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Law & Order - Season 1
#2 Subterranean Homeboy Blues
- 邦題:「隠された過去」
- 脚本:Robert Palm
- 監督:E.W. Swackhamer
- 初回放映:1990-09-20
事件概要
People vs. Laura Di Biasi
地下鉄の車両内で発砲事件が発生。黒人青年2人が重傷を負い、1人は病院に搬送された後死亡、もう1人も半身不随になった。目撃者の証言から発砲したのは若い女性とわかる。被害者が「彼女を脅していた」のを見た者もいた。
発砲したのは元ダンサーで現在は病院で技師をしているローラ・ディビアージ。ローラは「脅されたので自衛のために撃った。銃はどこかに捨てた」と主張。彼女は以前、地下鉄で襲われて怪我をし、そのためにダンサーの道を断念したという経緯があった。銃の練習をしていたこともわかり、ストーン検事は復讐のための計画的な犯行を疑う。
ローラの弁護士シャンバラ・グリーンは正当防衛を主張。世論もローラに同情的だったのが、検事の「地下鉄に乗らないという選択肢もあったはず」という発言で拍車がかかってしまう。死亡した被害者には殺人の前科があり、さらに被害者2人にレイプされそうになったという女性まで現れる。ストーン検事は、殺人(murder two)での起訴は断念し、銃の違法所持(gun charge)と発砲の正当性(reckless endangerment)に方向転換を決意して、取引を持ちかける。
感想
このエピソード、結末がどうなったのかがよくわからなかった。グリーン弁護士が取引を受け入れて執行猶予となったのか、それとも取引を断って評決が無罪となったのか。ローラが「地方検事に感謝」していたので、おそらく前者だろうと思うのだが。
この話の元ネタは、1984年にマンハッタンの地下鉄で同じような発砲事件を起こしたバーナード・ゲッツ事件とのこと。そういえば、昔聞いたことがあるような気がする。
『ロースクール生のための刑事法総合演習』(島伸一、2004年)には、「ニュー・ヨーク州法では、正当防衛の状況において、銃を撃つというような攻撃者に致命傷を与える危険性のある実力行使が許されることもある」とある(p.185)。うーん、防衛する側に命の危険がある場合にそれはわかるのだけど、ゲッツ事件やこのエピの場合はどうだろう。
同書によると、ゲッツ事件では銃器不法所持罪のみ有罪、他(殺人その他)は正当防衛が認められて無罪。ただし民事訴訟では正当防衛が否定され、ゲッツ被告に損害賠償が命じられているとのこと。
より詳しくは『正当防衛――ゲッツ事件とアメリカ刑事司法のディレンマ』(G.P.フレッチャー、1991)に述べられている(読んでないけど)。
しかし、それにしても満員の地下鉄ですよ。ひとつ間違えば、無関係の乗客を巻き添えにする大惨事になりかねないのに、正当防衛を主張するって(さらにそれが認められてしまうって)、すごい。
ゲッツ事件では、被害者と加害者の人種対立も注目されている。LAOのこのエピでは弁護士のシャンバラ姐さんもアフリカ系なのでそれほどでもないが、ロビネット検事が被害者に「お前はどっちの味方なんだ!」と言われたり、同じくロビネットの前でローラの同僚が「若い黒人を恐がっていた」と言おうとして言いよどむ場面などは印象に残った。
— Yoko (yoko221b) 2007-01-04, 改訂 2007-11-08