その時ちょうどMRIを行っていたので、その装置により銃と弾丸が磁気を帯びた。リネットはいったん退出し、レイチェルが出てくるのを待ち伏せて射殺したのだった。
感想
マックの事件では、モデルを知らなかったマックにダニーが “Mac, you've got to get out of the lab.” と言う。前シーズンではクイーン・ラティファを知っていて意外に思われていたのに……あの手のことはエイデンに教えてもらっていたのだろうか。
単純な撲殺事件で、あとは「誰がやったか」を地道に探すプロセスの話かな、と思っていたら死因は違うし血も別人。エクスタシーを「吸引」するという不可能犯罪(?)の謎を解いたり、大陸間弾道胞子(違)という大技が登場したり、という謎解きのデパート状態で面白かった。
ペイント缶を根こそぎ押収して調べる場面も良かった。「地道に捜査する」マックのいつもの姿だが、色とりどりのペイントのおかげで、とても色鮮やかで美しい画面になっている。前シーズンのくすんだ青い画面を懐かしんだりもしたが、こういう場面はやはり、きれいだな~と素直に思う。
ステラの事件は、ラストでひとひねりあるかな? と思ったら割とストレートに解決。最初に自首して来た様子を見て「犯人じゃなさそう」と思ったらやはりそうだった。誰かをかばっている? と思ったらやはりそうだった。容疑者は2人だけだし「奥さんをかばっているのか、看護師が実はポールの妹か何かで彼女をかばっているのか」と単純に考えていたら単純に前者だった。そういう点でいささか単調だったかな? とは思うのだが、ヒルやら磁石拳銃といった面白い要素があり、謎もきちんと解明された所は良かったと思う。
DNAのプロファイルで人種と髪と目の色までわかってしまうというのはすごいと思うが、何だか「わかりすぎ」という感じもした。謎解きを取っておくためには、今回の「金髪で目がヘイゼルの白人女性」のように似たような人物が複数必要だし、そうなると登場人物の人種のバリエーションが限られてしまう。せっかく人種のるつぼNYなのに。
ステラとリンジーの女性コンビは今回初めてかな。ベガスとマイアミでは、女性キャラ同士の関係があまり良くないことが多くて(アレックスとカリーは良いんだけど)、その点をいつも不満に思っていたのだが、この2人は仲良く仕事してくれるので嬉しい。ステラが頼りがいのあるお姉さん、というか姉御肌なところが良いのだろうか。
ポールはステラに「自分がやったことにはできないのか」と言うが、ステラはそれに応じることができない。“I'm sorry.” と言うのが精一杯だった。リネットは殺人罪で刑務所へ。そしてポールにもそう遠くない死が待っている。このカップルの行く末を思い同情しながらも、あくまでプロとして事件に対処するステラの優しさと厳しさが伝わってくる一言だった。
さて、このエピソードではドン・フラックの所属が明らかになった。以前に出て来ていたかな? もしかするとシーズン1「転落」あたりにあったかもしれないが、フラックはどうやら12分署の刑事さん。画面の隅のほうに入り口の表示が映っているが、反転してみると “12th Precinct” と読める。
12分署の管轄ってどのあたりになるのだろう。今回の現場はSOHOだと言っていたから、そのあたり? でも、ドンに「所属の分署」がちゃんとあったというのが何だか意外。セントラルパークやらブロンクスやら、色々な場所の事件を担当しているので、NYPDの本部(ってどういう構成になっているのか知らないが)にいるのかと思っていた。(※追記:確認してみたら、S1の「この目に映るもの」で犯人が逮捕されていたのが12分署だった。管轄はローワー・マンハッタン)
そういえば、ポールはなぜドン・フラックご指名で来たのだろう。最初の様子では、ドンの顔すら知らなかったようなのだが。