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dexter:s06:072_this_is_the_way_the_world_ends

Dexter - Season 6, Episode 12

#72 This Is the Way the World Ends

  • 邦題:「兄への愛」
  • 脚本:Scott Buck, Wendy West
  • 監督:John Dahl
  • 初回放映:2011-12-18

概要

海に投げ出されたデクスターは死を覚悟するが、難民船に救助され、無事に海岸にたどり着く。

トラヴィスは占拠していた部屋を出て行く。その後「死体がある」という通報があり、デクスターは現場へ向かう。現場にはまだ誰も入っておらず、デクスターが最初に足を踏み入れる。中へ入ると夫婦の遺体があり、さらにその奥にはトラヴィスが描いた「火の池」のタブロー。デクスターは、まだ誰も見ていないのを良いことに、自分の似顔絵の部分を潰してしまう。ゴミ箱の中には、さらに別のタブローの下書きがあった。

トラヴィスは外出から戻った所で警察が来ていることに気づき、デクスターの自宅へ向かい、そこでハリソンのことを知る。

デボラはゲラーの資料の中に「日食を見る2人の証人」の絵があることから、日食の起きる時刻にトラヴィスがこの場所に行くだろうと推測。絵では高い山の上だが、それをマイアミ市街に置き換えるなら、高層ビルが最も近い。デボラはビルに警官を配置する。デクスターは現場から持ち出した下書きと「光の柱」というトラヴィスの言葉から、太陽光発電を使う「トランスコープビル」に着目。だがその前に、幼稚園で親子劇「ノアの方舟」に参加する。

エンジェルはクインの勤務態度に業を煮やし、転属するよう言い渡す。ラグェルタはデボラの作戦を承認。

デボラはゲラーの絵を「犬を連れた2人の証人」と解釈していたが、動物は犬ではなく「子羊」の可能性があった。以前にタラハシ大学で行われたパフォーマンスでは、子羊に「Ω」の印のみが描かれていた。子羊を屠ることが終わりの象徴であるなら、トラヴィスはまだ誰かを殺すかもしれない。デボラは急遽デクスターを呼び出して事情を説明する。だがデクスターが話を聞いている間に、ハリソンは「ライオンのお面を着けた男性」とともに帰ってしまったという。

トラヴィスはハリソンを囮に使って見張りの警官を倒し、トランスコープビルの屋上へ。デクスターは後を追うが、ハリソンを人質に取られ「注射器を自分に打て」と強要される。デクスターは従うふりをして倒れるが、隙を見てトラヴィスを殴り倒し、ハリソンを救出。

デボラはトランスコープビルの警官から応答がないことでようやく異状に気づくが、トラヴィスとデクスターは姿を消していた。デボラはラグェルタから「貴女は良い警部補になれる。でも感情を制御しなければ」とアドバイスを受け、セラピストに対してデクスターへの気持ちを認める。

デクスターはハリソンを連れて帰宅し、デボラから教会を調べ直すよう指示されたのを良いことに、トラヴィスを教会へ運び、いつものようにラップで拘束し、剣で一突きに。だがそこへやって来たデボラがすべてを目撃する――。


感想

絶体絶命のプチクリフハンガーで終わった前回だが、割とあっさり陸地に戻って来たデクスター。奇跡的に状況が上手く動くというのは、どのシーズンにもあるいつものパターンかな。悪魔が自分の顔になっているタブローも、どうなることかと思ったら、誰にも見られないうちにデクスターが顔の部分を破いてしまうし(トラちゃんがせっかく描いたのに、何だかもったいない)。

生還したデクスターにデボラが “I love you.” と言い、デクスターが “I love you too.” とこたえる場面。デボラはその直前にデクスターへの想いを自覚して(させられて)おり、love にはちょっと違った意味合いがあったのかもしれないが、デクスターの側にあるのは純粋に家族愛であろうと思う。それはそれで良いのだが、デクスターがデボラに love という言葉を使ったのは以前にもあったっけ? シーズン1のラストでは “fond of” という表現を使っていたように記憶しているのだが、しかし現在のデクスターの言葉としては、やはり love なんだなぁ、と何だかしみじみする。シーズン1から今まで、リタやルーメンやハリソンやブラザー・サム、そしてもちろんデボラや、ある意味でブライアンも含めて、さまざまな人との関係が描かれてきた。今シーズンの冒頭で、親としてハリソンに何を伝えるべきなのか考え始めたデクスターが、ここで「伝えたいものは愛だけでよい」と独白する、それは今までの積み重ねがあって、より強い説得力と重みを持つ言葉になった。そしてそれは、いつまでも快楽殺人鬼でいてはいけないのではないか、というシリーズの完結を予感させる言葉でもある。人気も視聴率もまだまだ落ちていないと思うが、ストーリー的にはそろそろ限界かもしれない。

さて、トラヴィスのタブローは最後の審判の「火の池」で終わったかと思ったら、もうひとつ残っていた。最後のタブローは「2人の証人」で、これは前に戻って黙示録の第11章、2人の証人が、1260日の間預言することを許されるという場面に登場する(下図はオットハインリッヒ版聖書)。この1260日というのは、トラヴィスにとって重要な日数のようだが、本家黙示録でも繰り返し登場する数字で、2人の証人が出て来る直前にも、エルサレムが42ヶ月(つまり1260日)にわたって踏みにじられるという文言がある。これはキリスト教徒への迫害が一時的なものであることを示す象徴的な数字だということだが、年にすると3年半ぐらい。そういえば、タラハシ大学で本物のゲラー教授が失踪した(トラヴィスに殺された)のがそれくらい前ではなかったか。

証人は証言を終えた後、深淵から出てきた獣に殺され、2人の遺体はソドム(あるいはエジプト)の都にさらされる。だが3日後に2人は復活して昇天。この2人の証人(預言者)が誰かというのは諸説あるらしいが、トラヴィスとしては自分とゲラーのつもりだったのだろう。さらに原典になかった子羊を加えている。黙示録で「子羊」というのはキリストを指すと解釈されるが、トラヴィスは生贄として「デクスター(=悪魔)の子」を選ぶ。

デクスターはトラヴィスを追跡して首尾よく捕獲するが、つまりメトロ署の作戦は失敗に終わったということになる。ここでデボラを励ますラグェルタが、何だからしくない良い警部ぶり。普段は「現場よりキャリア」主義の野心家ではあるけど、基本的なところでは警官としての良心もしっかり持っているというところか。単に邪魔なマシューズがいなくなって気持ちに余裕ができただけかもしれないけど。

そして最後に衝撃のクリフハンガー。決定的瞬間を、よりによってデボラに見られてしまう。

トラヴィスを殺す場所として、確かにあれ以上のロケーションはないだろう。しかし、そこはすでに警察にも知られているし、デクスターが鑑識作業を任されたといっても、いつ誰が応援に来るかもわからない。トラヴィスを取り逃がしているのだから、行き先の手がかりを求めて刑事が来るかもしれないし、デクスターにしてはやはり不注意すぎると言わざるを得ない。

気の毒に、兄への想いを自覚した直後にその裏の顔を知ってしまったデボラ。しかも単なる平刑事ではなく殺人課の警部補という責任ある立場なのだ。この後、デボラがデクスターをどうするのかが、次シーズンプレミアの重要なテーマになるだろう。

で、それとは別に気になるのがルイスの正体。義手を送りつけていたが、それを受け取ったのはトラヴィスで、デクスターはまだ腕を送られたことにも気づいていないよね? 確か。なので、この件はまるごと次シーズンに持ち越しということになるのだけど、ルイスは単なるデクスターのファンなのか、それともITKと何か関わりがあるのか。ルイスは実はブライアンの息子で、デボラに変なことを吹き込んだセラピストが母親ではないか、という予想もあるが、さてどうだろう。前シーズンのルディのように、そのまま忘れられてしまう可能性もあると思うけど。

これを書いている現在、本国ではシーズン7が終わったばかりで、何だかまたクリフハンガーになったらしい。次のシーズン8で終わりという話もあるので(まだ正式決定ではないはずだけど)、もうシーズン7と8は2年後にまとめて見た方が良いのか、ちょっと考え中。この続きやルイスの正体が気になることは気になるのだが、とりあえずまた来年(か再来年)!

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Yoko (yoko221b) 2012-12-24

dexter/s06/072_this_is_the_way_the_world_ends.txt · Last modified: 2019-09-11 by Yoko