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Dexter - Season 4, Episode 12
#48 The Getaway
- 邦題:「宿命」
- 脚本:Wendy West, Melissa Rosenberg
- 原案:Scott Reynolds, Melissa Rosenberg
- 監督:Steve Shill
- 初回放映:2009-12-13
概要
アーサーに名前と職場を知られてしまったデクスター。アーサーはデクスターに「私の前から消えろ」と言い、別れを告げて去る。デクスターはアーサーを尾行する。アーサーは銀行へ行き、口座を解約して逃亡の準備。デクスターは銀行の駐車場でアーサーに麻酔剤を打って眠らせ「ここでアーサーが失踪すれば万事解決」とほくそ笑むが、追跡中に車をぶつけてしまい、その相手が銀行まで追いかけて来て争いになったため、郡警察に逮捕されてしまう。
デボラはクリスティン宛に来た絵葉書に、ランディの資料にない地名があることに気づくが、エンジェルから「今日はもう帰れ」と言われたため、ハリーの元情報屋(愛人)のヴァレリーに電話して「父の愛人の家を教えてほしい」と頼む。
デボラがヴァレリーとともに「父の愛人の家」へ行ってみると、そこはアイストラック・キラーことブライアン・モーザーがデボラを拉致した場所だった。思わずその名前を口にするとヴァレリーは「そうそう、名前はローラ・モーザーだったわ。小さな男の子が2人いた」と思い出す。
クインらはボードリーの動きを調べ、トリニティ・キラーの現場や行動様式と一致しないことに気づく。エンジェルはトリニティの余罪を探るうちに、バスタブ殺人の5日前に10歳の少年がかならず行方不明になっていることを知る。
デボラはローラ・モーザー殺害事件の記事を調べ、息子の名前がブライアンとデクスターであることを知る。そしてマシューズ警部に会い、ハリーがデクスターを引き取った経緯を聞く。「冷凍車キラー」事件の時、マシューズはすべてを知りながら2人を守るために黙っていたのだった。
デクスターは郡警察に留置されるが不問にされ釈放。アーサーはすでに逃げてしまっていた。その夜リタは「あなたの心に悪魔がいても私は受け入れる。あなたは闇と戦って克服できる人だから」と言う。
誘拐事件との関わりが判明したため、殺人課は最近誘拐された少年スコットに注目。デボラはスコットから事情を聞き、誘拐犯のバンにチラシがあったことを聞き出す。スコットが覚えていたマークは、「救済の家」のロゴマークだった。建設現場に捜索犬が投入され、10歳前後の少年の遺体を発見する。エンジェルは「全米の参加者リストを集め、犯行現場とクロスチェックしろ」と命令。
アーサーは自宅に戻り、現金や貴金属をかき集める。さらに「D・モーガン」の住所を調べて忍び込むが、そこは現在デボラが住んでいる部屋だった。
翌日、コーディとアスターは祖父母(ポールの両親)とともにディズニーワールドへ出かけ、リタはハリソンを連れて一足先に新婚旅行先のキーズ諸島へ。デクスターは「仕事を終えたら現地で合流するから」と言ってアーサーの自宅へ向かう。
アーサーはすでに金目の物を集めて出て行った後だった。「いったい何が起きたのか」という家族に事情を説明するヒマもなくSWAT部隊が突入。デクスターはガレージの棺桶に隠れ、先回りしたふりをして警察の捜査に合流する。警察に保護されるアーサーの妻子の姿がリタたちの姿に重なる。
デボラはローラ・モーザーとブライアンのことをデクスターに話す。「俺さえいなければ…」と言ったデクスターに対し、デボラは「兄貴はずっと私の支えだったんだよ!」と言う。それを聞いたデクスターは、自分はアーサーとは違う道を歩けるのではないかと思い始める。そして壊れた車の窓を見つけ、アーサーが愛車のマスタングを修理に出したことに気づく。
トリニティ事件の捜査はFBIに引き継がれる。
アーサーは修理に出した車を引き取りゴキゲンで運転を続けるが、途中でエンジンが煙を上げて停車。車から降りたアーサーにデクスターが襲い掛かる。
デクスターはアーサーをラップで縛り、いつもの儀式。デクスターはアーサーの頼みに応じてオモチャの汽車を動かしてレコードをかけ、ハンマーで撲殺する。
遺体をいつものように海に沈めたデクスターは満月を見上げ、リタを思う。そして自らの「闇の声」をねじ伏せ、今度こそ本当に幸せな家庭を築こうと決意する。
だが、自宅に戻ったデクスターを待ち受けていたのは、血の海と化したバスタブで死んでいるリタと、かつての自分のように母親の血にまみれて泣いているハリソンだった――。
感想
前回の「やあ…デクスター・モーガン」がまるで最終ラウンドのゴングのようだった。そこで一気に緊張感が高まって競争が始まったように思う。アーサーは逃亡を企て、デクスターは必死で追いすがるもあえなく取り逃がす。そうこうするうちに警察は「トリニティ・キラー」の正体がアーサー・ミッチェルであることに気づくが、正体を知られ、なおかつ恐喝をはたらいてしまった以上、もうトリニティを警察に任せることはできないだろう。「警察が捜査している事件」に手を出してはいけないと、ファローの一件で学ばなかったのか? デボラを撃ったのも結局はトリニティじゃなかったのだから(関係はあったけど)タンパ行きの後でちょっと頭を冷やしておけば良かったのに。
そして、アーサーとの最終決着が思ったよりあっさり終わったな、と思ったら衝撃のラストが!
この結末を、いったい誰が想像しただろう。初めてリタを愛しいと思い、人間としての幸せを手に入れようと決意した矢先にこの仕打ち。
DVDには特典映像として、マイケル・C・ホール(デクスター)とジョン・リスゴー(アーサー)の対談が収められていたが、それによると、この結末はスタッフの間でも厳重に秘密にされ、俳優も撮影直前まではニセの結末を書いた脚本を渡されていたとのこと。ジョン・リスゴーはニセの結末を読んで「こんなつまらないラストでいいのか?」と首をひねったという。
このシリーズのシーズンフィナーレはいつも、次シーズンへ続く要素を残しつつも、話自体はきれいに結末を付けて、言ってみれば「次があってもなくても納得のいく」終わり方をしていた。このようにクリフハンガー的に終わるのは初めてのことだが、思い出してみれば、シーズン3をまだ放映中の時に「シーズン5まで」の更新が決定されたのだった。つまり、このシーズンは最初から「もう1年続く」ことを前提に作られたわけで……そういう事ならクリフハンガーのひとつもやってみたくなるのだろう。
で、リタ殺害の件。最初に見た時は「本当にアーサーの犯行なのか?」と少々疑問に思った。アーサーはまだ明るいうちに車を引き取り、ドライブを続けるうちに夜になり、エンストしたところで捕獲されている。デクスターが知っていた手がかりは、アーサーが車を預けた修理店だけなので、そこからトランクに隠れるか尾行するかしていたはず。その一方でリタは、月がきれいだからというメッセージを残している。つまり彼女は夜まで生きていたのか?
だが英語字幕を出して台詞を確認してみると、リタは “the moon tonight is gonna be amazing” と言っていた。つまり「これから夜になれば、きれいな月が出る」という未来のことを話していたわけだ。
リタの向かった空港がマイアミ国際空港だとすると、これは市街地から10kmちょっとの場所にあるので、浜松町から羽田空港へ行くようなものだ。午前中に出かけて、IDを取りに戻るのが夜になるはずがない。
なので、アーサーがリタを手にかけたのは、ちょうどデクスターがミッチェル家にいる間のことではないだろうか。デボラの部屋で空振りだった後、おそらく夜のうちにもうひとりの「D・モーガン」を調べて住所を突き止めていたはず。
そして家に侵入したところへ、IDを取りに戻って来たリタと鉢合わせしたのか。いや、それよりも早朝からデクスターの家を見張っていて、空港までリタを尾行した(あのマスタングとは別の車で)という可能性が高いと思う。そして、隙を見てIDを盗み、困っているリタに親切そうに近づき、自宅まで送ると申し出る――善良そうな顔で初対面の女性に近づくのは、いつも殺しのサイクルでやっていることなので慣れたものだろう。仮にリタがタクシーで戻ったとすると、玄関先でタクシーを待たせておいて空港まで往復するだろうから、運転手が不審に思うはずだが、アーサーの車に乗ったのであればその点も説明がつく。あの伝言を残した時、運転していたのがアーサーだったと考えると恐ろしい。
まぁ時系列はそんなところだろう。もうひとつ気になる点としては、被害者の選び方かな。リタは3人の子どもがいる母親で、どちらかというとバスタブより転落死させるタイプ。いっそのことクリスティンが拳銃ではなくバスタブで自殺し、リタが転落死して最後にアーサーが撲殺されたとしたら、その方が full circle できれいに終わったような気がする(まぁクリスティンも年齢的にはリタとそう変わらないはずだが)。だが敢えてそれをせず、あのような形にしたのは、「母の血の海で泣き叫ぶ幼子」「血の海から幼子を救い出す(養)父」という図式を再現させたかったのだろうと思う。
最後に、次シーズンに向けて気になる点を整理しておこう。まだシーズン5を全然見ていない状態で書いているので、見当違いでも笑わないでね。
まずは何といってもトリニティ事件の続きとリタ殺害の件。リタの事件は手口からトリニティが疑われるだろうが、当の本人は海の底。FBIは跡形もなく姿を消したアーサー・ミッチェルの行方をこれからも追い続けることになるのだろう。事件がメトロ警察からFBIに移ったので、ミッチェル一家とデクスターの間にもそれなりに距離ができて、とりあえずは安心かな? 上で書いたように被害者像が異なることから、トリニティ以外の犯人――もっと言うと夫であるデクスターが疑われる可能性もあるが、死亡推定時刻が正確に絞り込まれれば、ミッチェル家にいたという鉄壁のアリバイが成立するだろう。クインはデクスターについてどの程度不信感を抱いているのだろう。今後ドークスのようになる可能性はあるだろうか?
デボラはデクスターの出生の秘密を知ってしまった。だがそれがデクスターにどういう影響を与えたかはまだ知らない。今後デボラが、さらに真相に近づくことがあるのだろうか?
そしてアスター、コーディとデクスターとの関係。2人はデクスターと暮らすのだろうか。コーディはデクスターになついているけど、アスターはどうだろう。義父よりも父方の祖父母と暮らしたがるかも。リタの最初の結婚の話はこれでうやむや?
エンジェルとラグェルタは、もういい。てか、ラグェルタ異動で良かったのにー。
……まぁ、とりあえずはこんな所で。ラストのショックでまだちょっと興奮気味だけど、シーズン5が来る頃にはクールダウンしているだろうと思う。
— Yoko (yoko221b) 2011-08-15