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Dexter - Season 1, Episode 1

#1 Dexter

  • 邦題:「正義の殺人者」
  • 監督:Michael Cuesta
  • 脚本:James Manos Jr.
  • 初回放映:2006-10-1

概要

ストーリー

夜のマイアミの街でひとり、車を走らせる男の姿があった。名前はデクスター・モーガン。

デクスターは、聖歌隊の指導者マイク・ドノヴァンを拉致し、廃屋へと連れ込む。そこにはドノヴァンが手にかけた子どもたちの無残な遺体が並べられていた。「どうしても止められない、わかってくれ」と命乞いをするドノヴァンに対し、デクスターは「わかるとも、自分もそうだからだ――だがお前と違って子どもは絶対に殺さない」と言う。そしてデクスターはドノヴァンを裸にして台に縛りつけ、その身体をバラバラに切り刻む。

デクスターは幼い頃に孤児になり、ハリー&ドリス・モーガン夫妻の養子になった。警察官であるハリーは、幼いデクスターが近所の犬を殺していることを知り、その内に秘められた殺人衝動に気づく。その衝動をどうしても取り除けないとわかったハリーは、「法の目を逃れて凶悪な犯罪を重ねている極悪人」だけにその衝動を向けるようにと教え、殺人や証拠隠滅に関するあらゆる技術を叩き込んだのだった。

その後ハリーは病気でこの世を去るが、デクスターは養父の教えをずっと守ってきた。殺人の記念として手元に残しているのは、スライドガラスにはさんだ1滴の血液だけ――それを彼は箱に入れ、エアコンの奥に隠している。

家に戻ったデクスターは、義妹デボラに呼び出されて殺人事件の現場へ向かう。彼の表の顔は、マイアミ警察に勤務する鑑識技官。デボラは制服警官で、現在は売春婦のふりをして潜入捜査中だったが、殺人課の勤務を希望しており、何か功績をあげるためにデクスターに協力してほしいと頼む。被害者は売春婦。以前にも他の郡で同じ手口の犯行が行われており、連続殺人事件の可能性が高いという。

現場はすでに、殺人課のエンジェル・バティスタ刑事と鑑識のヴィンス・マスオカが検証していた。そこにあったのは、今まで見たことがないような変わった遺体であった――遺体は完全に血液を抜かれ、バラバラに切断され、部位のいくつかは荷物のように丁寧にラッピングされていたのだ。ロウ細工のような冷たい美しさにデクスターは思わず魅了されるが「血がないのでは僕の出番はないよ」と、その場を去る。デクスターの専門は血痕分析、すなわち、壁や床に飛び散った血痕の量や形状を検証し、犯行の様子を再現することだったのだ。

仕事の合間にデクスターは、次なる標的ジェイミー・ジャウォースキーの身辺を捜査し、彼が殺人者であるだけでなく、悪質なレイプビデオのWebサイトを運営していることを知る。

夜、デクスターは恋人のリタとともにデートに出かける。デクスターは本人曰く「感情がない」ので女性にも男性にも興味がないのだが、普通に見せかけるためデボラの紹介でリタと交際していた。リタは2人の子どもを持つシングルマザーで、前夫は家庭内暴力で服役中。夫からの虐待のせいで男性と性的な関係を持てなくなってしまったリタと、性欲のないデクスターの交際は順調に続いており、リタの子どもたちもデクスターになついている。

デートの途中、デクスターは近くで犯罪が起きたことを知る。行ってみると、エンジェルが現場を調べていた。また同じ手口で血を抜かれてバラバラにされた女性の遺体だが、頭部がどこにもない。遺体の切断面を見たデクスターは、前回よりもさらに洗練された手口に「腕を上げている」と感動。事件についてリタに話している最中、つい興奮して情熱的に迫ってしまう。リタは驚いて「無理よ」と拒み、デクスターはリタに欲情した自分に驚き呆然とする。

何としても殺人課に移りたいデボラは、デクスターに「何かヒントを」と相談する。その時にデボラが口にした「細胞の結晶化」という言葉から、デクスターは犯人が被害者を冷凍庫で凍らせていたのではないかと思いつき、アイス(冷凍庫搭載)トラックの盗難事件を調べてみるよう助言する。車なら被害者を持ち運んで遺棄するのに都合が良い。

だが、捜査の陣頭指揮を執っている警部補のマリア・ラグェルタはデボラを馬鹿にしていて真面目に取り合わず、目撃者探しに全力をあげるよう指示する。最初の遺体は切断を途中で止めた形跡があり、それは犯人が誰かに目撃されてあわてて逃げたせいだろうと思われていたのだ。ラグェルタ警部補はデクスターに気がある様子。だが巡査部長のドークスは逆にデクスターを嫌っており、いつも彼に怒鳴り散らしている。

その後、ジャウォースキーを拉致して処刑したデクスターが現場を片付けていると、リタから電話がかかる。前回のデートでデクスターを拒否してしまったことを気にしており、「会いたい」と言う。

だがデクスターはリタの家へ向かう途中で怪しいアイストラックを発見し、思わず尾行する。すると、そのトラックの運転手はいきなりUターンし、デクスターの車に女性の生首を投げつけて走り去って行く。

そんなこんなでやっとリタの家に着くと「子どもたちは隣に預かったもらったの」という。どうやら前回のデクスターの態度に、今度はリタの方がその気になってしまったらしい。一方デクスターはすでにいつもの彼に戻っている。積極的に迫るリタにあわや、という時に電話がかかり、下の子が具合を悪くしたという。これ幸いとデクスターは帰宅するが、そこで冷蔵庫を見て慄然とする。

何者かが留守中に侵入し、冷蔵庫の扉にバービー人形の首をぶら下げていったのだ。扉を開けると、中には人形の胴体部分。例の連続バラバラ殺人を示すかのように、切断部分に相当する所に赤いリボンが巻かれている。犯人の残したメッセージはそれだけなのだが、デクスターは「遊ぼう」と誘われた子どものような高揚感をおぼえていた。

マイアミ警察事件ファイル

  • アイストラック殺人No.3: ブロワード郡で2回ほど類似の事件が発生しており、今回は3件目ということになるらしい。血をすべて抜き取り、身体の各部位をバラバラにして、荷物のように包んで紐で縛ってディスプレイ。左右の脚の切り方が対称的でなく、切りかけて止めた傷もあった。
  • アイストラック殺人No.4: デクスターがデート中に遭遇した事件。手口はNo.3と同じだが切断方法に実験のあとが見られる。頭部がなかったが、その後デクスターが尾行した怪しいアイストラックから投げつけられた生首が、この被害者のものと思われた。
  • 麻薬売人とその情婦|ドークス担当の事件。ドークスは麻薬取引に絡むトラブルとにらむが、男性の方はあっさりと殺し女性の殺害に手間ひまをかけていることから、デクスターは痴情の果ての犯行と判断。結局デクスターの判断が正しく、女性被害者の元彼が逮捕される。

デクスター被害者ファイル

  • No.1 マイク・ドノヴァン: 原作では「神父」だったが、ここではどうやら聖歌隊の指導者か何か。普通にスーツを着ていたし、ミセス・ドノヴァンも登場していたので、カトリックの神父でないことは確かだろう。少年たちを次々と殺害して埋めていたため、デクスターの標的となった。
  • No.2 ジェイミー・ジャウォースキー: ジェイン・ソーンダース殺害事件の容疑者だったが、捜索令状に不備があったため無罪になっていた。また、インターネットで動画サイトを運営し、自分がレイプした女性の映像を流すという悪質な犯行を繰り返していた。

感想

あらすじを書いていたら、えらく長くなってしまった……。何せシーズンプレミア、この回だけでデクスターの表の顔と裏の顔、特殊な生い立ち、家族、恋人、職場の人間関係をこまごまと描写しつつ、メインのストーリーラインとなるアイストラック・キラーの事件が2つとデクスターの「お仕事」が2件。こうして文章にしてみると、省略できない場面が多くて「あれもこれも」と書いてしまうのだが、ドラマを見ている時には、そういう「つめこみ感」は感じなかった。いつの間にか1時間経っていたような印象。

原作と比べてみると「つかず離れず」といったところだろうか。基本設定や核となるアイストラック・キラー(原作では現場がタミアミ・トレイルだったことから「タミアミ殺人鬼」)はそのままだが、周囲のキャラ設定などは少々の変更あり(たとえば、原作ではエンジェルが検死官だったのにドラマでは刑事とか)。また、原作は文庫本1冊だがTVシリーズは12回なので、原作に書かれていないストーリー展開もあるはず。ジャウォースキー殺しで少々失敗したことが省略されていたが、これはもっと後で出すために温存しているのだろう。

ひとつ、ドラマで省略されていて残念だったのは、最初の殺人で、バラバラにした遺体を丁寧にラッピングしているところにデクスターが注目する場面。それはデクスター自身の手口と同じなのだ。そこがこの2人の最初の接点のようなものなので、ここはぜひ入れてほしかったなと思う。

さて、このシリーズの舞台はマイアミ。マイアミといえば思い出すのはやはりCSI:マイアミ。デクスターの勤務先はどうやら「マイアミ・メトロ警察」のようだが、原作ではホレイショと同じ「マイアミ・デイド警察」だった。この2つは同じなのか違うのかよくわからない。場所がデイド郡であることは確かなようなのだけど、市警察と郡警察があったりする? だがもちろんこの世界では、鑑識チーフがSWAT部隊を率いて突入、なんてことはしない。

撮影は実際にマイアミで行われているらしいが、確かに熱帯モンスーン気候のマイアミらしい映像がそこかしこに見られた(行ったことないけど)。誰もスーツなんか着ていないし、背中は汗でびっしょりだし。明るい光にあふれ、原色の華やかな色彩にいろどられた画面がとても美しい。音楽も良い。

このファ**ン暑そうな原色のマイアミとラテンな音楽に対する、淡々としたデクスターのモノローグとアイストラック・キラーの冷たい連続殺人。白い部屋に飛び散る真紅の血痕。これらのコントラストがとても印象的だと思った。

Yoko (yoko221b) 2007-09-03

dexter/s01/001_dexter.txt · Last modified: 2019-09-11 by Yoko