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Dexter - Season 8, Episode 12
#96 Remember the Monsters?
- 邦題:「兄として」
- 脚本:Scott Buck, Manny Coto
- 監督:Steve Shill
- 初回放映:2013-09-22
概要
デクスターは空港の搭乗口でハンナから電話を受ける。エルウェイがいるのでトイレに隠れたが出られないという。デクスターは一計を案じ、不審人物としてエルウェイを通報して排除するが、乗客も全員退避させられてしまう。嵐で空港は閉鎖され、デクスターはハンナをホテルへ送り届ける。
デボラは自分で通報して病院に運ばれ、「デクスターには絶対に知らせるな」と言う。「自分は過ちを犯したから、これは罰だ」と言うデボラを、クインは「自分も過ちを犯したが、良いことをして相殺すれば良い」と励ます。
エルウェイはクレイトンと連絡がつかず、事務所に電話して初めてクレイトンの死を知らされる。街中に手配をかけてハンナの行方を追う。
デクスターはマシューズから連絡を受けて病院へ向かう。デボラは手術が成功して一命をとりとめるが、デクスターはサクソンを殺さなかったことを後悔する。
サクソンは動物病院に押し入り、傷を縫合させる。
ハンナはハリソンとともにバスでジャクソンビルへ向かう。デクスターも同行しようとするが、寸前で翻意して市内へ戻る。
病院へ戻ったデクスターはサクソンが来ていることを知り、デボラの病室へ。サクソンを迎え撃とうとするが、エンジェルが先に動いてサクソンを逮捕し、連行する。だがデボラは容体が急変し、ICUに移されていた。手術後に合併症を起こし、脳への酸素供給が断たれてしまったのだ。奇跡が起きない限り回復は望めないという。
ハンナはハリソンとともにバスに乗るが、同じバスにエルウェイが乗って来る。ハンナは隙を見てエルウェイに鎮静剤を打って眠らせ、ハリソンを連れて逃亡。
デクスターは「サクソンはフロリダ州に殺させ、アルゼンチンに発とう」と決心するが、その直後「発射残渣を調べる」と言ってサクソンが拘置されている房へ向かう。そしてサクソンがペンで自分を襲うように仕向け、サクソンを返り討ちにして殺害。その様子を監視カメラの映像で見たエンジェルとクインは「正当防衛だ」と判断する。
デクスターは「自分はずっと普通の感覚を持つことに憧れていた。だがもう普通の感情はいらない」と思い、ボートで病院へ向かう。ハリケーンが近づいているため、患者たちも避難を始めていた。
デクスターはデボラの人工呼吸器を外し、デボラの遺体を抱えて船に乗せ、嵐の海へ乗り出す。そこでハンナとハリソンと電話で話した後、電話を海に捨てる。そしてデボラの遺体を海に沈め、「自分は愛する者を不幸にするが、ハンナとハリソンだけは自分から守りたい」と、嵐の海へとボートを走らせる。
ハリケーン・ローラが去ったマイアミ。デクスターの乗ったボートの破片が発見されるが、生存者はいない。ハンナもそのニュースを目にする。
そのしばらく後、森の奥深い伐採場で働くデクスターの姿があった――。
感想
うーむ。
うーむ……。
何と言えば良いのだろう。シーズン1からずっとこのシリーズを見てきて、いつかは終わりが来ること――CSIやL&Oみたいに長く続くわけではないということはわかっていた。1話完結のproceduralではないので、ストーリーにしっかりと結末を付けて終わらせてほしいと思っていた。そしてシーズン8で終了することを知り、最後までしっかり見届けてお別れしようと思っていたのだが……。
こんなラストを望んでいたわけではなかった。全然なかった。ああもう~。
何から言えばよいのだろう。まず、デボラが死んだことがショック。前回も書いたけれど、デボラが死ぬという結末にだけは、してほしくなかった。デクスターの犯罪に巻き込まれ、翻弄されて罪を重ねた挙句に若くしてこんな最期とは。あまりにも気の毒すぎる。
それからハンナのこと。今シーズン、「デクスターとは何者であったのか」を明らかにしようという目的は感じられたが、「ハンナ・マッケイとは何者であったのか」は中途半端なままだったと思う。だから、デクスターがハンナにここまで執着することや、ハリソンを託すほど信頼することに、どうにも納得がいかない。
ハンナの初登場は前シーズン3話。それから今まで、おそらく1年も経っていないのではないか。そのうち半年以上逃亡していたわけだから、一緒に過ごした期間はせいぜい2~3ヶ月程度だろう。しかもハンナは殺人犯だ。
ハンナがどういう殺人犯なのか、ということもいまいち一貫していない。最初の事件ではランダルとともにカップルを刺殺し、デクスターは彼女の様子を見て「犯行を懐かしんでいる」と結論付け、一度は手術台にも乗せている。しかしその後の犯行はすべて現実的な動機のある冷徹な犯行で、手口も毒殺ばかり。いったいどういう殺人犯なのか。
そしてデクスターの行動も、最後までよくわからないことばかりだった。バスで出発するかと思ったら直前に翻意。サクソンは死刑にしてもらおう、と言ったかと思ったら拘置所で挑発して殺害。あれは明らかに「正当防衛を主張できる状況」を作るためにお膳立てしたとしか思えないのだが、ではその前のモノローグは何だったのか?
ハリソンをハンナに託し、デボラを水葬にして自分も身を投げるのかと思ったら生きてるし。最後の場面は要らない、というか、ない方が良かったと思う。“Alternate ending” としてDVDの特典メニューに収録するくらいで十分。実母と同じ名を持つハリケーン「ローラ」の嵐に突っ込んでいき、新しく生まれ変わったのか、それとも「ローラの血」の中から生まれたデクスターであることから逃れられないという結末なのか――もしかすると、続編で明らかにするという考えがあったのかもしれないけど、続編はもう要らない。
ハンナとデボラの役柄が逆であれば、いささか予定調和的であっても納得はできたかも。また、ハンナの代わりにルーメンが再登場、という話であってもまだマシだったかなと思う――ルーメンは一度デクスターと同じ「闇」を知り、それを克服したという経験を持っているから。
他にもいろいろ突っ込みたい所はあるのだが、もうこの辺にしておこう。グランドフィナーレがこれだったのは本当に不満なのだが、それもこれも「デクスター」というドラマが好きだったから。初期シーズンは本当に面白かったし、デクスターの内面を深く掘り下げ始めたシーズン4~5も良かったと思う。
あとは原作小説だな! 未読があと3~4冊残っているので。それからWebで公開されていたアニメ作品の “Dexter Early Cuts” も見たいのだけど、これは日本語化されないのだろうか。
— Yoko (yoko221b) 2015-05-23