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Judge John Deed - Series 1, Episode 1
#2 Rough Justice
- 脚本:G.F. Newman
- 監督:Mary McMurray
- 初回放映:2001-11-26
事件概要
Tim Collier, Paul Bailey and Colin Gee
キャロル・ゲイナーに対するデートレイプで、ティム・コリアー、ポール・ベイリー、コリン・ジーの3名が起訴される。検察官はジョー・ミルズ。
キャロルは、クラブで酒を飲んだ後に気を失い、気がついたときには殆ど衣服を着けずに車の後部座席にいたこと、男たちからは「自分で服を脱いだだけで何もなかった」と聞かされたが、それは嘘であったことなどを証言。だがDNAテストは被告人の誰とも一致していない。キャロルは弁護人からの厳しい追及に泣き出してしまう。
弁護側からは、以前にキャロルと関係を持ったウェストランドが証言台に立ち、「彼女が熱心に誘ったので関係したが、その後『薬を盛られてレイプされた』という虚偽の非難を受けた」と証言。ディードはウェストランドに麻薬販売の前科があることを指摘する。以前にウェストランド自身の事件を担当したことがあったのだ。
次に被告人が1人ずつ証言。ジョーはそれぞれの証言の矛盾を突き、ディードはベイリーが病院から持ち出された頭痛薬を使用していることを指摘する。
被告人たちは、法廷から戻って来たアボット(後述の事件の被告人)とすれ違い「真実を述べたことで判事に良い印象を与えた」と聞かされる。コリンはその後、法廷で「自分が病院から薬を持ち出した。ティムがあんなことをするとは思わなかった」と言い出す。
Peter Abbott
ピーター・アボットという男が家庭内暴力で起訴されるが、アボットはMI5の情報提供者でIRAに潜入しているため、事件を棄却して釈放しろという政治的な圧力がかかる。アボットは「自分は飲酒をしていた。それは言い訳にはならないが、申し訳ないと思っている」と反省を述べ、警官は「被告人は協力的だった」と証言。ディードはさらに証人を求めて審理を続行し、圧力に対しては「釈放するには、例外的な条件が必要だ。それとも被告人が例外的に重要なスパイだと法廷で公言してほしいのか」と脅す。
その後、ディードは事件が他の判事に回されそうだということを知り抵抗。自ら被告人に質問し、反省した態度は見せかけではないのかという印象を得る。ディードは反対を押し切って独断でニュートン・ヒアリングを開き、被害者のアボット夫人から事情を聞く。
夫人は、結婚当初は朗らかで何の問題もなかった夫が、彼女が妊娠してから急に「浮気をした」と責め立てて暴力を振るうようになったと証言する。彼女は流産し、その後も妊娠は望めなくなってしまうが、アボットはそれも「お前の責任だ」と言い、ますます暴力的になったという。カウンセリングを受けて一時は治まったが、彼女が離婚しようとすると、暴力はエスカレート。熱湯をかけられて1ヶ月ちかく昏睡状態に陥ったこともあった。
大法官省のサー・イアン・ロチェスターがディードを説得しようとするが、ディードは「裁判官の独立性」を根拠に反論する。
ディードはフランチェスカ・ロチェスターと食事をした帰りに、彼女との会話からヒントを得て前例となる判例を思い出す。そのまま執務室へ戻り、資料を見つけ出すと、そのまま彼女と一夜を共にする。その一部始終は、防犯カメラで録画されていた。
翌日、ロチェスターがディードを止めるために判例を持ち出すが、ディードは前夜発見した新しい判例で対抗。ロチェスターは部屋で妻のピアスを見つけて警備室へ出向き、テープを見せろと要求するが、テープはすでに別室に保管されており「裁判所命令がないと開けられない」と拒絶される。ロチェスターの動きはすぐにディードに伝わる。
法廷では精神科医が出廷し、アボットは特に女性に対して暴力的かつ支配的な面があり、治療しなければ危険であると証言。その後、ディードは再びアボット夫人を尋問し、夫人が不倫をし、離婚を言い出したことでアボット氏を刺激したのだろうと追及する。夫人は証言中に興奮して取り乱してしまう。アボットは自分の勝利を確信し、留置場ですれ違ったレイプ3人組に「真実を話して良かった」と吹聴する。
判決でディードは「通常であれば長期間の収監がふさわしい罪であるが、この場合は夫人の言動による挑発を受けて自制が効かなかったことが明らかであり、かつ自ら有罪を認めたことを考慮し、収監は行わない」と言うが、続けて「その代わり、治療施設に隔離する」と言い渡す。アボットは興奮してナタリーに襲いかかろうとするが阻止される。
ロチェスターは令状を手に現れて監視ビデオを押収するが、そのビデオはディードとフランチェスカが資料を発見した所で終わっていた。オリジナルのテープはリタ・クーパーの手を経てディードのもとへ届けられていたのだ。
感想
前回エピソードの逆転判決については「正直、微妙」な印象があったが、今回の事件はどちらも納得できる判決だった。片方は被告人が自白したわけだけど。女性関連でディード判事の脇が甘いところも面白い。フランチェスカさん、どこかで見た顔だと思ったら、FOXのドラマ「ザ・グリッド」に登場したMI6のエージェントさんだった(ジェマ・レッドグレーヴ)。それにしても、危ないところでしたわね。夫のサー・イアンは、今後も何度か出演して判事の失脚を狙うようだ。
それに対抗して「司法の独立性」を主張する判事の反論がすごい。
「英国憲法の最も重要な原則のひとつは、行政府が判事にいかなる影響力も与えてはならないということだ。私は国王に仕える身ではあるが、それは主人と召使の関係ではない。1607年にジェームズ1世がクック首席裁判官に敗れて以来、国王はそのような力を持ってはいない。この時に司法の独立は確固たる原則になった。司法は国家の道具ではないのだ」(※英国には成文憲法はないが、権利章典や人身保護法などを総称して “British constitution” と呼ぶ)
うーん、歴史を感じるなぁ。1607年って日本では関ヶ原の7年後、徳川幕府ができたばかりの頃ですよ。首席裁判官のクック先生(Chief Justice Coke)は近代法思想を確立したサー・エドワード・クック(コークとも表記する)のことだよね。その時代から現代まで制度が連綿と続いているわけか……武力革命や敗戦等で権力が断絶していない国というのはこうなのか、と思わされる。
作中に出てくるニュートン・ヒアリングという手続きは、証拠に関して両当事者の見解が異なる場合に、判事のみ(陪審裁判の場合でも陪審員は入らない)が双方の意見を聞くという物で、通常は被告人が有罪を認めつつ事実認定で争いがあるという場合に行われるらしい。
もうひとつのデートレイプ事件では、前回(パイロット)で弁護人だったジョー・ミルズさんが検察官として登場。英国の法曹は弁護士(弁護人)と検察官が職業として分かれているわけではなく、法廷に立つ資格を持つバリスタ(法廷弁護士)が訴追側・弁護側のどちらからでも依頼を受けることができるらしい。英国の法曹制度、何だかややこしいけど面白い。
— Yoko (yoko221b) 2009-12-22