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Law & Order - Season 4, Episode 2
#68 Volunteers
- 邦題:「善意の人々」
- 脚本:René Balcer
- 監督:James Quinn
- 初回放映:1993-09-29
And when he struck Mr. Kirk in his sleep, HE became a menace to society greater than Roland Kirk ever was.
事件概要
People vs. Harold Morrissey (判事:Rebecca Stein)
ローランド・カークというホームレスが鉄パイプで全身を殴打されて重傷を負う。現場のベドフォード通りは住宅街で、住人たちはカークを怖がっていた。警察を呼んでもあてにならないので、最近はカークが騒いでも誰も気に留めず、誰も通報しないという。
ブリスコーとローガンは、カークが多額の現金を持っていたことを不審に思い、調べてみると5週間前に15000ドルで口座が開かれていた。ベドフォード通りの住人を相手に訴訟を起こしていたのだ。弁護士は、住人たちがカークを強制入院させようとして権利を侵害したのだと主張。その一方で、住人側の撮影したビデオには、「この通りから出て行け!」と住人たちを威嚇するカークの姿が映っていた。子どもを車道に突き飛ばしたこともあったという。事件の当日も、カークは住人のひとりアイリーン・モリシーを自宅の前で襲っていた。アイリーンはその後、病院に運ばれていたが「前回逮捕された時は、2時間後に釈放されていた」からと、警察も呼ばなかったという。
その後、カークが意識を取り戻し、近隣に住む歯科医のクレイトンが蘇生術を施していたことがわかる。クレイトンは逮捕され、第2級殺人未遂および第1級暴行罪で起訴されるが、彼は蘇生術をしただけで加害者ではないと主張。その後、現場にはレストランを経営するプロスキーもいたことがわかるが、プロスキーとクレイトンはお互いに「相手に後を任せて帰った」と言い、2人の主張は食い違う。
状況ははっきりしないうえ、近所迷惑だったホームレスを殴った罪で、陪審員を説得することは困難だと、ストーンは難色を示す。
オリヴェットはカークと面接を行い、ドラッグの影響がないときは言動が正常であると判断。病院に入れてもすぐに退院してしまうのは、そのせいだった。だが退院してストリートへ戻ると、またドラッグを得ておかしくなってしまう。薬物依存の治療プログラムは、精神疾患のある患者は扱わないが、精神病院は依存症患者を扱わない。カークはそのどちらからも弾かれてしまうのだった。
キンケイドは捜査を進め、カークが襲ったアイリーン・モリシーの夫ハロルドが、病院からプロスキーに電話をかけていたことを知る。プロスキーはようやく、事件当夜に病院から戻ったモリシーが、近くの建設現場にあった鉄筋を持ってカークのいる場所へ向かったことを認め、逮捕される。ストーンは、モリシーがあらかじめ鉄筋を持っていたことから、準備をして犯行に及んだと判断するが、危険人物に対して予防策をとったとも考えられる。
法廷でプロスキーは、モリシーが鉄筋でカークを殴ったことを証言するが、弁護側の尋問で、モリシーが鉄筋をかまえる「前に」カークが彼を襲ったことも証言する。それまでの供述になかった事実だとしてストーンは異議を唱えるが、判事はその証言を認め「信頼性を崩したいなら別の証人を呼ぶように」と言う。
ストーンは、被害者ローランド・カークを証人とする。判事はカークに面接し、証人として採用できると判断。カークは、路上で寝ているところを突然殴られたと証言するが、弁護人の挑発に乗って法廷で怒鳴り散らしてしまう。ストーンは逆にモリシーを挑発し「我々が対処しないから彼を殴ったのか? 貴方がたを危険にさらしたからといって我々のことも殴るつもりか?」と尋問、モリシーは「そう考えたことがないとは言わない」と思わず口にする。
評決は、第2級殺人未遂について無罪、第1級暴行罪についても無罪、第2級暴行罪について有罪であった。モリシーには2年間の執行猶予が認められる。
感想
キンケイド検事いわく「患者よりクレイジーな制度」のせいで、適切な治療を受けられなくなってしまったホームレス。彼が住宅街をねぐらにしているせいで、住人は苦労が絶えない。
ストーン検事は「法が認めているのは、自分の所有物が盗まれようとしている時、それを阻止するために力を行使することであり、行政が何もしないからという理由で誰かを殺しても良いとは言っていない。市民が自ら法を執行しようとする時、その人は我々が敬い尊重する法と秩序から切り離される。被告人が眠っているカーク氏を殴りつけた瞬間、彼は社会にとってローランド・カークよりも大きな脅威となってしまったのです」と弁論する。
それ自体は正論であるし説得力もあったと思うが、ベン・ストーン個人としては住人に同情的だという所が面白い。「車道に突き飛ばされたのがうちの子だったら、私が殺しているところだ」とまで言ってしまう。それでいて、モリシーが「事前に武器を用意した」ところは見逃さないんだよね。心を鬼にして起訴するというわけでもなく、罪は罪として裁く。だが心情としては理解できる――といったところなのかな。理解できるからこそ挑発することも容易にできたということか。そういう距離のとり方が面白い。
それにしても、カークが住人を訴えた訴訟の代理人となった弁護士たちは、裁判に勝ってそれっきり? 弁護士の仕事はそうだと言われればそれまでだが、そのお金を使って何とか治療の方法を探すとか、そういう道はなかったのか。大金を持って路上に帰ったところでカークにとっては決してプラスにはならないし、むしろ双方にとって状況を悪くするだけなのに……。
— Yoko (yoko221b) 2008-12-07