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Homicide - Season 3, Episode 11
#44 For God and Country
- 邦題:「歪んだ愛国心」
- 脚本:Jorge Zamacona, Michael S. Chernuchin
- 監督:Ed Sherin
- 初回放映:1996-02-09
事件概要
No. 054 Stephanie Egan
Law & Order シーズン6「Charm City(ボルティモアからの刺客)」の続き…
ペンブルトンとベイリスはブライアン・イーガンの妻と息子を訪ね、仲間のことを聞き出そうとするが、妻は怯えた様子で何も話そうとしない。そしてその直後、妻のステファニーは殺害される。
その頃、ニューヨークではブリスコーとカーティスの両刑事がイーガンに面会していた。イーガンは妻が殺されたことを知り、「息子を避難させてくれ」と懇願する。
ブリスコーとカーティスはボルティモアに行き、市警の捜査に合流。息子のケンドルは母親が死亡した時には地下室におり、犯人が帰った後に家を抜け出していた。殺したのはアレクサンダー・ラウシュという男だという。ラウシュは1943年生まれ、ヴェトナムに従軍し、海軍情報部でグアンタナモに勤務。イラン・コントラ事件にも関わっていた。
マンチがイーガン家にあった水上機の写真を思い出し、市警は港に急行してラウシュを逮捕する。
ラウシュはステファニー・イーガン殺害と5年前の教会毒ガス事件の容疑者であるが、NYで起きた地下鉄テロ事件の首謀者であるとも思われるため、NYから来たキンケイド検事が身柄を要求する。ダンヴァースは異議を申し立てるが、裁判所はNY側の言い分を認め、ラウシュは先にNYへ護送されることになる。
だが、列車に乗る直前にラウシュは持病の心臓発作を起こし死亡する。
感想
Law & Order とのクロスオーバー後編は、NYから帰って来たペンブルトン&ベイリス組がステファニー・イーガンを訪ねるところから始まる。しかし、その後ステファニーが殺害されたと思ったらNYに場面転換。
ここでNYの場面もいつもの L&O 風ではなく、刑事たちが事件とは無関係なおしゃべりをしながら登場するのが「ホミサイド」風な感じで面白い。クロスオーバーといっても、一方の作品の主役が他方へゲスト出演するだけ、という話も少なくないが、この前後編は脚本家の共同作業がうまくいっていると思う。それぞれの作品の持つ雰囲気というか違う文化のようなものが上手く交錯し、なおかつ各キャラはしっかりと元の個性を保っているところが素晴らしい。
ブリスコーはマンチのバーでビリヤードをしながらイーガンの息子の話を聞く……はずなのだが、何だか世間話ばかり。マンチの元妻グウェンが現在NYにいると聞き、ブリスコーは「そういえばグエン・マンチって知ってるよ」と言う。知っているどころか、何としばらく同棲していたらしい。それを聞いてショックを隠せないマンチ、まだグウェンに未練たらたら。アリッサとは今どうなっているのだろう。シリーズ終了後にマンチがNYへ行くのは、もしかしてグウェンを追って行ったとか?
で、マンチは仕事そっちのけで世間話ばかりしているようだが、結局マンチの記憶がヒントになって黒幕のラウシュが逮捕される。前編でマンチがイーガン家を訪れた時に見た写真があった。
これでラウシュの居場所がわかり、港での逮捕劇! この場面は迫力満点、画面の向こうから「NYじゃこれはできないだろう!」みたいなお国自慢が伝わってくるような気がした。
しかし後半で検事の出番になる所は何気に “Law & Order” 風味。ダンヴァース検事お久しぶり! ラウシュをどちらで起訴するかで争いになるが、ひとまずNY側の勝ち。まずNYの地下鉄テロ事件の首謀者として起訴し、それが終わったらボルティモアに身柄を戻してステファニー・イーガン事件と5年前の教会事件で改めて裁く、という段取りになったようだ。
この裁定を待つ間、刑事たちはバーで飲みながら待機。L&O は基本的に仕事の場面ばかりなので、こういう場面は貴重だ。カーティスやブリスコーの私生活のこと、本編よりこっちの方が詳しくない? 前編で険悪だったカーティスとペンブルトンも、ボルティモアに来たら子どもの話で何だか仲良しさんになってしまったし、ベイリスはやはりキンケイド検事を好きみたいだ。
しかしラストはラウシュの自殺(病気なのにわざと薬を飲まずに発作が起きるままにしていたのだから、やはり自殺だよね、これは……)で終わってしまった。イーガンは息子の身を案じてもう何も言わないだろうし、これで組織の全貌は謎のまま終わりそう。
彼らは「愛国者」を自称するが、本当に「国を愛している」のかは疑問。愛しているのは結局のところ自分だけじゃないのかと思う。仲間は増えているというが、あの調子で先鋭化していけば、そのうち仲間割れを始めてお互い殺し合うようになるのではないか。自分とは違う存在を認められないのであれば、そうならざるを得ない面があるような気がする。