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Law & Order - Season 4, Episode 5
#71 Black Tie
- 邦題:「葬られた真実」
- 脚本:Michael S. Chernuchin, Walon Green
- 監督:Arthur W. Forney
- 初回放映:1993-10-20
We may have the law on our side, may have the facts on our side, but Danielle Keyes has the money on her side.
事件概要
People v. Danielle Keyes (判事:Herman Mooney)
ブリスコー刑事は、大富豪のジョナサン・キーズが殺害されたという匿名の通報を受ける。行ってみるとキーズ氏は死亡していたが、主治医が「自然死」と判断してすでに葬儀の準備が進められていた。通報を受けた以上、検死官が検死して死因を特定しなければならない、と刑事たちは遺体をモルグに運ぼうとするが、キーズ夫人と弁護士は反対する。ヴァン・ビューレン警部補が現れ、遺体を葬儀場に運び、検死官は解剖せずに葬儀上で検分のみを行うということで決着する。
だが、検死官が行く前にエンバーミング処理が行われてしまい、血液検査はできなかった。また、「正装のままで死んでいた」という家政婦の話が嘘で、実は死後に服を着せていたこともわかる。ジョナサンの愛人だったモデルのキャシー・ロジャースは「夫人が彼を殺した」と言う。キャシーはその夜ジョナサンの部屋におり、帰ってからも電話で話したが、夫人が部屋に入ってきたため電話を切ったという。ダニエール夫人はその話を否定し、自分たちは同じ家にいても別居状態なので、お互いに相手には不干渉なのだと主張。刑事2人は疑いを持ちヴァン・ビューレンと対立する。
そこへ、ジョナサンの息子(死亡した前妻の子)ランスが現れ「父の健康に問題はなかった、これは殺人だ」と言い出す。両刑事は改めてジョナサンの寝室を調べ、血液の付着した脱脂綿と薬ビンの中蓋を発見する。ジョナサンはインシュリンを注射されたものと思われた。令状は取っていなかったが、殺人ならその寝室は犯罪現場となり令状は不要。だがそこはダニエールの自宅でもあるため、彼女に対する不利な証拠としては使えなくなる可能性が高い。
刑事たちは家政婦のヘルガから事情を聞く。彼女は裸で倒れていたジョナサンに服を着せて部屋を清掃したことを認める。さらに、匿名で通報を行ったのが彼女であることもわかる。ヘルガは殺人を疑っていたが、同時に夫人に従わねばならないという忠誠心から、そのような矛盾した態度を取ったのだった。一方、ランスは独自に探偵を雇い、夫人の浴室でインシュリンの付着した注射器を発見していた。証拠は十分だが、公式の死因はあくまでも自然死。
キンケイドはダニエールの身辺を調査し、彼女が作家のファーガソンからインシュリンの処方箋を手に入れていたことを突き止め、遺体の発掘許可を取る。改めて検死が行われ、ジョナサンが大量のインシュリンを投与されていたことがわかる。
ダニエールは逮捕され起訴されるが、弁護人のローセンバーグは反対尋問を助手に任せ、検事の尋問に異議を唱えることもしない。弁護側の狙いは最初から控訴審にあったものと思われる。案の定、陪審は有罪の評決を下すが、弁護側はその場でただちに控訴、舞台は控訴審(Appellate Division=上訴部)へ移る。
ローセンバーグは、高裁で5人の判事を前に、注射器は違法捜査によって発見されたものであるため、排除されるべきであると主張。高裁判事はこの主張を認め、ダニエール・キーズへの有罪判決は破棄される。ストーンは上告、あるいは再起訴を考えるがいずれも勝算は低く、あきらめる他はなかった。
感想
控訴審の模様が描かれるのは、シーズン2の「Asylum(犯罪者の聖域)」以来だろうか。高裁だから高検の検事が出てくるのかと思ったら、そういうシステムではなく、控訴審でもやはりストーン検事が面倒を見なければいけないらしい。そもそも、日本がそうだからつい「高裁」と呼んでしまうが、これは州地裁の中の「上訴部」なのね。
今回、ダニエール側はそうそうに事実審を「投げて」しまい、控訴審に的を絞ってきた感じ。おそらく、陪審裁判で無罪評決は無理だと踏んだのだろう。それにしても手を抜きすぎじゃない? 事実審で真剣勝負してしまうと、相手側(検察)の反論も強固なものになるから、それを避けるために敢えて手を抜いたのだろうか。よくわからない。
金があれば腕の良い探偵を雇い、警察には許されないような「捜査」を行うこともできる。それでは金によって正義が左右されることになるではないかという疑問に対し、ストーン検事は「ダブルスタンダードが存在するならば、富める者の正義を引き降ろすのではなく、すべての人々に対する正義の基準を引き上げることで平等を果たすべきである」と主張する。それは確かに正論だ。
しかし、キーズ家が大富豪でなければ、最初に殺人が疑われた時点で刑事たちが捜査するのに横槍が入ったりしなかったはず。まぁ、それを言い出せば、そもそも大富豪でなければ殺人はなかったのかもしれないが……。何というか、これくらいの大富豪になると住む世界が違いすぎて、不平等に怒る気持ちも湧いてこないな~。ストーン検事には不本意な結末だったろうが、こうなったらもう、息子が民事訴訟を起こして金持ち対決に持ち込めばいいじゃん、てな感じ。
この話の元ネタになったのは、大富豪の相続人である Martha “Sunny” von Bülow 事件とのこと。彼女は1980年にこん睡状態に陥り、偶然にも最近(2008年12月6日)こん睡状態のまま亡くなったとのこと。この事件では男女が逆で夫のクラウスが起訴されたが、その他の経緯は(サニーの前夫との子が義父を疑っていたり、1審で有罪になったが控訴審で逆転しているなど)かなり共通している。クラウスの弁護人を務めたダーショウィッツはこの事件に関する本を出版し、これは例によって映画化され、サニー役はグレン・クロースが演じた。
— Yoko (yoko221b) 2008-12-16