Table of Contents
Law & Order - Season 3, Episode 12
#56 Right to Counsel
- 邦題:「高みからの転落」
- 監督:James Frawley
- 脚本:Michael S. Chernuchin, Barry M. Schkolnick
- 初回放映:1993-01-13
Justice is swift, it's not always fair.
事件概要
People vs. Steven Gregg (判事:Gelfant)
高級アパートに住むバーバラ・スピーゲルマン(61歳)が、自宅のキッチンで刺殺される。押し入った形跡はなく、顔見知りの犯行という可能性が高かった。バーバラは2年前に心臓発作で夫を亡くし、最近は新しい恋人と交際していたという。
恋人はデザイナーのスティーヴン・グレッグ、38歳。バーバラはスティーヴンのキャリアを精神的にも経済的にも援助していた。バーバラは遺言でスティーヴンに200万ドル、残りを娘のキャロルに残していた。キャロルの側にも、結婚と遺産に関する動機があったが、スティーヴンの方はすぐにも大金が必要になる状況にあった。
凶器の包丁は拭き取られて指紋が残っていなかったが、引き出しに入っていた他の包丁にはスティーヴンの指紋があった。スティーヴンはバーバラ殺害容疑で逮捕される。だが証拠はいずれも間接的なもの。弁護士のサリー・ナイトは無罪を主張するが、スティーヴンに重窃盗の前歴があることを知って態度を変える。スティーヴンは無罪答弁を取り下げ、第1級故殺での有罪を認める。
People vs. Kevin Doyle (判事:Mark Burns)
ロビネットは、法廷でのスティーヴンの供述が検死報告と食い違うことに気づく。スティーヴンは第2級謀殺で有罪になることを恐れ、25年から終身の刑になるよりはマシだからと(やってもいない)故殺罪を受け入れた可能性があった。サリー・ナイトは前年、62件の事件を扱い、うち59件を取引で済ませていた。
スティーヴンにサリーを紹介したのは、バーバラの顧問弁護士のケヴィン・ドイルだった。調べてみると、ドイルもまたバーバラの死によって利益を得ることがわかる。ドイルは学生時代から名門の子息のように振舞っていたが実は庶民家庭の出身であり、経済的な問題を抱えてバーバラの財産をあてにしていた。さらに、現場で検出された身元不明の指紋がドイルと一致したこと、事件当時のアリバイ供述がウソであったことが次々に判明。スティーヴンは起訴を取り下げられて釈放、ドイルが逮捕される。
ドイルがサリーに事件を持ち込んだのは、同郷の幼馴染だった縁からであった。サリーは当初「スティーヴンは確実に有罪」とドイルから聞かされていたが、無実かもしれないと知り、ドイルのオフィスへ行ってそのことを話したが、ドイルは「黙っていろ」と命じたという。経済的に恵まれないサリーは、ここで恩を売っておけば後で有利になると考えて口をつぐんだのだった。
ストーンは法廷でドイルの虚飾を剥ぎ「あなたも彼ら(裕福な世界の人々)とは違うのだ」と言って経済的な動機を突きつける。その後、評決を待たずしてドイルは自宅で自殺を遂げる。
感想
季刊「刑事弁護」の39号(2004年秋)に掲載されている「アメリカと日本の司法取引の比較」(デイヴィッド・T・ジョンソン)によると、合衆国内で重罪で起訴された者のうち9割が有罪答弁を行うとのこと。罪状認否の段階で有罪答弁すると、公判手続きに入らずすぐに量刑に入ってしまう(このあたり日本では手続きが異なるらしい)のだが、有罪答弁を行った場合の刑は、無罪を主張して公判で有罪になった場合に比べてかなり軽く、場合によっては5分の1以下になることもあり得るとのこと。ただし、この両者の差は近年どんどん離れていく傾向にあるらしいので、このエピソード当時はそこまで離れていなかったかもしれない。
この事件では、スティーヴンには動機がありアリバイはなく、状況証拠も彼の犯行だという仮説に矛盾しない。少年時代に、殺人ではないが犯罪の前歴もある。ドイルを通じて有罪の心証を得ていたサリーが取引を勧めたのも無理からぬことなのだろう。無罪を主張して争っても、失礼ながらサリーの弁護では有罪になる可能性が高かったのではないかと……。
真犯人のドイル君が最後に自殺する展開は……これは、彼が法廷に現れない、というところで何となくわかっちゃったかな。
— Yoko (yoko221b) 2008-06-10