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CSI: NY - Season 2, Episode 21
#44 All Access
- 邦題:「豹変」
- 脚本:Timothy J. Lea, Anthony E. Zuiker
- 監督:Norberto Barba
- 初回放映:2006-04-26
- It's my job. Not to mention, you're a friend.
- Well, you're a very good friend.
事件概要
ニック・ラッソ殺害事件
人気ミュージシャン、キッド・ロックスのリムジンの中で、運転手のニック・ルーソの射殺された遺体が発見される。マック・テイラーが現場に到着するが、警察無線でステラのアパートで発砲事件があったことを知りフラック刑事とともに急行。ルーソの事件は主としてダニーとリンジーの2人で担当することになる。
所持品の中にはルーソ本人の電話番号を書いた紙片があり、死ぬ直前に性交渉を持った形跡があった。車内に落ちていた傷だらけのCDはキッドの曲のマスター版で、ニック・ルーソはその曲をインターネットに流していた。だが、それはキッド自身が仕掛けたプロモーションだった。キッドのジャケットには血痕があったが、それも事件とは無関係の物だった。
車内で発見された紙片は、ファンの女性フェリシア・バドマンがキッドに渡したCDに入っていたリーフレットの切れ端だった。フェリシアは、楽屋に出入りするためのパスを手に入れるためにニックと付き合ったが、ニックはフェリシアをだましただけだった。フェリシアは腹を立て、ニックのパスを手に入れようと揉み合っているうちに銃を発射してしまったのだった。
ステラ・ボナセーラ殺害未遂/フランキー・マーラ殺害事件
ステラのアパートで銃声がしたとの通報を聞き、マックとフラック刑事が現場へ急行。部屋の中ではステラが意識を失って倒れており、そばでは恋人だったフランキーが銃弾を受けて死亡していた。ステラは病院へ運ばれ検査を受ける。レイプ検査は陰性だったが、ステラは事件の記憶を失っていた。
ホークスは弾丸を照合し、現場にあった拳銃が凶器であることを確認。ステラの手に発射残渣があったことから、彼女がフランキーを撃ったことは確実と思われた。マックが現場で証拠を採取する間、ステラはフラック刑事と話しながら、何が起こったかを思い出そうとする。
ステラはWebサイト aresanob.com にフランキーと抱き合う自分の盗撮映像が流されていることを知って怒り、フランキーとの交際を断とうとした。だが、フランキーはステラの知らない間にこっそりアパートの合鍵を作り、部屋に入り込んで彼女を待っていた。ステラはフランキーを追い出そうとするがかなわず、縛られて浴室に連れ込まれ、ナイフで傷つけられる。ステラはフランキーが配達に応対した隙に、カミソリでコードを切って脱出、フランキーを射殺した後、気を失って倒れたのだった。
感想
前回のダニーに続いてステラが大変なことに!描写があまりにも生々しくて、見ているのが辛かった。
このステラ・ショックで、せっかく本物のキッド・ロックがゲスト出演したというのに、こちらの事件はほとんど印象に残らず……。今回キッド・ロックのステージで演奏されていた曲は、アルバム “Devil Without A Cause” の中の “Bawitdaba” とのこと。
彫刻家のフランキーは「過ちのグランド・セントラル」で初登場。その後、ステラがわざと電話に出ずにじらしたり、パーティで親密な様子を見せていたり、と交際は順調のように見えたのだが……。初登場で被害者が作りかけていた像を完成させた彫刻家、花束を贈る恋人、前回のラストで登場した彫刻を刻んだフランキー、そして今回のただただ暴力的なフランキー、これらの人物像をどう関連付ければよいのだろう。
フランキーがこっそり合鍵を作ったのは(その機会があったのは)、盗撮サイトのことでステラが連絡を絶つ前のはず。ということは、計画的犯行だったのだろうか。そのことがわかる場面で、「彼は扉を蹴破ったのかも」というステラが痛々しかった。フランキーが扉を蹴破ったはずがないことは明らかなのだ。ステラ自身がちゃんと鍵を開けて入っているのだから。今までの用心も施錠も役に立たなかったという、自分の無防備な状態を認めることは、ステラのように経験を積んだCSIにも、いやだからこそ勇気の要ることなのだろうと思う。
今回ステラの話を聞くドン・フラックがとても良かった! ただ淡々と話を聞いているようだが、口調や態度にステラを心配して気遣う様子が感じ取れて、ハグシーンもとても自然な流れだったと思う。前回のマックとダニーの時は、マックの動きが何だか唐突で、それが愛情を伝えることに控えめなマックらしいと思った。ドンの場合はもっとスムーズで、それがまた彼らしい。
ただ「CSI」のエピソードとしては……どうだろう? 前回の「沈黙の過去」では、科学捜査の限界を、ダニーの兄が身体を張って突破した。そして今回の事件は、ほとんどがステラの供述で進み「ギャップを埋める」はずの証拠の出番は、それほどでもなかったような。ドラマの基本は「CSI」であっても、科学捜査はかならずしも万能ではないし、たまにはそういうのも良いのだけど、鑑識が捜査を主導しない話が2つ連続するのは、ちょっとどうかと思う。その点では、キッドのストーリーがもう少し長くても良かったかな。
このエピソードに違和感を感じるのは、上記のことやステラの無防備さが「らしくない」こともあるのだが、構成があまりにも「Hurt/Comfort」的だったせいだろうか。Hurt/Comfortというのはファンフィクション(二次創作作品)等で用いられるカテゴライズの1つで、身体的・精神的に傷つけられる(難病、負傷、拷問など)ことと、そこからの癒しをテーマにした作品群を指す。このエピソードを見ていて、何だかfanficを読んでいるような気分になってしまったのだ。主人公のひとりが傷つけられ、救出され、病院で手当を受け、記憶のフラッシュバックに苦しみながら自分の身に起きたことを振り返り「負けない」と一歩踏み出す――もう、fanficでこういうパターンをいくつ読んだだろうと思う(実は好きなんですよね、H/Cフィク)。
それにしてもCSIの女性たちは男運が悪すぎる。ベガスでもマイアミでも、二股かけられたりDV被害にあったり元彼に目の前で自殺されたりと、ロクな目にあっていない。その点で、CSI Files のレビュー(下記参照)でなされている「social life(ここは「社会生活」とするよりも「人間交際」の方が良いかも)を求めようとする女性たちに対する懲罰のようだ」という指摘は重要であるように思う。もちろん、このレビューが書かれたのは放送後すぐのことであって、この次のシーズンでは色々変化もあることと思う。その変化が Huntley の指摘を覆しているか、それともある面で強化しているかは、まだわからないのだが……。
ラストに流れていたのは、Regina Spektor の “Samson” という曲。Regina Spektor といえば、シーズン1「疑惑の任務」でステラが子どもをあやしていた時にも彼女の “Somedays” という曲がかかっていた。そのおかげですっかり、Regina Spektor=エモーショナルなステラ、という印象に……。
— Yoko (yoko221b) 2007-05-04